第1回 みんな『互いに』わかっていない
第2回 営業部門の人びと
第3回 スタッフ部門の人びと
第4回 研究開発部門の人びと(1)
(第4回からの続き)
所長の立場に立って考えてください。
若い部下だった男、やがては東大教授になるんじゃないかと言われる優秀な男が、開発部門に移った途端に上から目線でビジネスの論理を押しつけてくる。
それだけで嫌味に感じても不思議はないと思いませんか。
加えて理路整然と話を詰め、こちらに反論の余地を与えないのですから、「研究所の現実を知っているのに、手のひら返したように何言ってるんだ!」と怒るかもしれませんよ。
この若い技術者はかつての上司に否定的なカレンシーを渡してしまっているのです。所長の立場だったら、ここで現実の厳しさを教えてやろうか?と思うかもしれません。
開発部門でも、研究部門でも、それぞれの立場に置かれています。
一般的には、開発部門は技術開発のスケジュールに追われており、そのなかでプロジェクトの責任も担わなければならない立場にあります。
研究部門は、論文発表ばかりではなく、研究成果を製品化や現場の改善につなげられたかどうかが問われます。
どちらも市場での成果が問われるようになっており、幹部からは、以前にも増して「儲からなければ意味がない」などと、プレッシャーをかけられています。
一方、個人として理解されたい、尊重されたいのはみんなに共通です。その点を慎重に対応しないと、上述のケースのように、否定的なカレンシーをまき散らしてしまいます。
私が、このプロジェクトマネジャーにアドバイスしたのは、所長が書いた論文はしっかりと読み、どのようなテーマに取り組んできたかを理解し、所長にこれまでの研究を話してもらうことでした。
論文を読んできたこと、話に関心を示すこと、理解することなどが、相手の成果と専門性を尊重するカレンシーになります。
加えて、「研究所の成果はすばらしい、この成果をしっかり市場に問いましょう」と伝えるように言いました。それと交換に、もっと開発の現場が使いやすいデータを出すように頼もう、と。
逆に開発部門の人びとに協力を求めたいときは、何を達成したいか、誰が非協力的で妨げになっているか、納期はいつまでか、などを理解し、協力的な態度を示しましょう。
このようにして、研究開発部門の人びとが置かれている立場を理解し、これまでの研究や製品開発に対する敬意を示し、彼らの仕事の障害を取り除くように協力の姿勢を示すと、彼らとの関係はずっと良くなるでしょう。
参考にしていただければ幸いです。
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・(演習5)期待と要求のロールプレイ
6.まとめ
・(演習6)カレンシーを再考する
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高嶋 成豪 インフルエンス・テクノロジーLLC マネージング・パートナー
人材開発/組織開発コンサルタント。インフルエンス・テクノロジーLLC.マネージング・パートナー。ゼネラル・モーターズ、ジョンソン・エンド・ジョンソンなどで人材開発に従事。現在リーダーシップ、コミュニケーション、チームビルディング、キャリア開発のセミナーを実施し、年間約1000名の参加者にプログラムを提供している。ウィルソンラーニング・ワールドワイド社によるリーダーシッププログラム、LFG(Leading for Growth:原著はコーエン&ブラッドフォード両博士の共著“Power Up”)のマスター・トレーナー。2007年『影響力の法則 現代組織を生き抜くバイブル』(原題“Influence without Authority”)を邦訳。コーエン&ブラッドフォード両博士から指導を受け、「影響力の法則」セミナー日本語版を開発。日本で唯一の認定プロバイダー。筑波大大学院教育研究科修了 修士(カウンセリング) 日本心理学会会員 ISPI(the International Society for Performance Improvement)会員 フェリス女学院大学講師
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