第22回 プロジェク目的・目標とビジネス要求(2018.08.17)
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- 第22回 プロジェク目的・目標とビジネス要求
(第21回から続く)
◆本質要求を探す
<ストーリー2>
藤田は徳田のアドバイスがまだ、完全に腹落ちしていなかった。その状態で、要求を考えるために徳田に質問した。
「要求は目標に掲げた帆布製品の口コミSNSの仕様や、帆布製品のネット販売の仕組みの仕様ということになるのですか?」
「仕組みの仕様については開発時点で決めれば十分だと思います。ここでは目的と両輪になるようにもう少し概念的な要求の方がいいですね。課題解決コンセプトに戻ってみましょう」
と徳田。
「だとすれば、「我々の商品の利用者が、利用したことがない人に商品の良さを伝える仕組みを提供する」というコンセプトなので、
・商品の利用者にとってアクセスしやすい仕組みであること
・利用者が商品の特性をうまく表現できるような仕組みであること
・利用したことがない人が商品をイメージできるような表現ができる仕組みであること
といったところですね。」
と答える。徳田は微妙な表情をし、つぶやいた。
「確かにそうなんですが、結局、一言でいえばどういう仕組みが欲しいのでしょう」
藤田は困った。要求というのは必要なことを集めたものだと考えていたからだ。困った様子をみて、徳田は藤田にいった。
「では、その3つを概念化するとすればどうなりますか」
ますます困る藤田。見かねて徳田はさらにアドバイスをする。
「では、3つの中で残さなくてはならない部分と、捨ててもよい部分に分けてみましょうか?私はもっとも一般性があるのは、利用したことがない人が商品をイメージできることではないではないかと思います。この要求が満たされれば、商品の利用者にとってアクセスしやすく、また、商品特性をうまく表現できるのではないかと思いますが、いかがですか」
「なるほど、そういうことですか。分かりました。では、「利用したことがない人が商品をイメージできる」にはどうすればよいかを考えればよいわけですね。」
<ストーリー2終了>
一般的に要求には本質的な要求とそうではないものがあります。コンセプチュアルなプロジェクトマネジメントで探さなくてはならないのはいうまでもなく本質的な要求(本質要求)です。本質要求と一般的な要求の違いは、多くの場合、顕在性にあります。要求と本質要求、要件の違いは以下かのとおりです。
◎要求のピラミッド
本質要求:顧客が潜在的に望んでいる要求(充足されていないことに気づいていない)
要求:顧客が望んでいると明言している要求(充足されていないことに気づいている)
要件:具体的にほしいモノ・サービス
これから分かりますように、本質要求は顧客が潜在的に望んでいる要求で、充足されていないことに気づいていないものです。これに対して、要求は顧客が望んでいると明言している要求、つまり、充足されていないことに気づいているものです。
ストーリー2で、たとえば商品の利用者にとって「使いやすい」仕組みであることを欲求があったとします。使いやすいというと何を言っているか分からず、その意味でこれは抽象的で潜在的ですので、要求とはいえませんが、これを分析すると「商品の利用者にとってアクセスしやすい仕組み」という本質的な要求につながっているわけです。
では、本質要求をどのように探していくかを考えてみます。本質要求は潜在的な要求だということを意識した上で、次のステップで本質要求を考えていきます。
◎本質要求を見つけるステップ
ステップ1:できるだけ多くの要求を集める
ステップ2:要求を概念化し、本質を見極める
ステップ3:概念化された要求を具体化する
ステップ4:本質要求を決める
まず最初は、「要求の収集」です。先に述べたとおり、要求には本質的なものも本質的でないものもありますが、とにかく「顧客の声」をできるだけ集めることから始めます。この際、欲求や欲望であると思われるものは、その中から要求を抽出することを忘れてはいけません。上の例では3つに絞っていますが、この3つも含めてさまざまな要求を集めてきます。
要求を集めたら、次に「要求を概念化し、要求の本質を見極め」ます。概念化の方法としては、
(1)一般化
(2)単純化
(3)構造化
といった方法があります。
一般化は、ひとつひとつの具体例に対して、その上位概念として包括する一般的な言葉に置き換えることです。単純化は、複雑な事象の中から当該目的に合致した部分のみの特徴をとり出し、枝葉を切り捨てる方法です。さらに、構造化は個別の具体的事象間の関係や構造を明らかにする方法です。
要求の本質を見極める際には、3つのどの方法を使ってもできますが、単純化がもっとも適していると思われます。ストーリーで3つの要求から「利用したことがない人が商品をイメージできる」ことを本質だと考えたのはそういうことです。
さらに、「概念化された要求を具体化」します。これは本質要求は具体的な要求であるためです。概念化された要求のうち、本質だと思われるものをできるだけ多くの要求に具体化します。さらに、具体化においては潜在ニーズを織り込むとよりよい本質要求にたどりつくことができるでしょう。ストーリー2では、「利用したことがない人が商品をイメージできる」ことだとしました。
このようにして出てきた具体的な概念化された要求の中から、本質要求を決めます。
以上が本質要求を決める手順ですが、本質要求を決めたら、それを行動や事象に具体化し、プロジェクトの要件化していきます。これは具体的にほしいモノ・サービスであり、プロジェクトスコープです。要求の具体化というは、あくまでも要求としての具体化であり、実現したいことを具体的に示すものだということに注意してください。
ここでもう一つ注意しておきたいことがあります。それは、顧客の声と本質要求の関係です。
(続く)
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著者紹介
好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「コンセプチュアル・マネジメント(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。
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