No2. プロジェクトスポンサーとの正しいつきあい方《一般》(2011.02.14)
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【目的】プロジェクトマネジメントを効果的にする
【用途】マネジメントと組織のサポートを確立する
【効用】プロジェクトの速やかな立ち上げ、リソースの確保、意志決定の促進など
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◆プロジェクトスポンサーの責任
プロジェクトやプロジェクトマネジメントの成功のために、プロジェクトスポンサーの役割が欠かせなくなってきている。プロジェクトマネジャーはプロジェクトスポンサーとうまくつきあって行かなくてはならない。この記事では、プロジェクトマネジャーはプロジェクトスポンサーとどのようにつきあえばよいかを述べる。
プロジェクトスポンサーとうまくつきあいためには、まず、プロジェクトスポンサーの基本的な責任と役割を理解しておく必要がある。一般論として、プロジェクトスポンサーは、プロジェクトの全期間を通じて、少なくとも以下のようなレスポンシビリティ(実行責任)を持つ。
(1)プロジェクトの立ち上げ
・リソース提供の約束
・プロジェクトに対するデータの提供
・プロジェクトをスタートさせる
(2)プロジェクト計画のサポート
・ガイドの提供
・計画の検証
(3)プロジェクト実行のサポート
・意志決定
・問題解決
このようなレスポンシビリティが基本になるが、必ずしもすべてのプロジェクトスポンサーが責任を果たしているわけではない。この現実を加味して、以下、各アクティビティにおいてのプロジェクトスポンサーとのつきあい方を説明していこう。
◆プロジェクトの立ち上げ
プロジェクトの立ち上げにおいて、スポンサーシップへの依存はもっとも大きい。失敗しているプロジェクトのほとんどは立ち上げにおいて、プロジェクトスポンサーが機能していない。これはプロジェクトスポンサーの問題であるが、プロジェクトマネジャーも働きかけを行うべきである。少なくとも、プロジェクトスポンサーが機能していないので、「勝手にやればよい」というのは間違いである。プロジェクトスポンサーが意図に沿わない限り、プロジェクトの成果は評価されず、プロジェクトマネジャーはプロジェクトメンバーの努力を台無しにしてしまうことになるからだ。
まず、プロジェクトスポンサーは、プロジェクトを行うかどうかの判断を行っているが、必ずしも、プロジェクトに関して十分な情報を与えているとは限らないことを認識しておく必要がある。
例えば、プロジェクトの目的(Objective)が不透明であったり、プロジェクト憲章がなかったり、不十分であったりするケースは多い。そのような場合に、プロジェクトマネジャーは、プロジェクトスポンサーからプロジェクトに対する意図を探り出さなくてはならない。
また、プロジェクトステークホルダーの特定もプロジェクトスポンサーと一緒に行う必要がある作業である。プロジェクトマネジャーから見えているレベルだけでステークホルダの期待を判断するのは危険である。そのプロジェクトが成功するためには、どのステークホルダの判断が重要かを理解しているのはプロジェクトスポンサーに他ならないからだ。
そして、プロジェクトスポンサーと主要ステークホルダが満足する報告やコミュニケーションの計画を立案する必要がある。
次に、リソースのコミットメントについて確認しておく必要がある。リソースには、人的資源だけではなく、プロジェクトに必要な機材やトレーニングなど、経費が必要なものすべてをしている。根拠のない約束であることが多いので、具体的な約束を取り付けておくことがある。
プロジェクトスポンサーのコミットメントの不履行の原因になるのは、プロジェクトの優先順である。そこで、プロジェクトのスタートにおいては必ずプロジェクトのスコープと優先順位について確認をしておく。プロジェクトマネジャーの中にはプロジェクトの優先順位はないと思っている人がすくなくないが、これはプロジェクトスポンサーの怠慢に過ぎない。プロジェクトスポンサーのもっとも重要な役割は優先順位をつけることである。それができなていないプロジェクトスポンサーは、業績を上げることはできない。その意味で、プロジェクトの優先順位を追求し、リソースのコミットメントを履行させることはプロジェクトスポンサーのためでもある。ただし、あなた自身の人事考課はどうなるか保証しない(笑)。
◆プロジェクト計画
プロジェクト計画の策定においては、あまり行われていないが、プロジェクトスポンサーに常に進捗状況を知らせておくことが極めて重要である。その上で、意志決定すべきこと、あるいは、トレードオフの解消についてはきちんと相談することが重要である。プロジェクトスポンサーに報告しないで計画を作ることはプロジェクト破綻の第一歩であると考えるべきである。
計画の中で、特にプロジェクトスポンサーを巻き込んでおくことが重要なのは
・問題のエスカレーションの方法
・スコープ変更の手続き
の2つである。
プロジェクト計画が終了したら、計画書をまとめて、プロジェクトスポンサーにチェックして貰う。この際に、プロジェクトスポンサーの考える目的に対して、計画が不十分な場合が少なくない。そのような場合には、現実性を踏まえて、2〜3の代替案を準備した上で、スポンサーと交渉する必要がある。
プロジェクトスポンサーの了解が得られたら、ベースラインを確定するととにも、ステークホルダと期待に対するコミュニケーションを行うことを忘れてはならない。
◆プロジェクト実行
実行においては、プロジェクトスポンサーとプロジェクト概況のコミュニケーションを頻繁に持ち、プロジェクトの透明性を維持しておくことが何よりも重要である。そして、悪い情報(バッドニュース)がある場合には、詳細なパフォーマンスレポートを上げる。
プロジェクトの目的を損なわない問題解決が難しい場合がある。その場合には、隠し立てをせず、選択肢案を準備し、プロジェクトスポンサーに評価と意志決定を依頼する。
この際、プロジェクトスポンサーの対応が止まってしまうことがある。そのような場合には、イシューマネジメントを行い、問題解決の期限を設定し、その期限までに意志決定をするように働きかけていく。
また、プロジェクトスポンサーが不在の場合の対応も重要である。不在の期間に併せて、権限の委譲や緊急時の対応などを話合っておく必要がある。
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著者紹介
好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「コンセプチュアル・マネジメント(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。
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