第15回 問題と課題と意思決定(2010.09.13)
◆プロジェクトは問題解決の手段
プロジェクトは問題解決の手段である。社内プロジェクトであれば事業や組織の問題解決である。受注プロジェクトであれば、自社にの問題解決であると当時に、顧客の問題解決であることが多い。商品を開発するときには、その商品開発を課題(解決策)とし、課題を実行することよって解決される問題がある。受注したシステムを開発するときには、その案件の受注によって解決したい自社の問題(例えば、売上げの拡張)があり、また、顧客はそのシステムによって解決したい問題を抱えている。
では、問題とは何か?目標(あるべき・ありたい姿)と現実のギャップである。つまり、プロジェクトはあるべき姿と現実のギャップを埋めるために行う活動であるということができる。
◆問題があれば原因がきちんと特定できるという「思い込み」
当然のことながら、一つの問題に対して課題の設定にはいろいろな考え方があるし、同じ状況に対して問題の捉え方も一つとは限らない。
例えば、納期遅れのプロジェクトが続出している。すべてのプロジェクトを納期通りに終えることが目標だとしたら、これは問題だということになる。この問題に対して、原因を分析して、原因を解消するような課題の設定をする。
ここで落とし穴になるのが、問題があれば原因がきちんと特定できるという「思い込み」だ。ある原因が問題を引き起こしていることをいうのは容易であるが、その原因が問題のもっとも重要な要因であるというのは難しい。極端に言えば主観に近いものがある。原因自体はロジカルに考えられるべきものだが、そこで一つの原因にたどり着けるとは限らないので、ロジカルに考えた後に「決定する」ことが必要になる
そこで、決定の客観性を高めるためによく行われるのが多数決や過去の実績の活用である。いずれにしてもそうして設定された原因に対して、原因を解消する課題というのは実際にその課題に取り組んでみて、結果を見なければ正しいかどうか分からない。
◆プロジェクトが問題解決の手段になるかどうかは不確実
文脈をつなげていくと、プロジェクトで取り組んでいる課題が、問題の解決に対してどのくらい有効なものかはやってみないと分からないということだ。視点を変えると、プロジェクトが有効なものであるかどうかは、やってみないと分からない。
制約条件が緩ければ、プロジェクトととしては、与えられた課題をやってみてその結果をみて、次のアクションをするというのは一つの方法である。しかし、制約条件が厳しい場合にそんな方法が果たして合理的な方法だといえるのか?
この認識があるようで、意外とない。
◆課題が片付いても問題が片付くとは限らない
その課題が実現できればあたかもすべての問題が片付くような錯覚を起こし、とにかく言われたことをやり遂げようとするプロジェクトが多い。しかし、実際にはそうではない。例えば、顧客がシステムの開発を依頼してきたとする。そのシステムによって顧客の抱える問題が解決すると思い込んでしまう。しかし、実際にはそうではない。いざテストをしてみたら問題は解決せず、要求変更なるものが生じることは決して珍しくない。顧客が課題の設定を間違っていたわけだ。
◆幾重にもなる目標と目標達成仮説
問題に対して、原因は仮説であり、原因に対して課題に仮説である。プロジェクトの上流には、自社、顧客を問わず、この階層が幾重にある。例えば、自社内の話でいえば、
経営計画(目標)に対して、環境分析を行い、現実とのギャップ(問題)を知る。そして、現実とのギャップを埋めるための戦略(課題)が決まる。
戦略実行(プログラム)においては戦略(目標)に対して、戦略実行のための戦略課題(課題)を決め、その課題の取り組みをプロジェクトとして実行する。そのために、プロジェクトに目的や目標を設定する。これも仮説である。
プロジェクトの中では、こうすれば目的や目標を達成できるだろうという仮説を作る。
これが計画である。
◆問題は誰が決めるのが効率的か
重要なことは、実際にプロジェクト(群)を実行してみて、戦略実行レベルの課題や戦略レベルの課題の設定が適切なものだったかどうか分かることだ。そして、経営計画達成、あるは、経営戦略の実行のための課題をより正確に推定できるのは誰かということが問題になる。
この役割にトップを置くか、ミドルを置くか、それとも現場を置くかによってマネジメントのスタイルが変わってくる。あなたの組織は、どの層が決定しているだろうか。
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著者紹介
好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「コンセプチュアル・マネジメント(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。
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