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第54話:「どうやるか」に留まらず、「何をするか」を考える〜閉じた場から開いた場へ(2020.07.10)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人


◆改善だけでイノベーションができない日本

この10年くらい、日本のビジネスパースンは「どうやるか」を考えることは得意だけど、「何をするか」を考えることは苦手だと批判されることが多くなってきました。このような問題が頻繁に指摘されるようになった背景には、時代的に変化しなくてはならない状況であるにも関わらず、出てくるのは改善のアイデアばかりで、イノベーションのアイデアが出てこないことがあります。これが、経済に深刻な影響を与えています。

現実にこの20年くらいで起こったことを見ていてもよくわかります。バブルの崩壊後、日本が失われた20年とか、30年とか言っているうちに、米国ではアマゾン(1995年)、グーグル(1998年)やフェイスブック(2004年)といった企業が登場し、併せると50兆円近い売り上げをあげています。日本をみれば、例えば1997年に設立され、時代の寵児とみなされている楽天が初の売り上げ1兆円超えを達成したが2018年ですので、規模の違いがよくわかります。


◆アマゾンと楽天の違い

楽天とアマゾンの違いがなぜ、生まれたのかを考えると明らかで、楽天は従来の通信販売をネット化したのに対して、アマゾンはそういう枠で考えていないからです。アマゾンの売り上げのうち、本業だと思われているネット通販は50%強に過ぎず、実店舗を入れても60%程度です。残りは第三者販売(出店)サービス手数料や、プライム会員などで占められています。

アマゾンの始まりが、書籍の通販だったことを考えると、この事業拡張は本当にすごいものがありますが、問題はなぜそのような展開が可能だったのかにあります。ここで出てくるのが冒頭の「どうやるか」だけを考えるのと「何をするか」まで考える違いです。

アマゾンのプライム会員になると有償である代わりに、通販の送料が無料になり、かつ音楽やビデオなどの視聴もできるというビジネスモデルは非常によくできています。それぞれにシナジーがあるからです。つまり、会費を払って送料が無料になれば通販は売れるし、音楽も聴けるので積極的に会員になる。会員になれば送料無料でメリットのあるサイトで商品を買うということで会員も増えていく。今のところ他社の追随を許さないサービスを作り上げています。


◆「どうやるか」には答えがない場合どうする

昨年、楽天が送料を出店者に負担させ無料化を図り失敗しましたが、実際に送料を無料にすることは通販の競争力の源泉であるにも関わらず、非常に難しいことです。それをアマゾンは顧客満足度の高いビジネスモデルで実現しているのです。

送料無料というのはそこだけとれば「どうやるか」、つまりどうやって通販の送料を無料にするかという問題なのですが、楽天の失敗を見ても分かるように通販の手段として考えていると出店者に負担されるくらいしかありません。しかし、モールというのは価格競争の世界なので、出店者は負担しきれません。このため「どうやるか」を考えてみても答えはないのです。楽天が送料無料に手を付けられなかったのはこのためだと思われます。

では、なぜ、「送料を無料にするにはどうするか」と考えてしまうのでしょうか。ここには前提があることが分かります。それは

「通販は商品を提示し、販売し、送付し、収益を上げるビジネスである」

という前提です。通販という概念だといってもよいと思います。

これにたいしてアマゾンがやっていることは、上に述べた通りで、商品の販売だけで送料を無料にしていません。アマゾンが行っているのは

「通販は、有料会員制で、送料無料も含む各種サービスを提供するという仕組みの中の一つの活動である」

です。つまり、従来の通信販売の概念や前提を覆し、新しいビジネスモデルを作っているのです。

このようなビジネスモデルを作るには、どのタイミングで何をするのか、つまりどのタイミングで商品分野を拡大し、どのタイミングで出店者を募り、どのタイミングで会員制を立上げ、どのタイミングで音楽サービスを立上げが最大のポイントですが、アマゾンの書籍だけ販売していた時期から活用している著者からみえば、実にうまくやっているなという感じです。アマゾンの場合、何をするかというのはほぼこのタイミングを決めることに等しかったのだろうと思えます。


◆閉じた場と開いた場の違いは前提

考えるといった場合、開いた場で考える場合と、閉じた場で考えることができます。

これまでは、改善のために閉じた場でひたすら考えてきました。閉じた場では、シナリオがありますし、正解もあります。まったく同じ経験はできないにしても、考える上で経験が重要な要素になってきます。改善などはまさにこういう思考です。

