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第86回 WinWinコミュニケーションシート(1)〜対立解消の交渉手法(2016/05/31)

プロジェクトマネジメントオフィス 鈴木 道代

◆対立解消の交渉手法

顧客を含めたステークホルダーとのコミュニケーション、特に何かを交渉する場合、例えば、何か問題が発生し、それらについての解決方法について話し合いをしている場において、意見が一致しない場合には、合意を得るために、自分にとってのより良い解決策を実行するために、交渉をすることになります。

相手側と信頼関係はあるのかないのか、相手側との関係は弱いのか強いのか、自分のコミュニケーションスタイルがじわじわ固めて論理的に進めるタイプか、一気にたたみかけるタイプか、などいろいろな条件で、話の進め方を変えているのではないでしょうか。

状況に応じて、相手によって異なるのは当たり前なのですが、ここでは、ちょっと一般的に考えてみましょう。

例えば、交渉の結果や、交渉の結果で決まった行動を行った結果として得る成果について、相手と自分のどちらを優先するのかと、考えてみましょう。
どちらを優先すべきは、上記のいろいろな条件によって変わりますが、一般的に交渉の手法としては、次の5パターンがあります。

─────┬─────┬──┬────────────────────
相手の成果│自分の成果│  │
 を考える│ を考える│手法│説明
─────┼─────┼──┼────────────────────
  低  │  低  │回避│当事者として何もしない、言わない
─────┼─────┼──┼────────────────────
  高  │  低  │恩恵│相手の要求を恩恵的に受け入れる
─────┼─────┼──┼────────────────────
  低  │  高  │支配│自分の要求を強力に言及する
─────┼─────┼──┼────────────────────
  中  │  中  │妥協│自分の成果を得ることに適度に努力し、
     │     │  │相手が成果を得ることにも適度に努力する
─────┼─────┼──┼────────────────────
  高  │  高  │統合│自分だけではなく、相手も高い成果を得る
     │     │  │ように努力する
─────┴─────┴──┴────────────────────

また、上記の手法は、相手との関係において、常にその手法が適しているわけではありません。もちろん、必ず、適しているわけでもありません。
その他の条件で、適している場合、適していない場合があります。

──┬───────────────┬───────────────
手法│適している場合        │適していない場合
──┼───────────────┼───────────────
回避│・些細な問題の場合      │・案件が自分にとって重要な場合
  │・冷却期間が必要な場合    │・急いで決定する必要がある場合
──┼───────────────┼───────────────
恩恵│・自分が間違っていそうな場合 │・相手が非論理的、間違っている場合
  │・見返りが期待できる場合   │・案件が自分にとって重要な場合
──┼───────────────┼───────────────
支配│・相手が力不足の場合     │・複雑な案件の場合
  │・案件が自分にとって重要な場合│・相手が高い能力を持つ場合
──┼───────────────┼───────────────
妥協│・互いの合意が得られない場合 │・どちらかが強力な場合
  │・両者が目的を共有できない場合│・複雑な問題で根本的解決が必要な場合
──┼───────────────┼───────────────
統合│・案件が複雑な場合      │・単純な問題や即断が必要な場合
  │・実行に相手の確約(コミットメ│・相手が結果に無関心な場合
  │ ント)が必要な場合     │
──┴───────────────┴───────────────

通常、交渉というと、親会社との交渉の場合は「恩恵」、子会社の場合は「支配」、以外は「譲歩」、とりあえず様子見の場合は「回避」の手法を使われているのではないでしょうか。

もちろん、一概には言えませんが、ステークホルダーとの交渉の場合は、信頼関係構築のためにも、「統合」での交渉をまず、考えてみましょう。
自分も高い成果を得ることができ、相手も高い成果を得ることができますので、協力して解決策を決めることができ、そして協力して実行することができ、いいことづくめです。

ですが、統合の手法にて交渉を進めることはなかなか難しいのではないでしょうか?

「統合」にて、ステークホルダーと交渉する場合には、WinWinコミュニケーションが欠かせません。次回に取り上げます。


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著者紹介

鈴木道代、PMP、PMS
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス、PMstyleプランナー
神戸大学工学部卒業後、アパレル企業の情報システム部に所属し、データベース管理者、システムエンジニア、リーダーとして社内システムの開発・マネジメントに携わる。
その後、独立し、小規模のシステム開発プロジェクトを受託し、プロジェクトマネジメントや開発マネジメントを担当する。
2004年、PMPを取得し、株式会社プロジェクトマネジメントオフィスにて、プロジェクトマネジメントのコンサルティング、研修講師、セミナー講師を担当する。2010年、PMS取得。

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