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前提とは、「推論の際、結論を導くもととなる命題」であり、前提を考えることで洞察が生まれます

第11回 洞察へアプローチ〜常に前提を意識する(2019.09.18)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人



◆はじめに

前々回からは洞察への3つのアプローチとして

(1)概念と形象を行き来する思考
(2)立ち位置を変えて目的を考える
(3)常に前提を意識する

があることを説明し、これまでに(1)(2)を説明してきました。

【コンセプチュアルスキル入門】第10回 洞察へアプローチ〜立場を変えて考える

【コンセプチュアルスキル入門】第9回 洞察への3つのアプローチ

今回は3つ目の「常に前提を意識する」について説明したいと思います。


◆前提とは何か

前提とは、

「推論の際、結論を導くもととなる命題」

と定義されるものですが、もう少し、簡単にいえばある事が成り立つための前置きとなる条件のことです。日本の組織は一様であると言われてきましたが、一様なため、前提が意識されることがあまりありませんでした。いわゆる「常識」で前提は無意識のうちに共有されていました。

しかし、この10年くらい、多様性が増してきて、前提を意識せざるを得なくなってきました。世代や性別が違えば常識が通用しませんし、仕事をしている国が違えば通用しないという状況が普通になっています。

そのような状況でコミュニケーションをスムーズに行うには、前提を明確にすること、が必須になってきますので、前提はコンセプチュアルスキルとは別の局面で意識されるようになってきたといえます。


◆前提の重要さ

例えば、

「部長にプロジェクトへの要員の配置を依頼したが、部長が忙しく、プロジェクトの要員が確保できないままで、時間が経過し、スケジュールが遅れてきた」

というトラブルを考えてみてください。この問題を解決したいときに、どうすればよいでしょうか?経験的には、問題点と問題解決を

(1)(問題点)調整役の部長が忙しい
    →(解決策)部長が忙しくても仕事が回るようにする方法を考える
(2)(問題点)部に人が足らない
    →(解決策)部門で使える人を増やす方法を考える
(3)(問題点)プロジェクトマネジャーのコミュニケーション不足
    →(解決策)プロジェクトマネジャーが的確に確認する方法を考える

といったいずれかの方向性で考えることが多いでしょう。では、実際にどれが解決すべき問題かという問題に行き当たります。


◆問題点の前提は何か

ここに前提が関係してきます。つまり、問題点の前提として例えば、

・部長にとってはプロジェクトのサポートがプライオリティの高い業務だ

という前提で考えれば、(1)が問題だということになりますし、

・部はプロジェクトを回していくに十分なだけの要員を抱えている

であれば(2)、

・要員配置の権限は部長にあるが、要員調達の責任はプロジェクトマネジャーにある

であれば、(3)が問題点だということになります。

実際にトラブルの発生にあたっては、どれかの前提が適切な場合もありますし、すべての前提が妥当な場合もあります。つまり、同じトラブルに対して、前提の捉え方によって認識される問題も、その解決策も変わってくるのです。


◆前提を考えることが洞察力を高める

以上の説明を読んで、そんなことは常に考えているという人もいるでしょうし、あまり考えていなかったという人もいると思います。この差が洞察力の差になって表れてきます。前提をどれだけ考えられ、その中で妥当な前提はどれかを判断できる人は洞察力が高い人です。

言い換えると前提を常に意識することによって洞察力を高めることができますし、常識の異なる人とのコミュニケーションをスムーズに進めることもできます。そして、前提を考えること自体はそんなに難しいことではありません。組織や相手がなぜそういう行動をするのか、なぜそう思うのかを考えるだけです。

難しいのは常に意識することです。洞察力を高めるために、常に前提は何かと考える習慣をつけるようにしましょう。それによって飛躍的に洞察力やコンセプチュアルスキルが高まります。

(以下、次回に続く)

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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「コンセプチュアル・マネジメント(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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