◆クラッシングとファスト・トラッキングのスケジュール短縮技法
今回は、タイム知識エリアのプロセスである「スケジュール作成」「スケジュール・コントロール」のツールと技法の「スケジュール短縮」を取り上げます。
PMBOK(R)ガイド第4版では、スケジュール短縮の技法として、「クラッシング」と「ファスト・トラッキング」を挙げています。筆者がPMPに合格した第2版の頃から変わりはありません。
が、その頃は、クラッシングは最少の努力で最大のパフォーマンスをあげる手法、ファスト・トラッキングは後続アクティビティを先行アクティビティと並行して実行することでスケジュールを短縮する方法との理解でした。
「なんですか?それは?」と思いながら、言葉を(丸)暗記し、PMP受験でも、そのような問題が出たように記憶しています。
第4版では、もう少し解説があり、以下の説明です。
クラッシングは、コストとスケジュールのトレードオフを分析し、最少の追加コストで最大の期間短縮を得る方法であり、資源を追加することで期間を短縮することができるクリティカルパス上のアクティビティにのみ有効です。リスクやコストが増大する可能性もあり、必ずしも、よい結果を生むとは限りません。
ファスト・トラッキングは、通常は順を追って実行するフェーズやアクティビティを並行して行うことで期間短縮を行う技法です。手直しやリスク増大を招く場合があり、並行することで期間短縮が望める場合にのみ有効です。
さて、ドラガン・ミロセビッチ著「プロジェクトマネジメント・ツールボックス」
の中ではクラッシングについて、詳しく説明していますので、「スケジュール・クラッシング」について、ご紹介します。
アクティビティ間の依存関係を変更しないで、全体のプロジェクト期間を短縮する手法であり、「スケジュール・クラッシング」と呼んでいます。
クリティカルパス上のアクティビティの中で、「コスト/クラッシュした時間」の勾配が最も小さいアクティビティを優先してクラッシュします。
クラッシュとは、コスト(要員を投入)し、そのことで期間を短縮することです。
そして、スケジュール・クラッシングには次の原則があります。
・クリティカル・パス上のアクティビティのみクラッシュする
・1回に1日をクラッシュする
・複数のクリティカル・パスがある場合、それらをすべて同時にクラッシュする・最も安価にクラッシュできるクリティカル・アクティビティをクラッシュする・非クリティカル・アクティビティはクラッシュしない
例えば、A〜Fのアクティビティ間に次の依存関係があるとします。
A → B → E → F
→ C →→→→→
⇒ D ⇒⇒⇒⇒⇒
そして、クラッシュが次の期間、次のコストでできるとします。
クリティカルパスは「A」→「D」→「F」ですので、その中で、最もコストパフォーマンスが良い(最も勾配の小さい)「D」を1日クラッシュすると、期間が6日、コスト210万となります。
※ーーーー※ Yさんよりご質問があり、説明を追記します。
なぜ、2日クラッシュしないのか、という疑問が生じるかもしれませんが、原則として、1回のクラッシングは1日のみ行います。そして、再度、クリティカルパスを確認し、その中の最も効率のよいアクティビティを選び、クラッシュするということを繰り返します。
※ーーーー※
そしてクリティカルパスが、
「A」→「D」→「F」
「A」→「B」→「E」→「F」
の複数パスになり、両方のクリティカルパスが短縮できる「A」をクラッシュし、期間5日、コスト230万となります。
このように、「コスト/クラッシュした時間」の勾配が最も小さいアクティビティを優先して、1日間のクラッシュを繰り返していくスケジュール短縮技法がスケジュール・クラッシングです。
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鈴木道代、PMP、PMS
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス、PMstyleプランナー
神戸大学工学部卒業後、アパレル企業の情報システム部に所属し、データベース管理者、システムエンジニア、リーダーとして社内システムの開発・マネジメントに携わる。
その後、独立し、小規模のシステム開発プロジェクトを受託し、プロジェクトマネジメントや開発マネジメントを担当する。
2004年、PMPを取得し、株式会社プロジェクトマネジメントオフィスにて、プロジェクトマネジメントのコンサルティング、研修講師、セミナー講師を担当する。2010年、PMS取得。
本連載は、PM養成マガジン購読にて、最新記事を読むことができます。