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第5回 いかに周囲の協力を得るか? カレンシーの交換(2008.07.27)

インフルエンス・テクノロジーLLC  高嶋 成豪


 私の第2回目の記事で、レシプロシティについて触れました。

第2回 何が人を動かすのか

何かを受け取ったらお返ししなければならないと感じる社会通念のことです。今、ちょうど夏の贈り物の季節ですね。先日、思わぬ方からお中元をいただいてしまい、出遅れていた私は、慌ててお返しを用意しました。このように慌ててしまうのは、レシプロシティが働いているからです。このレシプロシティという社会通念は、人間社会に古今東西見られるもの。そのうえとても強力です。この流れに逆らえば、その人間関係の中で生きていくのは難しくなるからです。「あいつは挨拶しても返事もしない」「せめて言われたことを真っ先にやってくれればいいのに」などといわれて、徐々に仲間はずれにされたりします。逆にちゃんとお返しする人、言い換えると約束を守る人、期待に違わぬ良い仕事をする人、こちらの苦労をわかってくれる人などは、周囲から信頼され、人々が集まってくるのですね。  レシプロシティの原則からすると、すぐに周囲の協力を得られるプロジェクトマネジャーや、カリスマなどといわれるリーダーは、「この人にお返ししなければ」と感じている人が大勢いる、ということもできるのです。

 ここでよく考えなければならないのは、相手が「受け取った」と感じること。相手にとって「これはありがたい」と感じられれば、相手の協力を得られる可能性は、ぐっと高まります。しかし、こちらがどんなに良いものを手渡したつもりであっても、それに価値を感じなければ相手は受け取ったと思わない。それどころかありがた迷惑だなどと思われてしまう。これではあなたに「お返ししよう」などという気になりません。こちらが求める何かを得ようと思ったら、相手が価値を感じる何かを渡す必要があります。そこでは相手が同じ程度の価値があると感じるもの同士が交換されるので、それを通貨にたとえて「カレンシー」、そのやり取りを「カレンシーの交換」と呼びます。「影響力の法則」の著者、アラン・コーエンとデビッド・ブラッドフォードによれば、これが相手を動かす基本的なメカニズムです。

 このメカニズムを最大限に有効に使うには、相手が価値を感じる何かをつかんでおく必要があります。それは予算の達成かもしれないし、プロジェクトの期限内の終了かもしれない。品質基準を満たすこと、上司に認められることかもしれない。部下たちの成長に価値を置くマネジャーもいる。専門技術の向上やキャリアップに価値を感じるメンバーも少なくない。多くは、その人の置かれている立場を理解すれば、読めてくることです。必ずしも相手の性格まで読まなくてもよいのです。私たちはうまくいかない相手の性格は悪く感じ、うまくいっていると良い人に思えるものです(第3回の記事参照)。

第3回 否定的サイクルを脱する

最初から答えは出ているようなもの。それよりも、その人が置かれている立場にいたら、何をありがたいと思うだろうかと考える。ひょっとしたら、組織の中で孤独だったりすると、心を許せるような人間関係自体に価値を置くことも少なくない。組織の中では一般的に上に行くほど、孤独ですね。下の方にも孤独な人はいます。

 こうして相手が何に価値を感じるかをつかめれば、こちらが手渡すカレンシーを用意すればよいのですが、しばしばそう簡単にはいきません。このときの落とし穴は、こちらにカレンシーがないと決めつけてしまい、早々にあきらめてしまうことです。

(部下たちのモチベーションを高めたい開発課長)  F氏は、あるメーカーの基幹製品の開発課長で、複数のプロジェクトの責任者でもあります。近年、基幹製品といえどもお客様のニーズが刻々と変わってしまい、なかなか技術的な方向性を打ち出せませんでした。お客様や会社からのプレッシャーが強まる中で、部下たちのモチベーションはいまひとつ高まりません。予算は限られており、報奨金や昇給も期待できません。F氏自身は、この分野の技術には誰にも負けないという自負があります。しかし、
今はリソースが不足しています。毎日忙しさに気を紛らせ、問題を先送りするF氏です。

 F氏のように「金があれば」「権限があれば」と考える人は少なくありません。私たちは、金や権限がなければ人を動かせないと感じがち。特にプレッシャーが強まってくるとそう感じるような気がします。確かに、金や昇進は大きなカレンシーになりえます。しかし、現実には金にそれほど価値を感じない人もいます。ボーナスが増えたからといって、その分もっと働こうなどという人は、今では少ないでしょう。それよりも、他の何かに価値を感じないだろうか。「影響力の法則」では、組織で使える次のようなカレンシーが紹介されています。 1.気持ちを高揚させるもの 2.仕事そのものにやくだつもの 3.立場に関するもの 4.対人関係に関するもの 5.その人自身に関するもの   たとえば、もっと面白い仕事や情報の機会、人脈、アイデアを聴いてくれること、コーチングしてくれること、わくわくするようなビジョン、孤独を紛らす話し相手などなど。実は私たちが想像する以上に、カレンシーとして使えるものには多くの選択肢があります。その中で得意なものを使う。また今まで使ったことはないけれども、これで相手が動くなら、思い切って使ってみる。

 協力を得たい相手が、上司であっても、部下であっても、他部門のマネジャーであっても、あるいは協力会社の責任者であっても、協力者に恵まれるプロジェクトマネジャーの方々は、彼らと頻繁にカレンシーの交換を行っています。そのためにも、カレンシーの選択肢を増やしておくと良いのです。それは、誰にでもできること。すごいことをやらなくても、多くはすでに持っているものを使えばよいのです。

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 ・本質を見極める
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5.ステークホルダーと良い関係を作る・WinWinの関係
 ・信頼を得る
 ・チームを結束させる
 ・(演習5)期待と要求のロールプレイ
6.まとめ
 ・(演習6)カレンシーを再考する
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著者紹介

高嶋 成豪    インフルエンス・テクノロジーLLC マネージング・パートナー

人材開発/組織開発コンサルタント。インフルエンス・テクノロジーLLC.マネージング・パートナー。ゼネラル・モーターズ、ジョンソン・エンド・ジョンソンなどで人材開発に従事。現在リーダーシップ、コミュニケーション、チームビルディング、キャリア開発のセミナーを実施し、年間約1000名の参加者にプログラムを提供している。ウィルソンラーニング・ワールドワイド社によるリーダーシッププログラム、LFG(Leading for Growth:原著はコーエン&ブラッドフォード両博士の共著“Power Up”)のマスター・トレーナー。2007年『影響力の法則 現代組織を生き抜くバイブル』(原題“Influence without Authority”)を邦訳。コーエン&ブラッドフォード両博士から指導を受け、「影響力の法則」セミナー日本語版を開発。日本で唯一の認定プロバイダー。筑波大大学院教育研究科修了 修士(カウンセリング) 日本心理学会会員 ISPI(the International Society for Performance Improvement)会員 フェリス女学院大学講師

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