しかし、冒頭に述べましたように改善だけでは事業が縮退し、成立が難しくなっており、新しい柱を創るイノベーションが大切になってきています。かつての技術イノベーションは製品の中で使われる技術を生み出すことで閉じた場でも生まれていました。しかし、今のイノベーションの多くは、製品だけではなく、ビジネスの変革を伴うため、閉じた場ではほとんど起こりません。開いた場で考えたときにはじめて起こるものです。

では、開いた場と閉じた場の違いは何か。それは、前提です。


◆前提を踏襲するか、覆すか

前提を踏襲すれば閉じた場になります。す。閉じた場で考えるとは、従来と同じ前提を持つ人達が集まり、同じ前提でより優れたやり方を探していきます。上での例でいえば、通販とは「商品を提示し、販売し、送付し、収益を上げるビジネス」だと考える人が集まり、書品を安く提供する、商品を探しやすくする、流通を速くするといったことのアイデアを出し、改善していくわけです。

前提を覆せば、開いた場にならざるを得ません。前提がないということは、どうやるかではなく、何をするかが決まっておらず、議論していくということです。そのためには、ある程度目星をつけてさまざまな価値感や前提を持つ人を集める必要があります。

同時に大切なことは、失敗に対する認識です。そもそも、日本のビジネスパースンが閉じた場で考えることを好む理由は失敗をしたくないからで、世間ではいろろろな意見がありますが、やはり失敗が自身の評価にネガティブな影響を及ぼすからでしょう。ここを変えないと開いた場はできません。


◆開いた場をつくるために

ここを変えるためには、やはり経営層や上位管理者の考え方が変わる必要があります。そしてそのためには、今のような制度改革なども必要ですが、それが新しい価値観とその価値観の定着した文化に収束していく必要があります。これついては、エドガー・シャインの組織文化の研究が参考になります。例えば、こちらをご覧ください。

【PMスタイル考】第162話:ワンチーム〜本質は文化の構築

このような風土の問題と同時に、前提を覆すためには思考スキルも必要です。広くいえばコンセプチュアル思考、もう少し絞ればクリティカルシンキングです。クリティカルシンキングとは

・正しく疑うこと
・ものごとの是非を慎重に判断し、あるべき方向に導く
・自分で方向付けを行い、自己鍛錬を重ね、自分で自分の意見をチェックし、修正を行っていく

といった定義はされる思考法ですが、開いた場で考えるには必須の思考法です。

このような文化を構築し、リーダーがスキルを身に付けることによって、「どうやるか」だけを考えるのではなく、前提を疑い、「なにをするか」を考えることのできる組織やプロジェクトになっていくことが求められています。


コンセプチュアルリーダー塾について

コンセプチュアルリーダー塾では、「開いた場」を作り、そこでいくつかのテーマで考える体験をし、コンセプチュアルスキルを高めることを目指します。

塾では、基本編と応用編に分け、基本編では

・本質を見極め、コンセプトを創る
・コンセプトの実現シナリオを作る
・目標達成のための問題解決を創造的に行う

応用編では、

・生産性向上への応用
・統合による対立解消への応用
・コミュニケーションへの応用

について議論します。


◆関連するセミナーを開催します
━【開催概要】━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆クリティカルシンキング入門             ◆7PDU's
  日時・場所:【ZOOM】2020年 12月 01日(火)〜12月 02日(水)
                   13:30-17:00(13:20入室可)
        ※ZOOMによるオンライン開催です。2日間に分割して開催します
        ※少人数、双方向にて、演習、ディスカッションを行います
  講師:鈴木 道代(株式会社プロジェクトマネジメントオフィス,PMP,PMS)
  詳細・お申込 https://pmstyle.biz/smn/critical.htm
  主催 プロジェクトマネジメントオフィス
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  【カリキュラム】                           
   1.クリティカルに考えるとは
   2.ロジカルシンキング
   3.何を疑うのか(合理性)
   4.何を疑うのか(内省)
   5.クリティカルシンキングの4ステップ
   6.具体的状況におけるクリティカルシンキング演習
   7.クリティカルシンキング総合演習              
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「プロジェクト&イノベーション(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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