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コンセプチュアルなプロジェクトマネジメントでは、ベースライン計画を実行するために必要なマネジメントを考え、その計画を作ることにより、コンセプトに忠実にプロジェクトを実行していく

第27回 マネジメントを行うための計画を作成する(2018.11.18)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人


☆これまでの記事

第25回 コンセプトに整合する計画を策定する

第26回 プロジェクトチームの責任を明確にする

(第26回から続く)

<ストーリー3>

OBSとRAMを完成したリーダーの藤田は「では、このあとベースライン計画の実行計画を作るわけですね。先ほど徳田さんはマネジメント計画だといわれていましたが、どんなものですか。」

と訊ねた。コンサルティングの徳田は

「マネジメント計画のイメージは、ベースラインを詳細化しながらベースライン通りにプロジェクトを進めていくために、マネジメントとしてすべきことです。代表的なのはコミュニケーションの計画やリスクの計画ですね。これ以外には、ステークホルダーマネジメント計画などですね。逆に藤田さんがこんなことをすべきだという考えはありませんか。」

と質問した。これに対して藤田は

「そうですね、ベースラインを実行するのは人なので、要員をどのようにマネジメントするかは大切だと思います。」

と答えた。

「そうですね、要員のマネジメントはベースライン実行のポイントになりますね。他にはどうでしょう。」

と徳田。営業の芦田が発言した。

「ベースライン計画って変わらないのですか。スケジュールが遅れることもあると思いますが、そんな場合にはどうするのでしょう。」

「芦田さん、いいところに気づきましたね。ベースラインを変えざるを得ない場合がありますので、そのときのためにどんな準備をしておけばよいでしょう。」

と徳田。

「組織の承認を得た計画を変えるわけですので、手続きを明確にしておく必要がありそうですね。」

と芦田。

「その通りです。変更をどのような手続きで行うかを明確にする計画が必要なんです。変更マネジメント計画といいます。」

と徳田が説明し、議論は一段落した。この様子をみて、藤田は

「では、今日はマネジメント計画を作るのは時間的に厳しいので、次回までに私がたたき台を作ってくるということでどうでしょう。」

と締めくくった。

数日後に、前回と同じメンバーが集まり、藤田の作ったマネジメント計画のたたき台を元にマネジメント計画の策定をした。今回のマネジメントのポイントになるのはコミュニケーションと変更管理の計画だと考えたということだった。

「まず、コミュニケーションの計画ですが、仕様の変動が予想されますので、できるだけ全体で顧客の声を頻繁に拾い、プロジェクトで共有するようなマネジメントを行いたいと考えて計画しました。それで、主に

1.顧客⇔メンバー 目標の妥当性の検証を頻繁に行うコミュニケーション
2.チームメンバー同士 顧客の声の共有のコミュニケーション
3.チームメンバー同士 現在の仕様の共有のためのコミュニケーション
4.社長、前田営業マネジャーとのプロジェクト状況のコミュニケーション

を重視し、計画を作りましたが、いかがでしょうか?」

芦田がうなずいた。そこで、続けた。

「それから変更管理ですが、基本的な変更はユーザからの意見や要望があったときに限定し、下記のようなマネジメントをしたいと考えています。この具体的なプロセスは、すでにコミュニケーション計画にも反映されています。」

1.変更の要望:  顧客・ユーザ→プロジェクト
2.変更の影響算定:顧客・ユーザ←プロジェクト
3.変更の判断:  顧客・ユーザ⇔プロジェクト
4.変更決定:
5.文書変更、ステークホルダーへの周知:プロジェクトが行う

これを見た芦田は
「要するにコミュニケーションを主にプロジェクトをマネジメントしようということですか。」

と確認した。

「そうです。」

と藤田。

「そのためには、よく考えたコミュニケーションをとる必要があります。」

「他のマネジメント計画でコミュニケーション計画と絡んでいるものはありますか。」

と高木が聞いた。

「人の配置のマネジメントでもコミュニケーションを重視していますし、ステークホルダーマネジメント計画でも最終行動はコミュニケーションの計画に落としています。」

<ストーリー3 終わり>

さてその上で、ベースラインをどのように実現するかというアプローチを決めます。アプローチはマネジメントの計画として設定します。ベースライン達成のアプローチですので、これで正しいというものがあるわけではありませんが、例えば下記のようなものを計画します。

・変更管理計画
・コミュニケーションマネジメント計画
・リスクマネジメント計画
・調達マネジメント計画
・人的資源マネジメント計画
・ステークホルダーマネジメント計画

以下に簡単に説明します。

まず、コミュニケーションマネジメント計画です。この計画は主に

 ・ベースラインの共有のためのコミュニケーション
 ・リスクとリスクの状況の共有のためのコミュニケーション
 ・ステークホルダーを動かすためのコミュニケーション

の3つのコミュニケーションをどのよう方針で進めるかを明確にする計画です。プロジェクトマネジメントの計画の中ではもっとも重要な計画の一つです。

二番目はリスクマネジメント計画です。この計画は、ベースライン計画を実行する際に想定されるリスクとその対策を計画するものです。想定されるリスクによっては、リスクを回避するためにベースラインの変更を行う場合もあります。
また、リスクはコミュニケーション計画によって主要ステークホルダーに共有される必要があります。

次は、人的資源マネジメント計画です。この計画はベースラインの実行のために必要なチームを明確にし、チームを構成する人的資源の計画をするものです。人的資源についてはベースライン計画を作ることがありますが、ベースラインの範囲でチームと要員配置の計画をすることになります。

ステークホルダーマネジメント計画は、ベースラインを守るために鍵を握るステークホルダーの特定と、その対応計画を決める計画です。プロジェクトが複雑化するほど、ベースライン計画の実行のためのステークホルダーマネジメントの計画が重要になります。この計画とマネジメント実行については次回、詳しく説明したいと思います。

さらに、プロジェクトとしてベースラインを達成するために部品や労働力などの調達が必要な場合があります。その場合には、調達マネジメントの計画を作ることがあります。

さて、以上がベースライン計画の実行のためのアプローチとしてのマネジメントを行うための計画ですが、もう一つ重要な計画があります。それは、ベースラインの変更マネジメント計画です。ベースライン計画は策定した限り守りたいことはもちろんですが、どうしてもできない場合もあります。そのような場合には、本質目標や本質要求を維持するためにベースライン計画の変更が必要になります。その際のマネジメントするための計画です。

◆終わりに

第25回〜第27回は、コンセプチュアルなプロジェクトマネジメントにおける計画の作り方を説明しました。計画がコンセプチュアルであることは、プロジェクトガバナンスをきちんと整理して基本になるベースライン計画の範囲を適切に取り、ベースライン計画を実行するために必要なマネジメントを考え、その計画を作ることにより、コンセプトに忠実にプロジェクトを実行していくことであることがお分かりいただけたでしょうか?

次号からは、はコンセプトを中心にステークホルダーをマネジメントする方法を解説したいと思います。


(続く)


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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「プロジェクト&イノベーション(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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