第9回 洞察への3つのアプローチ(2019.04.03)
◆洞察はコンセプチュアルスキルの中核スキル
前回まで、本質を見極める方法について説明しました。今回からはそのような方法を使って、実際に本質を見極める活動(思考)の進め方について説明していきたいと思います。
まず用語を整理しておきます。本質を見極める活動は「洞察」という言葉で表現します。コンセプチュアルスキルは
周囲で起こっている事柄や状況を構造的、概念的に捉え、事柄や問題の本質を見極めるスキル
と定義されますので、洞察はコンセプチュアルスキルの中核的なスキルだといえます。
◆洞察の難しさ
本質を見極める方法は前回まで説明してきたとおりですが、本質を見極める活動はもう少し複雑です。問題の本質を見極めようとすると、何が起こっているかを観察し、その中から何を問題にするかを決める必要があります。ある意味で、本質を考えること自体より、観察や問題定義が重要であるといえます。
たとえば、プロジェクトが計画通りに進んでいないとしましょう。コストもオーバーしているし、スケジュールも遅れています。チームメンバーは他の業務も忙しく、このプロジェクトへのコミットメントが低いような気もします。まず、問題になるのはこの状況を回避するためにはこのような観察でいいのかを十分に考える必要があります。
仮にいいとすれば次は何を問題にするかです。計画通りにプロジェクトが進んでいないことが問題だと考えるべきなのか、それともメンバーのプロジェクトへの従事が少ないことが問題だと考えるべきなのかといったことです。
仮に、計画通りにプロジェクトが進んでいないという問題だと捉えるなら、本質はコストやスケジュールを乱している理由はどういったものかを考えていくと、問題の本質を見つけることができるでしょう。
◆洞察への3つのアプローチ
これらを如何に適切に行うかが、問題の本質を見極めるには重要なのです。そのためにはどのようなアプローチをすればよいのでしょうか。ここでは3つ取り上げたいと考えています。
(1)概念と形象を行き来する思考
(2)立ち位置を変えて目的を考える
(3)常に前提を意識する
の3つです。
(1)はコンセプチュアル思考ですが、特に、直観/論理、大局/分析、長期/短期の3つの行き来が大切です。(2)は自分の立ち位置を変えてみる(ラダリングする)ことです。
これは特に自分の仕事の本質を洞察する、あるいはビジネスにおいて顧客要求を洞察するといった場合に有効です。(3)は常に前提を考えることです。つまり、なぜそのような前提を置くのかで、それを考えることが洞察の本質だといってもよいでしょう。
◆概念と形象を行き来する思考
コンセプチュアル思考の中では、直観/論理、大局/分析、長期/短期の軸をうまく使うことがポイントになります。この3つの軸は以下のような意味合いがあります。
まず、直観/論理の軸ですが
・直観的に感じたこと(仮説)が論理的に説明できれば洞察が生まれる
といえます。また、「直感」が有効な場合もあることに注意が必要です。次に、大局/分析の軸ですが、
・大雑把にイメージしたことを、分析的に説明できれば洞察が生まれる
といえます。言い換えると、空間軸を行き来することによって洞察が生まれると考えてもよいでしょう。最後に長期/短期の軸ですが、
・現在から未来を考える、未来から現在や過去を考えると洞察が生まれる
といえます。言い換えると、時間軸を行き来することによって洞察が生まれるといえます。
以上の3つの軸を特に意識しながらコンセプチュアル思考で本質を見極めていくと、より適切な本質を見つけることができます。
(以下、次回に続く)
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著者紹介
好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「コンセプチュアル・マネジメント(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。
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