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第30回 コンセプトを中心にステークホルダーをマネジメント(2019.01.08)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人


☆これまでの記事

第28回 コンセプチュアルなステークホルダーマネジメント

第29回 ステークホルダーを特定する

(第29回から続く)

◆ステークホルダーをマネジメントする

そこで重要になるマネジメントが、「良心的兵役忌避者」を「完全参加」に変えていくことです。これがプロジェクト成功のカギになるといってもよいでしょう。もう少し、一般的に整理しておきますと、それぞれ、以下のようなマネジメントが必要になります。

完全参加:コミットメントを維持してもらうステークホルダーマネジメントが必要。

良心的兵役忌避者:今後、1象限「完全参加」に移るようにプロジェクト実行中でのステークホルダーマネジメントが必要。

熱狂的支持者:コミットメントを維持するためのステークホルダーマネジメント必要。コミットメントが低くなると周囲に悪影響を及ぼす場合がある。

チアガール:重要性は低いため特に問題はないが、この象限に影響力の大きいステークホルダーが存在する場合は、その影響力を発揮してもらうためにも、4象限「熱狂的支持者」に移動するようなマネジメントを行い、影響力を発揮してもらう。

もう一つ、コンセプトを決める、あるいは展開する時点で配慮する必要があるのは、コミットメントの高いステークホルダーの取り扱いです。
リソース(金や人)についてはどのようなプロジェクトのアプローチをとっても支援の重要性が高くなりますが、技術や手法については選択したものによって、あるステークホルダーが「完全参加」になるか、「熱狂的支持者」になるのかが変わってくることがあります。

そのような場合には、コミットメントの高いステークホルダーが「完全参加」になるような選択をすることがプロジェクトの成功への近道です。


[ストーリー3]

出来上がったステークホルダー影響グリッドを見ていたリーダーの藤田は、
「問題は、どうやって、管理部門の田中部長を「完全参加」に変えていくかってことか。」
とつぶやいた。

営業担当の芦田も
「そうなんですよね、田中部長はなかなか人のいうことを素直に聞いてくれるタイプじゃないから。」
と追い打ちをかけた。

ITコンサルタントの徳田は涼しい顔で、
「まずは、田中部長がどういう人か知ることですね」
と言い、
「たとえば、このプロジェクトが終わったあとで、どのような役割、責任の仕事になるのでしょう」
と聞いた。

藤田は少し考えて言った。

「まだ、明確に決まっているわけじゃないですが、売上げそのものに責任はもちろんあるんですが、むしろ、システムを通じて顧客のニーズを集め、取りまとめるようなところに責任を置きたいと思っています。」

「なるほど、彼はそれをキャリア的にどう受け止めるのでしょう。」

「そうですね、本人に聞いた方がいいかもしれませんが、これまで主に新しいバックを作るときのコンセプトデザインの仕事をしていましたので、次のステップとして顧客の声を反映した商品コンセプトの開発業務を手のうちに入れるのはキャリア的に喜ぶんじゃないかと思いますし、会社としてもアリなんじゃないかと思います。」

と藤田。

「実務は彼の部下の誰かがやるということになると思いますが、そちらの面ではどうですか。」

と徳田。

「普通に進めれば、田中部長の下で仕事をしている松本君が担当になると思いますが、彼も田中部長と同じようなキャリアなので、よいと思いますね。」

「話が戻りますが、一応、売上げ責任は小杉さんじゃなくて、田中部長にいくんでしょうか。」

「はい、そうなると思います。」

「逆に、田中部長はそれをどう感じるのでしょうか。今までデザインで売上げ責任は小杉さんだったんですよね。」

「2人は結構、同士的で、田中部長も売上げの責任は十分に負っていたように思いますので、役割としてはっきりして、頑張るんじゃないでしょうか。」

と徳田と藤田はやりとりをした。藤田は

「結局、何をもとに評価をされるとかという問題だと思いますが、もともと社長が売上げだけで評価するような人ではないので、そこは大丈夫だと思います。」

とまとめた。

「分かりました。田中部長については、だいたい、どういう立場か、どういう人かの理解はできました。あとは、思いついたときにして、田中部長にどのように接するかを考えてみましょうか。」

と徳田。
「どういう視点で考えましょう、例えば、何をすれば喜ぶかといった感じですか。」
と藤田。

「そうですね、これも私たちのやり方ですが、
・気持ちの高揚や意欲を喚起するもの
・仕事そのものに役立つもの
・立場に関するもの
・人間関係に関するもの
・個人的なもの
の5つに分けて考えてみるというのはどうでしょう。」

