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ドラッカーは、知識労働者はすべてエグゼクティブであると指摘している。エグゼクティブは意志決定し、責任を負う人たちであり、プロジェクトには、エグゼクティブとしてのプロジェクトスポンサーが必要である

第16回 プロジェクトスポンサーはエグゼクティブであれ(2010.10.05)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人

◆知識労働者はエグゼクティブ


管理者がプロジェクトを管理する際にもっとも考えるべきことは、RRAA(Role,Responsibility, Accountability,Authority)ではなく、自分たちの仕事はどういう仕事かということである。プロジェクトマネジャーも、プロジェクトメンバーも、プロジェクトスポンサー(管理者)もプロジェクトにかかわる仕事をする人たちは、例外なくピーター・ドラッカーのいうところの「知識労働者」である。すなわち

知識をもって何事かを成し遂げることを欲する労働者

である。そして、ドラッカーは、知識労働者はすべてエグゼクティブであると指摘している。

エグゼクティブとは、仕事の目標、基準、貢献を自ら決定し、仕事をしている人たちのことである。肉体労働が労働の主体であった時代には、エグゼクティブとして仕事をするのは組織のトップ階層の人たちだけであった。しかし、知識労働においては、知識による権威は、地位による権威と同じように「正当かつ必然」のものであるといえ、だれもがすべての知識労働者はエグゼクティブであるとみなすことができる。

◆エグゼクティブは意志決定し、責任を負う


たとえば、ある商品開発のプロジェクトにおいて、商品の実現にどのような技術を適用するかという意志決定がある。この意志決定においては専門家の決定が実質的に企業の決定になることが多い。トップマネジメントができるのは、決定を評価し、承認する(あるいは承認しない)ことだけである。エグゼクティブたるすべての専門家は文字通り、肉体労働時代におけるエグゼクティブに匹敵する権威を持っているのだ。

そして、エグゼクティブは意志決定をし、自らがその意志決定に貢献することに責任を負わなければならない。また、自らが責任を負うものについては、他の誰よりも適切に仕事をしなければならない。

これが知識労働が成り立つ唯一の方法だと言っても過言ではない。

この点は意外に気付いていない人が多い。地位による意志決定(つまりRRAA)にばかり気を奪われ、知識による決定の権威を見失っている。あるいは、責任を負うことを放棄しているかもしれない。

特に、プロジェクトスポンサーはこの傾向が強い。21世紀に入ってから起こったプロジェクトマネジメントブームの一面として、組織のフラット化があった。ネットワークの発展を背景にして、フラット組織が尊重された。そして、中間層を無くし、業務をプロジェクトで行うことがよいと考えられた。そして、経営が現場を直接、統制する方法としてプロジェクトマネジメントに注目が集まった。

◆プロジェクトマネジメントとフラット組織


そのような流れの中で、従来、実質的な企業のエンジンだった中間管理層の存在感が薄くなってきた。プロジェクトマネジメントの中での役割は必ずしも明確ではなく、一方で組織マネジメントの中での役割も不明確になってきた。プロジェクトマネジャーからは「丸投げ」という指摘を受けるようになってきた。

しかし、プロジェクトロールでいえば、プロジェクトスポンサーというロールがある。日本では、IT企業を中心にリーダーを現場リーダーに見立てることが多いが、本来、プロジェクトリーダーはプロジェクトの推進役であり、プロジェクトリーダーの元で、与件に基づきプロジェクトをマネジメントしていくのがプロジェクトマネジャーである。つまり、中間管理層はプロジェクトリーダーとして活躍し、プロジェクトマネジャーにプロジェクトの管理をさせる立場である。別の言葉でいえば、プロジェクトスポンサーである。

◆エグゼクティブとしてのプロジェクトスポンサーが必要


今、プロジェクトリーダー、つまり、プロジェクトスポンサーの実質的な不在がプロジェクトで成果をあげることができない大きな要員になっている。確かに、成果物を作るだけであればプロジェクトマネジャー役だけで十分である。しかし、プロジェクト成果物を組織成果に変換していくためには、リーダー、つまりプロジェクトスポンサーの役割が不可欠であり、この役割は現場と経営の両方の知識を使って初めて可能になる専門性である。

その意味で、プロジェクトスポンサーという知識労働者のエグゼクティブの働きが今、もっとも求められているのだ。

最後に念を押しておくが、決してプロジェクトスポンサーはエグゼクティブ(高級幹部)が引き受けなくてはならないということではない。。プロジェクトスポンサーはエグゼクティブでなくてはならないということである。

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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「コンセプチュアル・マネジメント(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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