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第4回 上から認められるプロマネ(2008.07.22)

インフルエンス・テクノロジーLLC  高嶋 成豪


 プロジェクトマネジャーの方にうかがうと、「いい仕事をしてもなかなか認められない」「いいところは、幹部が持って行ってしまう」と憤っている方にときどきお目にかかります。上司から認められるプロマネの方は、何をしているのか、影響力の法則で探ってみましょう。

(メーカー開発本部の情報システム刷新に力をつくしたEさんのケース)
 Eさんはメーカー管理本部の情報システム部に所属するプロジェクトマネジャー。今回、研究開発システムの全面的な見直しにあたって、プロジェクト全体を任されることになった。開発から量産までを一元管理し、コストを大幅に削減することがこのプロジェクトのねらいだ。

 Eさんは、これまでの経験から、最初にこのプロジェクトの本質を理解しようと決意した。開発から量産まで一元管理できると、開発本部にとって何がよいのだろうか?開発コスト削減の意味は何なのか?プロジェクトが具体的にスタートする前に、Eさんは開発本部長、各開発部長に直接たずねることにした。話しをしてみると、各部長が考えるこのプロジェクトのイメージは、それぞれ異なっていることに気づいた。共通しているのは、限られた人材で開発期間を短縮し、顧客の要請に早く応えることを第一義と考えている点だ。またコストを削減できれば、新しい環境技術に費用や人員を投入できる。現場の技術者たちとも話しをしたが、かれらの多くは、このプロジェクトに懐疑的とみえた。感覚的には8割ほどの技術者が、開発システムの更新を面倒なことと考えているようだ。

Eさんは開発本部のメンバーに会うたびに、「これはみなさんがもっとクリエイティブな仕事をするためのシステム更新ですからね。みなさんの成功が私の成功です。ですから情報共有させてくださいね」と繰り返した。とくに開発本部長には、「このプロジェクトで本部に一体感をつくりましょう。それによって、いち早く環境技術を市場に送り出しましょう」「いいメンバーだけをプロジェクトに送ってください」

「成功の喜びは、ともに味わわせてくださいね」と何度も伝えた。

 1回目のミーティングの時、Eさんは成功を予感した。メンバーはみな各部の優秀な人材。これまでになく、前向きな討議となったからだ。この後の実行段階でも、Eさんはできるかぎり開発本部のメンバーが使う言葉を口にするようにした。メンバーと現場にわかりやすくするためだ。また現場を離れる不安を解消させるため、メンバーの上司に彼らの貢献を評価するよう頼んで歩いた。全員のコミットメントを引き出すには、本人たちとねばり強くコミュニケーションをとる必要がある。そしてこう言い添えた。

「成功の喜びは、私もともに味わわせてくださいね」

 こうして新しいシステムは完成、稼働し始める。もちろん紆余曲折はあった。困難な日々も続いた。しかし、Eさんはあくまでも開発本部の立場に立って仕事を進めていった。プロジェクトの進捗だけでなく、メンバーの活躍を、彼らの上司と本部長に伝えた。自分は黒子に徹する。しかし、成功をともに喜びあう。新システムへの移行も順調のようだ。打ち上げの席には、各部長だけでなく開発本部長もやってきた。入れ替わり立ち替わりEさんに声をかける。「よくやってくれたね。本当に感謝しているよ。ありがとう。ところで君、開発本部にこないか?」Eさんはこのプロジェクトの成功の喜びに浸るのだった。

 社内で評価されるプロジェクトマネジャーは、最終目標に焦点をあて、相手の立場でものをいいます。これは現場に妥協するのとは違います。異なる意見もはっきり述べます。しかしそれが相手に受け入れやすいのは、相手の立場にたっていることがわかるからです。Eさんの場合、開発本部で使う技術用語を使って説明するようにしました。現場から離れて評価されていないと感じるメンバーの立場に立ち、彼らの上司に彼らの貢献を伝えました。意見が割れたときも、どちらが各部の目標達成に役立つのか、といって部長に迫りました。そして、このプロジェクトの成功はあくまでも開発本部のものである、と自分は黒子に徹しました。一方、情報システム部長には現場で起こっていることを伝え、必要があれば開発本部長と会わせ、双方を安心させるよう計らいました。部下が目立ち、自分が取り残されることを、上司は不安に感じるものだからです。

 結果的に、開発本部におけるEさんの役割は、価値あるものと見られるようになりました。このように、社内で評価されるプロジェクトマネジャーは、レシプロシティを意識して、戦略的に動いていると言っていいでしょう。「影響力の法則」は、この戦略頭を鍛えるのに役立つと思いますよ。


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5.ステークホルダーと良い関係を作る・WinWinの関係
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 ・チームを結束させる
 ・(演習5)期待と要求のロールプレイ
6.まとめ
 ・(演習6)カレンシーを再考する
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著者紹介

高嶋 成豪    インフルエンス・テクノロジーLLC マネージング・パートナー

人材開発/組織開発コンサルタント。インフルエンス・テクノロジーLLC.マネージング・パートナー。ゼネラル・モーターズ、ジョンソン・エンド・ジョンソンなどで人材開発に従事。現在リーダーシップ、コミュニケーション、チームビルディング、キャリア開発のセミナーを実施し、年間約1000名の参加者にプログラムを提供している。ウィルソンラーニング・ワールドワイド社によるリーダーシッププログラム、LFG(Leading for Growth:原著はコーエン&ブラッドフォード両博士の共著“Power Up”)のマスター・トレーナー。2007年『影響力の法則 現代組織を生き抜くバイブル』(原題“Influence without Authority”)を邦訳。コーエン&ブラッドフォード両博士から指導を受け、「影響力の法則」セミナー日本語版を開発。日本で唯一の認定プロバイダー。筑波大大学院教育研究科修了 修士(カウンセリング) 日本心理学会会員 ISPI(the International Society for Performance Improvement)会員 フェリス女学院大学講師

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