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第53話:正解のない問題を解決する抽象と具象の行き来(2020.04.10)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人


◆抽象病と具体病

ブログ「コンセプチュアル・マネジメント」に掲載している「コンセプチュアル講座コラム」で、楠木建先生が山口周さんとの対談集 「仕事ができるとはどういうことか?」(宝島社、2019)で、

「抽象的な理解ほど実用的で実践的なものはない」

という発言をされたのを取り上げて共感するという記事を書いたところ、読まれた方(Aさんと表記)からコロナ問題を取り上げてかなり長いメッセージを頂きました。内容は後で触れますが、一言でいえば抽象的であることが実践的であるというのはよく分からないということでした(紹介することはご了解いただいています)。書いた記事はこちらです。

【コンセプチュアル講座コラム】「抽象的な理解ほど実用的で実践的なものはない」l

2020年3月に発刊された細谷功さんの新刊「「具体⇔抽象」トレーニング 思考力が飛躍的にアップする29問 (PHPビジネス新書)」(PHP出版、2020)で、細谷さんは抽象病と具体病という話をされていますが、まさに、具体病だと思います。

さて、細谷さんはこの本で、問題解決には以下の3つがあると指摘されています。

(1)具体→具体→具体・・・(表面的問題解決)
(2)抽象→抽象→抽象・・・(机上の問題解決)
(3)具体→抽象→具体・・・(根本的問題解決)

なかなか、的を得た命名だと感心しました。これは、楠木先生が「抽象的な理解ほど実用的で実践的なものはない」とおっしゃられているのと合致します。好川もコンセプチュアル思考の一つの軸として抽象と具象の行き来の軸を設定していますが、まさにこの指摘と同じ感覚を持っているからです。


◆重視される具体→具体→具体

コンセプチュアルスキルの公開講座を始めてよく分かったのは、(1)が圧倒的に多く、(2)が少数派ながら必ずいる。そして、(3)は頭で理解している人は増えてきたのですが、実践している人は(2)よりもっと少ないことです。コンセプチュアルスキルの公開講座はいくつかの切り口で、(3)を実践するようにしようとしています。

(2)は官僚とか政治家の批判によく使われますし、ビジネスの現場ではとにかく具体性が求められるため、まさに机上の空論を言うなといった批判がされます。その批判の意味合いは、いくら抽象的なレベルで問題解決しても行動に結びつかないと意味がないというもので、多くの人はそのように感じています。

問題は(1)です。「現場では現物、現象が大切だ」という言葉に代表されるように具体が重視され、(1)の問題解決が行われています。そして、その理由を聞くと認識を共有できるとか、分かりやすいからだという返事が返ってくるのが普通です。実は冒頭で紹介したAさんからもらったメッセージはまさにこのような発想の議論でした。


◆コロナ問題でいう不要不急とは何かというAさんの指摘

指摘は以下のようなものです。

今、コロナ感染防止で「不要不急」の外出を自粛してくれと言われています。緊急事態宣言が出され、その中でも不要不急の外出を自粛してくれということになっています。しかし、不要不急とはどういうことかを具体的に示してくれないと分からない。このことを考えると抽象的理解が実用的で、実践的であるというのは理解できない。

Aさんの意見は

・××はしてはだめだ
・○○はしてもよい

で、具体的な行動を〇〇、××に入れるべきだということです。不要不急といわれても漠然としていて分からないが、具体化すれば分かりやすくなるというのが頂いたメッセージにも書いてありました。

加えて、具体的に言わないのは、現実を把握できていないので漏れがあると困るからだということでした。政治家や役人は立場上、間違ったことは言えないので、具体的に示すと書かれていないものはやってもよいということになる。そこでできるだけ広く網をかけれるように抽象的にしか言っていないのだろうという指摘でした。そして入り口はコロナでしたが、そこからマネジャーの在り方についても同じ主張をされていました。


◆具体的に言われると煩わしく感じる人

ここで注目したいのは、テレビとかをみていると不要不急を具体的にしろという人が多数派のようですが、稀に、不要不急は不要不急という表現でよい、むしろ、具体的にいろいろ言われると煩わしいという人がいることです。この人達の違いはどこにあるのでしょうか?