徳田の説明を受けて、
「まず、分かりやすいのは「仕事そのもに役立つもの」ですね。」

と言い、藤田は続けた。

「これまでわが社は、ITの専門家はいなかったので、この際、そのような人材を雇い、田中部長のもとにつけてはどうでしょう。顧客のニーズをまとめてもらうためには、そのような人材がいた方が便利だと思いますし、田中部長ならそのような人材を使って、他のこともいろいろと知恵を働かせてくれそうですしね。」

芦田が続いた。

「それはいいかもしれませんね。田中部長、ITを自社でやらなくてはだめだとよく言われていますし。」

藤田はしばらく考え込んでいたが、発言した。

「そうだとすれば、田中部長にも、このプロジェクトに入ってもらった方がいいですね。年配なので、私はやりにくくなりそうですが、そこは何とかしますので。」

「それはいい。このプロジェクト、社長の直なので、いわゆる「立場に関する」価値を与えられると思いますよ。」

と徳田。またまた、考えこんだ藤田。徳田が
「何か気になることでも」
と声をかけると、

「いえ、気になることではなく、このプロジェクトチームの運営というか、選定なのですが、ITのスキルが身につくような形でもっていけるといいかなと。もちろん、プログラムを作ってもらうとかいうのでなくてもいいんですが、ITに鼻が利いて、田中部長のリーダーシップのもと、わが社のITによる事業展開を引っ張っていってくれるような存在になるといいなと思うのです」

「それ、いいですね。私、頑張りたいと思いますし、チームとしての共通の目標ができるというのもありがたいですね。」
と芦田。

「それはいいですね。コンセプトの展開にも大いに役立つでしょうし。」

と徳田がくくった。


[ストーリー3 終わり]

「良心的兵役忌避者」を「完全参加」に変えていくには、どうすればよいのでしょうか?

まず、最初のポイントはコンセプトに共感してもらうことにあります。というと、万人受けするコンセプトを作ることが肝要に思われるかもしれませんが、実はそうではありません。もちろん、そのようなコンセプトが見つかればそれに越したことはないのですが、それは極めて難しいと思われます。

そこで考えたいのが、個々のステークホルダーとの間に、コンセプトに共感・協力してもらえるような関係づくりをすることです。つまり、それぞれのステークホルダーとの間に価値交換を行うわけです。

そのためには、まず、

・担当業務の性質
・キャリア
・何をもとに評価されているか、報酬を受けているか
・組織文化・風土

などの相手の世界を理解する必要があります。

相手の世界を把握した上で、交換できる価値を探します。たとえば、気持ちの高揚や意欲を喚起するものは、交換できる価値のカテゴリーになり、その具体的な例としては、ビジョン、卓越性、道徳的/倫理的な正しさなどを上げることができます。

このようなカテゴリーの例としては、「仕事そのものに役立つもの」、「立場に関するもの」、「人間関係に関するもの」などがあるといわれています。
下表にそれぞれのカテゴリーの具体的な例を挙げています。

●組織の中で活用できる交換価値の例
┌──────────┬────────────────────────┐
│価値のカテゴリ   │価値の種類                   │
├──────────┼────────────────────────┤
│気持ちの高揚や意欲 │ビジョン、卓越性、道徳的/倫理的な正しさ    │
│を喚起するもの   │                        │
├──────────┼────────────────────────┤
│仕事そのものに   │新しいリソース、チャレンジ(成長)の手伝い、  │
│役立つもの     │組織的な支援、素早い対応、情報         │
├──────────┼────────────────────────┤
│立場に関するもの  │承認、ビジビリティ、評判、所属意識/重要性、接点│
├──────────┼────────────────────────┤
│人間関係に関するもの│理解、受容/一体感、私的な支援         │
├──────────┼────────────────────────┤
│個人的なもの    │感謝、当事者意識/参画意識、自己意識、安楽さ  │
└──────────┼────────────────────────┘

●参考文献
アラン・コーエン、デビッド・ブラッドフォード(高嶋薫、高嶋成豪訳)
 「影響力の法則─現代組織を生き抜くバイブル」、税務経理協会(2007)

◆終わりに

第28回〜第30回はステークホルダーのマネジメントについて解説しました。次号からは、プロジェクトでトラブルが起こったときに、コンセプチュアルな問題解決をいかに行うかについて考えてみたいと思います。

(続く)


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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「プロジェクト&イノベーション(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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