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本質的な要求は見えない場合が多い。コンセプチュアルスキルによって、本質的な要求を洞察し、解決することができる

第12回 本質要求を洞察する(2019.10.16)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人

◆コンセプチュアルスキルの3大課題


コンセプチュアルスキルが重視されている3大理由は

・本質的な問題を洞察し、解決する
・要求を洞察し、対応する
・未来を洞察し、対応する

の3つだといえます。これまでの解説は、問題を意識して行ってきましたが、ここで、要求や未来の洞察についても少し触れておきたいと思います。

もちろん、これらにおいても、本質を洞察することがベースになることは変わりませんので、コンセプチュアルスキルでこんなこともできるということを感じて頂ければと思います。

まずは、要求の洞察から考えてみます。

◆本質要求と要求、要件


要求という言葉は、よく使いますが、その意味合いは結構、曖昧です。そこで、ここでは要求、本質要求、要件の3つに分けて考えることにします。

まず、要求と要件の違いですが、要求は必要だ、欲しいと概念的に考えているものやことで、要件はそれを具体化したものです。例えば、「壁を白くする」というのは要求で、「ペンキを塗る」とか、「洗浄する」といった、具体的に必要な条件が要件になります。つまり、要求と要件は概念と形象になっています。

本質要求というのは要求の中で、本質だと考えられるものです。ビジネスや人間関係の中で対応すべきなのは本質的な要求です。これは2つの理由があり、一つは要求していることが本当に必要としていることとは限らない、もう一つは要求をすべて実現していたらコストや時間がかかってしまうからです。


◆忖度と本質要求


特に重要なのは前者です。最近、よく使われるようになった言葉に「忖度」という言葉がありますが、これは相手の気持ちを推し量るという意味です。英語でいえば、
「guess」が近いと思われます。

相手の気持ちを推し量るには、特に日本では、相手の言っていることを真に受けてはだめだと言われます。だから推し量るわけです。

例えば、「壁を白くする」という要求に対して、白いペンキを塗ったら、「そんなことは望んでいない」といわれるようなことがよくビジネスではあります。だから欧米では契約として確認していくわけですが、ここで難しい問題があります。表現としては「白くしたい」といっているけど、イメージは違うケースが多いという問題です。

そこで、問題になるのが要求の本質、つまり、本当に必要としていることは何かです。

これはすでに第4回で説明しましたように、WHYを繰り返して洞察することができます。
【コンセプチュアルスキル入門】第4回 本質の探し方(1)〜WHYによる掘り下げ

例えば、

  「白くしたい」←WHY
    「汚れを目立たなくしたい」

という風に掘り下げていくわけです。これが本当の理由だとすれば、これが対応すべき本質的な要求になります。つまり、ペンキを塗ったり、洗ったりすることではなく、壁全体を汚すという方法もあるかもしれません。


◆見えない要求である


この例から分かるように、本質的な要求は見えない場合が圧倒的に多いのです。これを探り当てるがコンセプチュアルスキルの重要な能力の一つです。

加えて難しいのは、どこに本質があるのかを見極めることです。たとえば、上の例でもう一度、WHYを繰り返したら

  「白くしたい」←WHY
    「汚れを目立たなくしたい」←WHY
     「高く売却したい」

だったとします。すると、話は全然、変わってきます。要するに、売却をする際の利益の問題ですので、現状のままにしておくのが一番適切かもしれません。この見極めが非常に難しいものです。

本質というと普遍性がある正解のように感じます。確かにその通りなのですが、その正解は分からないものです。特に、人間相手の議論になるとそもそも、曖昧で、不確実性が高い世界のことだと考えることもできます。

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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「コンセプチュアル・マネジメント(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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