No1. プロジェクトマネジメントが効果を上げている組織《一般》(2011.01.25)
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【目的】プロジェクトマネジメントを効果を上げる組織基盤を構築する
【用途】組織としてのプロジェクトの優先順位を決め、立ち上げる
【効用】プロジェクトを成功させるための環境整備
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◆プロセス改善の限界
多くの組織では、PMOを作り、多大な労力と費用を投入して、プロジェクトマネジメントの仕組みづりを行ってきたが、仕組みが形骸化して、真の成果をあげるに至っていない。にも関わらず、「継続的改善」を旗印にプロセスの改善に取り組んでいる。
ここで考えなくてはならないのは、PMI(R)が提唱しているOPM3(R)を見れば分かるように、プロジェクトマネジメントの改善には、プロジェクトプロセスと組織プロセスという2つの視座があることだ。
CMMなど一次元の成熟度指標を見慣れた中で、OPM3(R)の二次元の指標が出てきたことは、目からウロコだった。しかし、残念なことに、プログラムやポートフォリオという言葉が一人歩きし、自組織にはまだ早いと考える組織が多い。プログラムマネジメントやポートフォリオマネジメントの本質は、手法ではなく、組織プロセスにあることを思い出す必要がある。
◆プロジェクトマネジメントが効果を上げている組織
組織プロセスを見ていると、プロジェクトマネジメントが効果を上げている組織には、プロジェクトマネジメントのプロセスの合理性以外に
(1)プロジェクトマネジャーの選定を適切に行っている
(2)上位マネジャーがプロジェクトに対して関心を持ち、継続的な支援をしている
(3)プロジェクトマネジメントのトレーニングやメンタリング、あるいは支援を容易に使える
(4)プロジェクトに基づいた報酬の仕組みがある
といった共通の特徴がある。このような特徴があるかどうかが、プロジェクトマネジメントプロセスが形骸化かせず、機能している秘訣だと言ってもよい。
◆行き当たりばったりではないプロマネ選定
まず、そのような組織では、行き当たりばったりでなったプロジェクトマネジャーは少ない。プロジェクトマネジャーになることがキャリアプログラムの中に組み込まれ、プロジェクトの中のチームリーダーの時期から、プロジェクトマネジャーから、リーダーシップに関する薫陶(Educate)を受けている。そして、薫陶を受けたチームリーダーだけが、プロジェクトマネジャーに任命をされていく。
プロジェクトマネジャーになる準備として知識やスキルの習得をさせる企業は多いが、準備期間に本当に必要なのは、この薫陶である。知識やスキルは自分自身で学べばよい。
◆プロジェクト期間を通じた組織の支援
二番目は、上位マネジャーの関心や支援である。プロジェクトスポンサーを始めとする上位マネジャーがプロジェクトに対して、高い関心を示し、かつ、支援を行っている組織は例外なくプロジェクトマネジメントが機能している。
ただし、ここで重要なことはプロジェクト期間にわたる、継続的な支援である。プロジェクトマネジメントの導入に熱心な企業では、例外なく、プロジェクトの初期の支援に熱を入れている。PMBOK(R)にプロアクティブという考え方があるように、確かに初期の支援は重要である。
プロジェクトが公共プロジェクトを意味していた時代にはそれで通用した。しかし、ビジネスプロジェクトではこの考えは通用しない。プロジェクトの初期の計画には多くの「仮説(前提)」が含まれている。その仮説が変われば、プロジェクトは大きく変わる。そのような変化をスムーズに進めるためには、初期の集中的な支援より、むしろ、期間全体に分かる均質な支援が重要である。
◆支援や教育へのアクセスの容易さ
三番目は、その支援に対するアクセスの問題である。意外と意識されていないのだが、支援の仕組みはあっても、上位マネジャーがどのような支援をしてくれるかの、PMOがどのような支援をしてくれるのかを知らないプロジェクトマネジャーが大半である組織は多い。
あるいは、教育体系はあっても、どのような教育があるのか、自分はどのような教育を受ければいいのかをプロジェクトマネジャーが知らない組織が多い。
これは単なるコミュニケーションの問題ではない。このような状況の組織で、上位組織やPMOがプロジェクトマネジャーが求めている支援が何かを分かるはずはない。単に、頭で考えて、提供すべきだと思う支援を提供しているに過ぎない可能性が高い。
教育については、組織としてプロジェクトマネジャーのあるべき姿があるので、そのための教育だという言い分はあろう。しかし、それは基礎教育の話であって、そもそも、プロジェクトマネジャーのあるべき姿を一様にしていること自体がナンセンスである。
百歩譲って、戦略性が高く、業務に均質性があればまだ理解できる。戦略性が事業は行き当たりばったりで、プロジェクトに共通性などほとんどない経営では、プロジェクトマネジャーもいろいろなタイプが求められる。
◆トータルリワード
プロジェクトマネジメントが効果的に行われている組織に何よりも大切なのは、プロジェクトを中心にして組織が動いていることである。その基本は報酬の制度である。プロジェクトで成果をあげれば、それに見合う報酬が与えられる仕組みが必要である。プロジェクトにインセンティブをつけている企業が増えているのはこのためである。
ただし、金銭的報酬は限界がある。あるIT会社は5年間続けていた制度を来年度から廃止することを決めた。この企業の制度は大胆で、重点課題プロジェクトについては収益分の折半、それ以外も他社には見られないくらいの高いインセンティブ給をつけている。
初年度は報酬評価をめぐるトラブルの嵐、その後の3年間は抜群の効果があった。しかし5年目に入って、だれてきた。まさに、ダニエル・ピンクのモチベーション2.0の世界である。
そこで、モチベーション3.0に切り替えようとしている。特に、プロジェクトでは、トータル・リワードは重要である。トータルリワードの設計によって、プロジェクトの成果は大きく変わる。とくに、「面白いプロジェクトができる」という報酬は重要である。
与えられたことを「こなす」プロジェクトから、自社の将来にとって意味のある成果を得るプロジェクトに変わる可能性がある。
◆まとめ
プロジェクトマネジメントに関心を持ち、研究や改善に余念のない企業は少なくないが、(1)〜(4)に熱心に取り組んでいる企業は少ない。一方で、プロジェクトマネジメントへの投資の評価にかかっている企業もある。評価は(1)〜(4)への努力をした後でも遅くない。
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著者紹介
好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「コンセプチュアル・マネジメント(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。
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