第20回 プロジェクトの本質をとらえたプロジェクト課題(2)(2018.07.17)
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第19回 プロジェクトの本質をとらえたプロジェクト課
(第19回から続く)
【解説】
◆コンセプチュアルなプロジェクトマネジメントのイメージ
まず、コンセプチュアルなプロジェクトマネジメントのイメージを説明しておきたいと思います。一般的に、プロジェクトマネジメントの視点を表したもので、プロジェクトは5W2Hの中の、WHATから始まり、WHATは成果物、あるいはプロジェクトの目標です。
WHAT:何をやるのか
WHY:何故やるのか
WHO:誰がやるのか
WHERE:どの範囲をやるのか
WHEN:何時やるのか
HOW:どんな方法であるのか
HOW MUCH:予算は
これに対してコンセプチュアルなプロジェクトマネジメントでは、WHYから始まります。
コンセプチュアルプロジェクトマネジメントの視点f
コンセプチュアルなプロジェクトマネジメントでは、プロジェクトを構造的/概念的に捉え、プロジェクトの本質を捉えて進めていきますので、そのために、WHATだけではなく、WHYが極めて重要になります。言い換えると、WHYとWHATを行き来しながらプロジェクトのマネジメントをする必要があります。
一般的に、プロジェクトマネジメントにおいては、
WHY:目的
WHAT:目標
となっています。プロジェクトの目的定義の仕方は何通りかありますが、目的はこのような位置付けの要素になっていることに注意をしておいてください。
◆プロジェクトガバナンス
ここでコンセプチュアルなプロジェクトマネジメントを行う際に、プロジェクトガバナンスをどのように考えるかについて説明しておきたいと思います。
プロジェクトガバナンスでは、まず、戦略やビジョンからプロジェクト課題を抽出し、さらに課題解決のコンセプトを作成します。
その上で、コンセプトに基づき、一つは目的と目標を決めます。もう一方で、目的を実現するためにプロジェクトとして生み出していく成果物の要求を決めます。
以下の説明では、このプロジェクトガバナンスを前提にして話を進めます。
◆プロジェクトの本質をプロジェクト課題にする
さて、コンセプチュアルプロジェクトマネジメントにおける目的を導出するためには、プロジェクトの本質が問題になってきます。そしてプロジェクトの本質がプロジェクト課題であり、課題解決コンセプトによってあらわされています。
第19回のストーリーで言えば、
「観光客以外の人にも使って貰うような仕組みを持つ帆布ファッション企業になる」
ことがプロジェクトの前提になっている経営ビジョンですので、プロジェクトで解決すべき課題はこのビジョンに対して何らか(最も)の貢献をすべき活動ということになります。たとえば、
・誰もがインターネット上で商品を見ることができ、また、購入することもできるシステムの構築
・誰もが商品を使って貰うような仕組みを提供する
・・・
といったことが考えられます。ここで考えたいことは、どういう課題がプロジェクトの本質なのかということです。
必ず行う必要があることを本質だと考えると、システム化することは本質ではありません。システム化をしなくても、SNSを活用して、顧客がこの商品を誰かに使ってほしいと思い、自発的に紹介するような状況を作るという方法もあるわけで、本質はシステムづくりはではなく、システム化も含めた仕組みづくりにあると考えました。
◆課題解決コンセプトを作る
ということで、プロジェクト課題を「誰もが商品を使って貰うような仕組みを提供する」としましたが、この課題に対する解決コンセプトはどのようなものがよいのでしょうか。
コンセプトは、「現状認識」、「価値創造」、「言語化」、「共感獲得」の4ステップで、コンセプチュアル思考を実行しながら作っていきます。
ストーリーのプロジェクトでは以下のように考えています。
まず、プロジェクト課題の本質を、第5回で述べたように、なぜを繰り返して本質を探していきます。
第5回 本質を見極める3つの方法
社長の考えは、「誰もがインターネット上で商品を見ることができ、また、購入することもできるシステムの構築」だったわけですが、ここからなぜそのようなシステムを作る必要があるかと考えていくと、すべきことは
「誰もが商品を使って貰う」ことであり、本質的な課題はすでに述べたように
「誰もが商品を使って貰うような仕組みを提供する」
ことだと考えました。
次に、この本質的なプロジェクト課題に対応する解決のアイデアを考えました。
まず、
「購入者はどのような方法で購入しているか」
「商品情報はどのように流通しているのか」
などの事実の認識をしました。
また、
「認識された事実から「誰もが商品を使って貰えるために提供すべきものは何か」
「誰もが商品を使って貰えるために考えられる仕組みは何か」
「仕組みの実現にどのような方法が可能か」
といったことを洞察しました。
これらの現状認識に基づき、
「われわれの商品を使っていただいている方から、使っていらっしゃらない方に商品の良さを伝える仕組みを提供する」
という新しいやり方を考えました(価値創造)。
そこで、コンセプトとして、図5のようなものを作りました。このコンセプトに基づき、まず、テーマに関する主要ステークホルダーを検討し、コンセプトの理解を図るとともに、協力を依頼しました。
さて、このようにしてプロジェクト課題の解決コンセプトを作っていきました。ここまでは大きな意味でプロジェクトマネジメントの範囲ですが、狭い意味でのプロジェクトマネジメントはここから始まります。つまり、このコンセプトからプロジェクトの目的と目標を決定し、プロジェクト憲章を作ります。
(続く)
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著者紹介
好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「コンセプチュアル・マネジメント(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。
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