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第21回 リスクマネジメントの本質(2009.04.28)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人


◆3つのタイプの問題を引き起こすリスク

前回、プロジェクトの本質という話をしたが、もう一つ、語っておきたいテーマがある。それは、リスクについてである。

リスクは発生すれば問題に変わる。以前も述べたように、問題には3つの種類がある。

・発生型の問題
・探索型の問題
・設定型の問題

の3つである。復習しておこう。

「発生型の問題」は起こってしまう問題。例えば、スケジュールのベースラインがあって、そこから実績がずれていくと、「スケジュール遅れという問題」が「発生」したことになる。

「探索型の問題」は、見つける問題。たとえばスケジュールが遅れているわけではないが、メンバー間の作業間の連携に無駄がある。その無駄をなくすとスケジュールを前倒しにできる可能性がある。このようなケースで「無駄があること」は「発見型の問題」とか、「探索型の問題」とか呼ばれる。

文字通り、作られた問題である。言い換えれば、問題がないところに問題を作るのが、設定型の問題である。


◆リスクの本質は探索型の問題を引き起こすリスクにあり

ここで、リスクマネジメントの中でリスクとして識別しているのは、どのタイプの問題につながっていく事象なのだろうか?もっとも多いのは発生型の問題である。これはある意味で問題としては見えており、ただ、必ずそれが起こるとは限らないようなものである。たとえば、あるメンバーのスキルが不足するという問題を考えてみると、このリスクは見えている。これまでは、ひょっとすると神風が吹いて、画期的にスキルが伸びるかもしれない。だから、成り行きに任せようという対応をしていたのだが、リスクマネジメントの普及でリスクとしてしっかりと識別して進めていこうと考えるようになった。進歩だ。

しかし、これはあまり本質的なリスクとはいえない。リスクとして本質的なのは、探索型の問題を引き起こすリスクである。リスクとしては見えていないのだが、それを分析して探すことになる。探索型の問題につながるリスクを多く見つければ見つけるほど、リスクマネジメントの質が高いといえる。

ただ、探索型の問題を引き起こすリスクも、発生型と同じく、プロジェクトにすでに存在するものである。

三番目の設定型の問題を引き起こすリスクは少し意味合いが違う。必然ではなく、とるリスクである。たとえば、無理なスケジュール設定をすれば、スケジュール遅れのリスクが生じる。


◆リスクマネジメントの本質は設定型リスクへの対応にあり

リスクマネジメントの本質は発生型のリスクを如何に回避するのではなく、設定型のリスクを如何に作るかにある。

発生型のリスクにしても、計画を作ったところで生じるわけなので、設定型のリスクと一緒だと思った人はいないだろうか?もしいれば、その人は考えを全面的に改める必要がある。

その計画がなぜできたのかが問題なのだ。たとえば、個々のタスクの所要時間の見積もりをして、その見積もりを10%削って、結果として本来の見積もりよりは10%少ない計画になったというのと、これだけの時間でやりたいという「目標」を決めて、それと本来の見積もりをつきあわせてみたら10%目標が高かったというでは根本的に意味が異なる。

言い換えると、発生型リスクは結果として発生するリスクであり、設定型リスクは目標設定により発生するリスクである。プロジェクトは得たいベネフィットで駆動されなくてはならない。そして、そのために掲げた目標にリスクがあればそのリスクをとることを前提として、そのリスクの対応策(回避策なり、緩和策)を検討するのがリスクマネジメントである。

どのような事情があるとしても、リスクの対応策(回避、緩和)として、目標を変えるのは、本末転倒以外の何者でもないし、リスクマネジメントとはいえない。目標を設定する立場にあるミドルはこの点をよく認識しておく必要がある。

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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「プロジェクトマネジャー養成マガジン」や「プロジェクト&イノベーション(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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