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現象だけを見るのではなく、全体像を見る(構造を疑う)ことで、今まで気づかなかったいろいろな点が見え、思考の範囲が広がり、クリティカルな考えができる

第6回 構造を疑う(2020.02.04)

プロジェクトマネジメントオフィス 鈴木 道代


◆構造を疑う

PMstyleでは、「クリティカルシンキング入門」セミナーを定期的に実施しています。
その中では、クリティカルシンキングのポイントとして、次の3つのポイントを解説しています。

1.7つの心構え
2.合理性を疑う
3.思考を疑う

本連載では、上記のポイントについて、身近なことで使う例を取り上げています。
本号では、「2.合理性を疑う」の中の、「構造を疑う」として、因果関係はいつの間にかぐるっと回って元に戻ってくるという話を取り上げます。

因果関係とは、2つの事象に原因と結果の関係があることを示しています。
例えば、部長が今月の予算達成状況から来月の方針を決めようとしているが、決定が遅れている状況を考えてみます。

なぜなぜ分析のように、部長の決定が遅れているのはなぜだろうと結果から原因を考えてみます。
「部長の決定が遅れている」のは、「決定するための情報が足りない」ことであり、足りない原因は「部下の報告書がない」からであり、報告書がないのは、・・・と原因を深く掘り下げて考えていきます。そして、根本的原因は、「部下が疲れている」ことだと判明したとします。すると、部下が疲れている状況を改善するための何らかの策を考えるという流れになります。

因果関係をその一つの現象だけではなく、全体の構造として捉える場合には、原因から結果を考えていきます。

例えば、「部下が疲れている」とどんなことが起こるのかを考えて、「業務効率が下がる」、とどうなるのかを考えて、「報告書の完成が遅れる」、すると「部長の判断が遅れる」の結果となる、と考えていきます。次に、「部長の決定が遅れる」とどんなことが起こるのかを考え、「来月の方針決定が遅れる」「方針が変わり、その方針で動ける時間が減る」「部下が疲れる」と続きます。

つまり、時間の遅れはありますが、下記のような構造があります。

┌────────────────────────────────────┐
│「部下が疲れる」→「部下の業務効率が下がる」 →「報告書の完成が遅れる」│
│   ↑                         ↓      │
│「1日の営業の訪問件数が増える」         「部長の判断が遅れる」│
│   ↑                         ↓      │
│「新しい方針で動ける時間が減る」   ←   「方針変更の決定が遅れる」│
└────────────────────────────────────┘

「新しい方針で動ける時間が減る」から、「1日の営業の訪問件数が増える」、そして、ますます「部下が疲れる」という結果は、すぐには発生しませんが時間が経過すると必ず、結果として現れてきます。また、「部下が疲れる」ことが原因で、他の現象を引き起こしますので、もっと複雑な因果関係が背後にはあるはずです。

そして、このような全体像の中で、どんどん悪くなるデススパイラル(負のスパイラル、悪循環)ではなく、正のスパイラル、好循環になるためには、どの現象が好転すればよいのかを考えます。その部分をレバレッジポイント(てこの作用点)と呼び、小さな力で大きな全体を動かすポイントとなります。

このように因果関係をある事象の結果から考えて、全体像を見ることが構造を考えることです。もちろん、最初から原因は分かっていませんので、結果から原因を探り、その後、その原因からどんなことが起こるのかを考えます。

なぜなぜ分析やロジックツリーのように原因を考えて、直線で図式化するだけではなく、原因からどんな結果になるのかを遅れの時間も含めて考えることで、全体像が見えてきます。

現象だけを見るのではなく、全体像を見る(構造を疑う)ことで、今まで気づかなかったいろいろな点が見えてきて、思考の範囲が広がり、クリティカルな考えができます。

図式化したものはシステム思考の因果ループ図と呼ばれています。詳細は、下記コラムをご覧ください。

PMの道具箱 第77回 システム思考のツール:因果ループ図

◆関連するセミナーを開催します
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        ※ハーフセミナー、ナイトセミナーは、事前学習が3時間あります。
        ※少人数、双方向にて、演習、ディスカッションを行います
  講師:鈴木 道代(株式会社プロジェクトマネジメントオフィス,PMP,PMS)
  詳細・お申込 https://pmstyle.biz/smn/critical.htm
  主催 プロジェクトマネジメントオフィス、PMAJ共催
 ※Youtube関連動画「クリティカルシンキング」「プロジェクトマネジャーのためのシステム思考
クリティカルシンキングはプロジェクトマネジメントに必要
クリティカルシンキングで影響力の武器を使う
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  【カリキュラム】                           
   1.クリティカルに考えるとは
   2.ロジカルシンキング
   3.何を疑うのか(合理性)
   4.何を疑うのか(内省)
   5.クリティカルシンキングの4ステップ
   6.具体的状況におけるクリティカルシンキング演習
   7.クリティカルシンキング総合演習              
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著者紹介

鈴木道代、PMP、PMS
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス、PMstyleプランナー
神戸大学工学部卒業後、アパレル企業の情報システム部に所属し、データベース管理者、システムエンジニア、リーダーとして社内システムの開発・マネジメントに携わる。
その後、独立し、小規模のシステム開発プロジェクトを受託し、プロジェクトマネジメントや開発マネジメントを担当する。
2004年、PMPを取得し、株式会社プロジェクトマネジメントオフィスにて、プロジェクトマネジメントのコンサルティング、研修講師、セミナー講師を担当する。2010年、PMS取得。

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