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第93回 ゲームストーミングとは(2017/02/17)

プロジェクトマネジメントオフィス 鈴木 道代

◆書籍紹介
創造を目指すリーダーは、手元においておけば、いろいろと役立ちそうな一冊。もちろん、研修講師、ファシリテータは必携。

ゲームストーミング
(著:デイブ・グレイ他、出版:オライリー・ジャパン、監訳:野村恭彦、2011)

◆ゲームストーミングとは

ゲームのアルゴリズムと視覚的効果および効用を利用してグループワークを促進させる手法・技術・行為の総称

である。

ゲームという言葉に違和感を感じる人もいると思うが、使い方はブレーンストーミング、ファシリテーションなどとまったく変わらず、会議、セミナー、ワークショップで、参加者のコラボレーションに使われる。

この本は、まず、ゲームという「概念」を説明している。読めばなんでもないことなのだが、ゲームには、

・ゲーム空間
・境界(時間的な境界と空間的な境界)
・ルール
・道具
・ゴール

の要素があり、ゲームの世界は

1.想像
2.構築
3.開幕
4.探索
5.閉幕

という展開がされると説明される。

次に、ゲームストーミングは、従来のビジネスプロセスに変わるものだと説明する。つまり、従来のビジネスプロセスは、原因と結果の確実な連鎖を作り出すのに対して、ゲームストーミングは、連鎖ではなく、探索、実験、試行錯誤の枠組みを作り出すものだ。ゲームストーミングでは、ゴールは曖昧であり、しかも、変わってしまうこともある。

創造的な仕事とはそういうもので、ゴールを前もって正確に定めることができたいため、プロジェクトは直感と仮定と推量に基づき進められる。つまり、創造的なプロジェクトを行うためには、ゲームストーミングは不可欠なアプローチである。ゲームストーミングの本質はこのゴールの追いかけ方にあり、曖昧なゴールには、

・情熱的
・感覚的
・漸進的

であることが求められる。

さて、ゲームストーミングには、10のポイントがある。それは

(1)開幕と閉幕
(2)発火:探求を始めるように仕向ける
(3)道具:思考を助ける道具。意味を運ぶ
(4)結節点作り:探求のためのゲームの駒(ノード)を作る
(5)意味空間:地図のマス目のような確実で秩序のある意味空間
(6)スケッチとモデル作り:形式ばらず、自由な説明
(7)無作為性、逆転、再構成:順序通りに行かない
(8)即興:進めながら作る
(9)選択:すべてを実行できないときに、アイデアや選択肢をより分ける
(10)新しいことに挑戦する

の10個である。

このようなポイントを押さえながら、ゲームストーミングを実行していくのは、スキルが必要である。そのスキルには

・問いかけ
 最初の火付け役となる発火のテクニック
・道具と意味空間
 大半のゲームの主要素となるボードと駒
・視覚言語
 想像力とアイデアをより具体的な共有可能な形にする能力
・即興
 頭だけではなく心も身体も含め自分のすべてを使って探索する能力

などがある。

以上のような説明のあとに、ゲームが説明されている。ゲームは

(1)主要なゲーム(10種類)
(2)開幕のためのゲーム(26種類)
(3)探索のためのゲーム(41種類)
(4)閉幕のためのゲーム(11種類)

の88種類である。

ゲームとはどのようなものか。ワークショップ系の研修講師やコンサルタント、アクティビティ好きなリーダーであれば、名前だけなら半分くらいは知っているのではないと思われるものが並ぶ。

たとえば、主要ゲームのカテゴリーであれば、会議準備のフレームに7P(Purpose,Product,People,Process,Pitfall,Prep,Practical Concerns)というのがあるのをご存じの方は多いと思うが、これが1つになっている。開幕だと「ステークホルダ分析」というゲームはあったりする。あるいは、探索のゲームのひとつには、ワールドカフェが入っている。

そして、最後に著者による実事例の紹介がある。

また、邦訳オリジナルとして、監訳者の野村恭彦さんによる、「フューチャーセンターでのゲームストーミングの活用事例」が紹介されている。フューチャーセンターは、企業、政府、自治体などの組織が中長期的な課題の解決を目指し、様々な関係者を幅広く集め、対話を通じて新たなアイデアや問題の解決手段を見つけ出し、相互協力の下で実践するために設けられる施設で、野村さんは、日本でフィーチャーセンターを普及させる活動も行われている。事例を読んでいるだけで、効果的であることが分かる。

ゲームストーミングが訴える、ビジネスプロセスからゲームストーミングへというコンセプトは非常にインパクトがある。ゲームストーミングにも全くプロセスがないわけではなく、想像、構築、開幕、探索、閉幕という流れはある。この流れに従って、ゲームを使いながら意思決定をしていく。この発想は、アジャイルプロジェクトマネジメントの発想に近い。フェーズの役割を決め、その役割を果たすためのプラクティスを実行していく。プラクティスの実行順序はない。必要に応じてだ。

ゲームストーミングでは、プラクティスがゲームになっている。そのように眺めてみると、ゲームストーミングの有用性は明確である。APMより優れているのは、ゲームの設計をできるような枠組みが準備されている点である。これは極めて興味深い。

それから、本質的な違いだと思われるのは、「ゲーム」というコンセプトが仕事の与えるインパクトである。これは「態度」を決める上で見逃せない。「プラクティス」では引き出せないものが引き出せる可能性があり、興味深い。

その意味で、創造を目指す不確実なプロジェクトを実行する際のプラクティスの中に紹介されているゲームを取り入れることも可能だし、極論すれば、ビジネスプロセスで回していく際の、各プロセスの意思決定の中に、ゲームストーミングを取り入れることもできる。要するに、ブレストやファシリテーションなどと同じ使い方ができるわけだ。

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著者紹介

鈴木道代、PMP、PMS
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス、PMstyleプランナー
神戸大学工学部卒業後、アパレル企業の情報システム部に所属し、データベース管理者、システムエンジニア、リーダーとして社内システムの開発・マネジメントに携わる。
その後、独立し、小規模のシステム開発プロジェクトを受託し、プロジェクトマネジメントや開発マネジメントを担当する。
2004年、PMPを取得し、株式会社プロジェクトマネジメントオフィスにて、プロジェクトマネジメントのコンサルティング、研修講師、セミナー講師を担当する。2010年、PMS取得。

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