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第4回 研究開発部門の人びと(1)(2016.08.16)

インフルエンス・テクノロジーLLC  高嶋 成豪


 第1回 みんな『互いに』わかっていない

 第2回 営業部門の人びと

 第3回 スタッフ部門の人びと

研究開発部門と言っても、置かれている立場は様々です。開発部門は製品企画を含むライン寄り。研究所は、会社によっては開発を担っているものの、多くは基礎的な研究をしています。
以前、ある会社の研究部門の研究者が、研究所に成果主義は馴染まない、と力説してくれました。すぐには結果が出ないのだから、単年で評価するのは間違っていると。
その大手化学品メーカーでは、最近研究所にも明確な成果を求めるようになったそうです。彼の言うとおりかもしれません。一方同じ会社の開発部門のマネジャーに求められるのは、営業上の成果でした。

これまでにも述べてきたように、「影響力の法則」では、影響力は「交換」、「ギブ&テイク」です。何を「ギブ」すれば、こちらが望む何かを「テイク」できるかが、影響力発揮の鍵になります。そこで、交換を進めるために相手にとって何が価値あるかを探ります。

影響力の法則』(コーエン&ブラッドフォード著 2007年 税務経理出版)

ところで交換は、だいたい同じぐらいの価値であると成立します。
初対面のだれかが、一方的にタダで何かをしてくれと言ってきたら、何を馬鹿なことをと思いませんか?
私も講演料が安すぎると感じたら、仕事を引き受けられません。これは立場が逆でも同じです。こちらがギブするものにあまり価値がないと感じられたら、相手は動かないでしょう。

そこで交換する価値が同じぐらいであることを表すために、この価値のことをカレンシーと呼ぶことにしました。カレンシーとは通貨のことです。
例えば、今日の為替レートは1ドル102円です。レートが決まっているから、簡単に交換できます。仕事の現場では、いろいろな価値が交換されます。
例えば、専門能力と報酬、努力と励まし、ビジョンとやる気、気遣いと敬意など、様々です。
カレンシーを意識すると、「これで、同じぐらいの価値があるかな」と考えることができ、いろいろ交換しやすくなります。

そこで「影響力の法則」では、影響力を「カレンシーの交換」と呼びます。

カレンシーの交換で気をつけたいのは、否定的なカレンシーの交換です。

嫌な思いをしたひとが、仕返しをするのが一例です。カレンシーは良いものばかりではなく、否定的なカレンシーも交換されるのです。
また意識していないのに、否定的なカレンシーを相手に渡している人がいます。その人は、なんで相手が反発するんだろう、と思っていることでしょう。

以前、あるメーカーの開発部門のプロジェクトマネジャーで、研究所の所長が協力してくれなくて困っている、という方がいました。彼はもともとは研究所の出身です。だから、うまくいきそうなものですが、研究所が出してくる新製品の開発に必要なデータの解析が甘く、しばしばやり直しとなってスケジュールが遅れるというのです。

この技術者は、大変優秀な方でした。日本のトップレベルの大学で博士号をとってもいました。これまでに素晴らしい研究成果をあげており、彼の論文は世界の研究者に引用されたほどです。
でもすごく優秀だからいい仕事ができる思うのは、考えが浅いですよ。このプロジェクトマネジャーは、自分でも気付かずに、否定的なカレンシーを所長に渡していたのです

(次回に続く)

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4.概念的に考えて具体的に行動する・コンセプチュアルスキルとは
 ・本質を見極める
 ・洞察力を高める
5.ステークホルダーと良い関係を作る・WinWinの関係
 ・信頼を得る
 ・チームを結束させる
 ・(演習5)期待と要求のロールプレイ
6.まとめ
 ・(演習6)カレンシーを再考する
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著者紹介

高嶋 成豪    インフルエンス・テクノロジーLLC マネージング・パートナー

人材開発/組織開発コンサルタント。インフルエンス・テクノロジーLLC.マネージング・パートナー。ゼネラル・モーターズ、ジョンソン・エンド・ジョンソンなどで人材開発に従事。現在リーダーシップ、コミュニケーション、チームビルディング、キャリア開発のセミナーを実施し、年間約1000名の参加者にプログラムを提供している。ウィルソンラーニング・ワールドワイド社によるリーダーシッププログラム、LFG(Leading for Growth:原著はコーエン&ブラッドフォード両博士の共著“Power Up”)のマスター・トレーナー。2007年『影響力の法則 現代組織を生き抜くバイブル』(原題“Influence without Authority”)を邦訳。コーエン&ブラッドフォード両博士から指導を受け、「影響力の法則」セミナー日本語版を開発。日本で唯一の認定プロバイダー。筑波大大学院教育研究科修了 修士(カウンセリング) 日本心理学会会員 ISPI(the International Society for Performance Improvement)会員 フェリス女学院大学講師

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