第1回 みんな『互いに』わかっていない
第2回 営業部門の人びと
スタッフ部門とひとことでいっても、置かれた立場はさまざまです。
管理部門、例えば経理部、総務部、人事部の人びと、事業部門で経理や人事を担当する人々、マーケティング、購買、情報システムなどの機能を担っている人びともいます。
彼らのなかには、何かを決める権限を持っている人たちもいますし、予算を握っている人たちもいます。スタッフ部門の人びとと仕事をする機会はしばしば訪れます。
プロジェクトにも必ずなんらかの形で関係してくるでしょう。
ですから、彼らを巻きこめることは重要なことが多いと思います。
前回、『影響力の法則』では、人間関係は「交換」である、と書きました。
「もちつ持たれつ」の関係ですね。「ギブ&テイク」です。
人間関係が良いときというのは、良い「ギブ&テイク」が循環しているわけです。自然に「ギブ&テイク」しているのが良い関係ですが、相手になにかをしてもらおうと思ったら、「ギブ&テイク」の関係はうまくいっているか、なにを「ギブ」すると「ギブ&テイク」が起動するかと考えることが役立ちます。
『影響力の法則』(コーエン&ブラッドフォード著 2007年 税務経理出版)
そこで、前回の営業の人々に続き、今回はスタッフの人びととの「交換」を検討しましょう。
スタッフ部門の人びとが置かれているのはどのような立場でしょうか?
スタッフの人びとは、あまり融通がきかないことが多いと感じさせます。
「品質管理のプロセスを遵守してください」
「購買のルールにのっとって取引するように」
「ブランドを毀損するような営業活動は許せません」
「残業禁止です」などなど。
忙しいときにこう言われると、うるさい、煩わしいと感じます。最近では、情報セキュリティに関するいくつものルールができていて、インターネット利用の細かいことまで、厳しくいいます。
この融通がきかないように見えるところが、スタッフの人びとの置かれた立場を示しています。ルールや基準を守らせるのがスタッフの人びとの役割です。それは多くの場合、立場上やっているのであって、その人が細かいことにうるさい性格だから、とは限りません。
私の友人は、いつも陽気で好奇心旺盛、発想力豊かな技術者でした。思いがけないアイデアで私たちを驚かせるのです。
ところが、品質管理の責任者になったころから、面白い発想は影を潜め、細かいことばかり言うようになりました。仕事の仕方が変わったよね、というような話になった時、本当はこういう仕事は自分には向いていないんだよ。新しいことをどんどんやっていきたいんだけどね。と話してくれたのです。
組織って、このようなものですね。もちろん原理原則や、細かい手順がそもそも好きな人もいます。でもみんながそうとは限りません。むしろ不本意な立場に立たされているのかもしれません。立場上細かいことにうるさく言わなければならないだけなのに、その気持ちをわかってくれない人にはイラッとします。
ここに、交換の可能性があります。
「お役目とはいえ、大変だよね(共感)。文句を言うやつが多いんじゃないか?私たちも手を煩わすことがあって申し訳ないなぁ」
〜そうなんだよ、本当はこんなことで文句言われたくはないんだよ。
分かってくれるならいいんだ。
「文句言われたくはないよなあ(共感)。会社にとっては重要だものね(尊重)」
〜仕事だから仕方ないんだ
「とにかくルールを遵守するように努めるよ。メンバーにもしっかり伝えよう。ところで、こちらに協力できることはあるかな。どうしたら、仕事しやすくなるの?(協力)」
〜分かってくれると助かるよ。○○してくくればいいよ
案外、こんなことを言ってくれる人はいません。だから、あなたが一声かけるだけでありがたいと感じてくれる可能性は高いと思います。
面倒ですって?恥ずかしい?でも、それで相手が動くならいいじゃありませんか。
ステークホルダーを動かせるプロジェクトマネジャーは、こういうことの積み重ねをしている人ですよ。試しにやってもてはいかがでしょうか?
(次回に続く)
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【カリキュラム】
1.ステークホルダーマネジメントとは何か
・ステークホルダーに動いてもらう
・ステークホルダー・エンゲージメント・マネジメント
2.ステークホルダーの特定・プロジェクトのパラメータ
・ステークホルダー・マトリクス
・ステークホルダー影響グリッド
・ステークホルダー・マネジメント戦略
・(演習2)ステークホルダーリスト
3.影響力の法則(R) ・影響力とは何か?
・「カレンシーの交換」メカニズム
・ステークホルダーの目標を把握し、カレンシーを計画するステップを学ぶ
・(演習3)カレンシーを考える
4.概念的に考えて具体的に行動する・コンセプチュアルスキルとは
・本質を見極める
・洞察力を高める
5.ステークホルダーと良い関係を作る・WinWinの関係
・信頼を得る
・チームを結束させる
・(演習5)期待と要求のロールプレイ
6.まとめ
・(演習6)カレンシーを再考する
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高嶋 成豪 インフルエンス・テクノロジーLLC マネージング・パートナー
人材開発/組織開発コンサルタント。インフルエンス・テクノロジーLLC.マネージング・パートナー。ゼネラル・モーターズ、ジョンソン・エンド・ジョンソンなどで人材開発に従事。現在リーダーシップ、コミュニケーション、チームビルディング、キャリア開発のセミナーを実施し、年間約1000名の参加者にプログラムを提供している。ウィルソンラーニング・ワールドワイド社によるリーダーシッププログラム、LFG(Leading for Growth:原著はコーエン&ブラッドフォード両博士の共著“Power Up”)のマスター・トレーナー。2007年『影響力の法則 現代組織を生き抜くバイブル』(原題“Influence without Authority”)を邦訳。コーエン&ブラッドフォード両博士から指導を受け、「影響力の法則」セミナー日本語版を開発。日本で唯一の認定プロバイダー。筑波大大学院教育研究科修了 修士(カウンセリング) 日本心理学会会員 ISPI(the International Society for Performance Improvement)会員 フェリス女学院大学講師
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