第10回 洞察へアプローチ〜立場を変えて考える(2019.08.01)
◆はじめに
前回は洞察への3つのアプローチとして
(1)概念と形象を行き来する思考
(2)立ち位置を変えて目的を考える
(3)常に前提を意識する
があることを説明し、(1)の「概念の形象の行き来する思考」について説明しました。今回は、(2)の「立ち位置を変えて目的を考える」について説明したいと思います。
◆客観性だけではうまくいかない
コンセプチュアルにものごとを考える中では、「主観」の位置づけが一つのポイントになります。この連載でもいずれ、この話題は取り上げたと思いますが、関心のある方はとりあえずこちらの記事を読んでみてください。
【PMスタイル考】第148話:
直感や主観こそがイノベーションを生み出す
もちろん、主観的に考えるというのは、主観だけで考えるという意味ではなく、客観とのバランスを取るということを意味します。では、客観的とはどういうことなのでしょうか?それは、特定の立場にとらわれず、物事を見たり考えたりすることです。
このため、常に客観的であることが正しいという風に考えられがちです。ところが、ビジネスはそう単純ではありません。例えば、商品開発を考えてみてください。市場調査をして、どのような商品を開発していくかを決めていきますが、この際に客観性にこだわるとあまりうまく行きません。客観的に市場の要求を考え、商品を開発していくと、他社と同じ商品になる可能性が高いためです。
◆自分が欲しいものを作らせる
アップルでiPhoneを成功させたスティーブ・ジョブズは、仕様の評価をするときに、自分の欲しいものであるかどうかに拘ったといいます。一方で彼はプロジェクトに上位者が指示すれば素直に聞き入れるような人材を採用しておらず、エンジニアもジョブズが要求するのだから仕方ないとは考えることなく、その要求の妥当性を考え、妥当であれば仕様を変更していきました。iPhoneの多くの特徴はそのようなプロセスでできたというのは有名です。
さて、ここで問題はジョブズはなぜ、そのような要求をしていたのかということです。
ジョブズはCEOとしてこのようなスタンスをとっていたのではありません。ジョブズは「ユーザー」の立場で評価し、要求していたと考えられます。
◆相手の目的を考える
コミュニケーションにおいて、よく相手の立場で考えてみてくださいとよくいいます。これは、相手の立場であればどのように考えるかを考えることによって相手の言っていることの真意を理解できるからです。
これをもう少し広く考えるのが立ち位置を変えて考えることです。その際に、洞察し、深く考えていくためには、「目的」を考えることがポイントになります。
◆立ち位置を変えて考える例
例えば、あなたが製品開発プロジェクトのプロジェクトリーダーで上位管理者から「製品原価を下げる」ことを指示されたとします。プロジェクトリーダーとしては、その指示を如何に実現していくかを考えなくてはならないわけですが、このとき
(選択肢1)製品の原材料のコストを下げる
(選択肢2)プロジェクトコストを下げる(開発コストを下げる)
という2つの選択肢があったとします。
そこで、さらに深く考えて、まずすべきことはどちらかということを考えていく必要があります。ここで考えなくてはならないことは、なぜ、上位管理者はそのような指示をしたかということです。
そのためには、自分が上位管理者の立場であればどのように指示するかを考えてみます。つまり、その指示の目的を考えてみるのです。いろいろと考えてみると、今年度の経営目標は財務体質を強化するために収益率を高めることであることに気がつきました。
つまり、上位管理者は収益率を高めるために、製品の原価を下げることを指示したのです。そこで、財務体質を高めるためには、プロジェクトコストを下げるよりは、原材料のコストダウンする方が効果的だと考え、選択肢1を選ぶことにしました。
このように、さまざまな立場にたってみて、それぞれの立場での目的を考え、目的実現に貢献するにはどうすればよいかを考えていくことが、自分自身の意思決定のための洞察になっていくわけです。
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著者紹介
好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「コンセプチュアル・マネジメント(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。
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