それは「不要不急」という概念を持っているかどうかです。自分なりに不要不急という概念を持っていれば、確かに具体的に言われるのは煩わしいと思います。不要不急は不要不急なのです。これが楠木先生の言われる、「抽象的な理解」の意味です。

これは、辞書に書かれている「重要ではなく、急ぎでもないこと」といった意味を理解しているということではありません。何か行動しようと思ったときに、不要不急かどうかを適切に判断できるということです。外出の自粛要請を実践するには、各自が日常の中で行動をしようとしたときに自粛すべきかどうかを考え、外出するかどうかを判断する必要があります。ただし、その判断はあくまでも主観的なものだということを覚えておいてください。これについては後で触れます。

特に、コロナ問題のように速いスピードでどんどん状況が変わっていくと、今日の不要不急と明日の不要不急は違うかも知れません。例えば、理容を考えてみてください。感染が蔓延していないときにはお客様にも会うし身ぎれいにしておくのは不要不急ではないかもしれません。しかし、蔓延してきてしばらく面談の機会がないとすれば理容院に行くのは不要不急だと言えるでしょう。

これをいちいち具体的に示すことはできませんし、仮に示されたとすれば非常に煩わしいというのは理解できるところです。


◆抽象化レベルの取り方がポイント

ただ、不要不急では絞り込めないという人もいます。これはあまりにも漠然としているためです。そこで外出自粛を要請するにあたって政府は不要不急に「生活にとって」という言葉を付け足しています。モノや行動のレベルで具体的にしているわけではありませんが、具体的な判断をするために有力基準になると思われます。

このように抽象的な表現をするに当たって、制限をすることによって抽象度を下げ、かつ特定のモノや行動を意味するものではない状況を作ることが抽象と具象を行き来する一つのポイントになります。

さらにこの後、もう少し具体化して、大規模イベントとか、深夜のバーとか、カラオケハウスといったカテゴリーを示しています。もちろん、それ以外ならどこにいってもよいという意味ではなく、それ以外は自分で不要不急化かどうかを判断してくださいということです。

では不要不急を判断するとはどういうことなのでしょうか?

上の理髪の例を考えてみましょう。東京都に住んでいる人が明日はオンラインミーティングで大切な顧客と会議をするので理髪に行こうと考えました。そこで、理髪を自粛すべきかどうかを考える必要が出てきました。行こうと考えている店がどのような店かと考えてみると、3蜜は大丈夫そうですし、今行く必要性はあります。そこで行くという判断をしました。これでも自粛をしていることになります。

このように不要不急かどうかの判断をするには、具体として行く具体的な店まで考えないと判断できないこともあります。この抽象度を適切に取ることが抽象と具体の行き来のポイントです。


◆具体だけではイノベーションは起こせない

コロナの話は一旦終えて、もう少し、この問題を掘り下げていきたいと思います。議論したいのは、なぜ、具体的であることを求めるのかです。これは、なぜ行き来をすべきかということでもあります。

それは正解があると思っているからです。不要不急の判断の例を思い出してください。判断は主観だと述べましたが、具体的なレベルで正解がないので主観でしか決めようがないのです。

この理由は日本の戦後の成長にあるように思えます。日本は戦後先進国の模倣で高度成長を遂げました。その中で、ウォークマンに代表されるように新しいものを生み出した人たちもいましたが、多くはキャッチアップという規範を残したままでトップになりました。

キャッチアップとイノベーションの違いは正解があるかどうかです。キャッチアップの気質はまだまだ残っており、イノベーションだと言いながらすでにあるものを改善するというところを抜け出せずに、いつの間にかやっていること自体が古くなってきました。IT分野が遅れているのはその典型でしょう。

しかし、現実の世界には正解はありません。最終的に何がいいかは主観で決める必要がありますが、これをうまくやろうとすると、何か背景になるものが必要なのです。それが抽象(的な概念)です。


◆正解がない世界の問題解決は抽象と具象の行き来で行う

必ず正解はあるという発想を持っているかどうかで、具体を重視するか、抽象を重視するかは変わってきます。例えば、理容にいこうかどうしようかと迷ったときに、

理容に行くのはなぜ → 身ぎれいにするため
身ぎれいにするのはなぜ → 相手に気にいってもらうため

という風に自分の行動を抽象化し、抽象化されたレベルで不要不急かどうかの判断をする。今回の相手は馴染みなので、事情を話せばわかると感じれば相手に気に行ってもらうことは不要不急とは言えない。そこで、身ぎれいにすること以外で相手に気にいってもらう方法はないかと考える。そこで、いつもよりしっかりとプレゼンを準備しようと考える。

これが抽象と具象の行き来です・

今、世の中はVUCAな世界になってきています。正解は見つからないのではなく、正解はないのが当たり前の世界です。このような状況に対処していくには、抽象と具象の行き来をしながら、本質的な問題をみつけ、解決していくことが不可欠です。


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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「プロジェクト&イノベーション(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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