本文へスキップ

多くの組織がイノベーションに失敗する理由の一つは、イノベーションに対する問題解決(組織風土の変革)をせずに、いきなり、テーマに入って行こうとするためである

第6話 現状の環境を知り、問題に対して手を打つ(2012.09.22)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人

◆なぜ、イノベーションは難しいのか

この連載も今回が6回目である。そろそろ、各論に入っていこう。まず最初は入り口の問題から。

多くの組織がイノベーションに失敗する理由の一つは、イノベーションに対する問題の分析をせずに、いきなり、テーマに入って行こうとするためである。

イノベーションはいままでできなかったことに対する取り組みであり、できないにはそれなりの理由がある。技術テーマそのものより、別の理由によりできなかったというケースも少なくない。その理由を無視して、精鋭を集めてイノベーションプロジェクトを打ち出してみても、実現性は乏しい。組織の抱える問題が解消していないからだ。

イノベーションの難しさは、テーマの問題解決と同時に、組織風土の変革を行わなければうまくいかないことにある。つまり、アイデアや技術だけでは不十分なのだ。技術を開発するだけであればテーマに対する問題解決がうまくいけばよく、精鋭を集めたプロジェクトというアプローチでもうまくいくかもしれない。しかし、技術を開発し、商品を開発し、ビジネスモデルを考案し、実際に展開していくには、組織全体の協力が不可欠であり、その現在レベルを把握することが欠かせない。逆にいえば、何がイノベーションの阻害要因になっているかを把握する必要がある。

◆状況を知るための指標

あなたの組織がどのような状況にあるかは、たとえば、過去3年間における以下のようなデータに着目してみるとよく分かる。

・企画が承認されてから実行されるまでにどのくらいの時間がかかっているか
・イノベーションにどれだけの時間、人員、資金を投入しているか
・過去3年間でイノベーションによる利益は総利益のどの程度の割合を占めるか
・パイプラインにのっている製品は将来価値が十分に期待できるか
・従業員による提案はどのくらいの数があるか

イノベーションを企てるときに、このような過去のデータ(現実)を全く無視して行っても無意味である。もちろん、これまで通りにやっていたのではイノベーションにはつながらないので、風土を変えていく必要があるが、理想を掲げても挫折するだけである。そのためには、このようなデータが何により生まれているかをは把握する必要がある。イノベーションは、組織風土や仕組みにより阻害されていることが多い。そこで、たとえば、

・新しい提案を進める権限がどの程度委譲されているか
・リスクをとることについてどの程度認め、どの程度評価しているか
・会社の方針や上司の決定に異議を唱えることができるか
・プロジェクトを推進する際には部署間の連携がとれているか
・外部の声に耳を傾けているか
・失敗すると責任を追及される感じるか
・現状に満足しているか

といったことを分析し、イノベーションの阻害要因を抽出するとよい。


◆個人レベルの問題

また、個人レベルで問題があることもある。特にマネジャーに問題があると、イノベーションはうまく行かない。参考までに、経産省のフロンティア人材研究会の報告書に掲載されている「イノベーションの芽をつぶすひとこと」を掲載しておく。

・「それって、儲かるの?」
・「ぜんぶ数字で説明してくれ」
・「他社でやっていないのであれば、リスクがないとはいえない」
・「これをやると、あの部署がうるさいよ。それはどうするつもり?」
・「そのアイデアは既存事業とコンフリクトしないかね」
・「コンプライアンス上の問題があるからダメだ」
・「なんで実績のないことやるの?」
(これは、マネジャー自身の問題であることが多いので、改めればよいことだ)

このような問題があるときには、イノベーションはなかなか、うまく行かない。問題解決が必要である。


◆顧客本位のアプローチ

イノベーションの促進される風土、仕組み、人をどのように作っていくかは難しい問題であるが、成功事例を見ていると、顧客本位の考え方がもっとも効果的である。顧客価値を増やすには、自分たちはどのように振る舞えばよいかと考えることだ。

重要なことは、このような問題は、リスクとしてとらえ、イノベーションの実行の中で解決していかなくてはならないことである。まず、環境を整えて、しかるべきのちに、イノベーションに取り組むという姿勢では、環境を変えることもできないし、イノベーションを実現することもできない。環境の変革そのものもイノベーション活動の一部であるという認識が必要である。


◆関連セミナー

━【開催概要】━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆コンセプチュアルな組織を創るマネジメント          ◆(7PDU's)
日時・場所:【Zoom】2025年 01月 22日(水)9:30-17:30(9:20入室可)
     【Zoomハーフ】2023年 03月 15日(水)13:00-17:00+3時間
        ※Zoomによるオンライン開催です
        ※ハーフセミナーは、事前学習3時間あります
        ※少人数、双方向にて、演習、ディスカッションを行います
  講師:鈴木道代(プロジェクトマネジメントオフィス、PMP、PMS)
  詳細・お申込 https://pmstyle.biz/smn/conceptual_management.htm
  主催 プロジェクトマネジメントオフィス、PMAJ共催
 ※Youtube関連動画「コンセプチュアルスキルとは(前半)」「コンセプチュアルスキルで行動が変わる
          「イノベーションを生み出す力
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
  【カリキュラム】                     
 1.コンセプチュアルではない組織の問題点
  ・個人レベルの問題点
  ・チームレベルの問題点
  ・組織レベルの問題点
 2.コンセプチュアルなマネジメントのポイント
  2.1 質問型の組織を創る
  2.2 コンセプチュアルな組織活動のプラニング
  2.3 ステークホルダーへのコンセプチュアルな対応
  2.4 コンセプチュアルな人材育成
  2.5 コンセプチュアルな組織文化の構築
 3.コンセプチュアルなマネジメントの目標
 4.コンセプチュアルマネジメントでコンセプチュアルな組織を創る仕組みワークショップ
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「コンセプチュアル・マネジメント(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

メルマガ紹介

本連載は終了していますが、コンセプチュアル・マネジメント購読にて、最新の関連記事を読むことができます。

コンサルティングメニュー紹介

PMOコンサルティング、PMOアウトソーシングサービス、人材マネジメントサービスなど、御社に最適のコンサルティングをご提案させていただきます。まずは、お問合せください。

Youtube始めました。チャンネル登録お願いします。PMstylebiz


書籍&チケットプレゼントはこちらから

お薦めする書籍

メルマガ購読

ブログ

公開セミナー(カテゴリー別)
日付順  カレンダー

お客様の声(掲載をご許可いただいた受講者の方のアンケート結果)

PMコンピテンシーとは

サイト内検索

Facebook

Facebook

Twitter