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プロジェクトの目的は、なぜ、そのプロジェクトを行うかであり、そこから本質目標を設定する

第21回 プロジェクトの目的を決める(2018.08.05)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人


☆これまでの記事
第19回 プロジェクトの本質をとらえたプロジェクト課題(1)

第20回 プロジェクトの本質をとらえたプロジェクト課題(2)

(第20回から続く)

◆プロジェクトの目的

プロジェクトの目的は先に説明しましたように、なぜ、そのプロジェクトを行うかです。プロジェクト課題を解決することがどうして必要かと言い換えても構いません。これを考えるには、なぜ、解決コンセプトなのかがポイントになります。

「われわれの商品を使っている人から、使っていない方に商品の良さを伝える仕組みを提供する」理由は明確で、「使っていない人に商品の良さを共感してもらい、購入して実際につかって貰う」ことです。これがプロジェクトの目的になっています。

ここで仕組みを作ることを目的とするのか、仕組みを作った結果を目的とするのかに迷う人もいると思いますが、一般的には仕組みを作ることは目標であり、仕組みの結果を目的とした方が現実的な問題になり、うまく行く確率が高くなると思われます。

ただし、この問題は成果を生み出すにはどうしたらよいかという問題と深くかかわってきます。プロジェクトで上のようにトップダウンで進めて行く場合、成果を生み出すには考えるべきことが3つあります。

(1)戦略に整合している
(2)組織が協力する
(3)チームが動機づけされる

の条件を満たす目的の設定をすることです。

ここで問題になるには、戦略整合していることと、チームが動機づけされることがしばしば、矛盾することです。ストーリーの例では経営ビジョンからプロジェクトを立てていますので、上位組織の目的には適合していますが、チームの目的に適合しているのでしょうか。

ここにもう一つコンセプトの役割があります。つまり、課題解決コンセプト作成の最後のステップに共感獲得が含まれています。このステップを経たコンセプトから定義された目的はチームの目的にも適合しているといえます。


◆目標を決める

目的が決まれば、次はプロジェクトの目標を決める必要があります。一般的なプロジェクトマネジメントにおいては、WHAT(スコープ)が決まれば目標としては、どのレベルでQCDをクリアするかだけで十分だと考えられることが多いですが、コンセプチュアルなプロジェクトマネジメントでは何が達成できればプロジェクトが成功したと考えられるかが目標であることは同じですが、QCDだけでは不十分なケースが多くなります。極端な例を挙げると、最近イノベーションの分野で増えているWHATはプロジェクトを進めながら決めるというプロジェクトでは、QCDを目標にできません。

そこで、さまざまな目標を設定しますが、プロジェクトをうまく計画するには本質的な目標を見極める必要があります。たとえば、グレッグ・マキューンは「エッセンシャル思考」という本の中で、エッセンシャルゴールと呼ぶ本質目標を定義しています。

本質目標とは、挑戦的で具体的な目標です。例として、「小惑星「イトカワ」とランデブーを行い、表面でサンプルを回収して地球に持ち帰る」という目標を上げることができます。コンセプチュアルプロジェクトマネジメントでは、課題解決コンセプトと整合することを目標の本質性だと考えると適切な目標になります。

そもそも、目標をどのように見つけるかについては、3つの方法があります。

1.目的起点
  現状ではなく、上位組織の目的から考えた目標を設定する
2.将来起点
  将来に立ち、最適な目標を考える
3.顧客起点
  顧客の立場に立ち、抜本的な目標を設定する

本質的な目標を探すためには、この3つの視点については、目標設定の際には必ず考えてみるとよいでしょう。複数の視点から同じ目標が出てくれば、それが本質目標と考えて、まず間違いありません。

以上のように目的と目標を決め、プロジェクト憲章を作成し、プロジェクトを立ち上げるわけです。


◆終わりに

第19回〜第21回ではプロジェクト課題を決め、課題解決コンセプトを考え、コンセプトに併せたプロジェクト定義として、プロジェクト目的と本質目標を決定するところまでを説明しました。

ポイントはコンセプチュアルプロジェクトマネジメントでは、WHATから始まるケースだけではなく、WHYから始まるケースや、WHYとWHATを行き来するケースがあるということです。コンセプトをうまく使う、コンセプチュアルなプロジェクトマネジメントを実施するにはこの点をよく意識しておく必要があります。

次回から、課題解決コンセプトから落とし込むもう一つのプロジェクト要素である「プロジェクト要求」について説明したいと思います。


(続く)


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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「プロジェクト&イノベーション(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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