◆思考の補助線(1)マンションの駐車場
算数、数学の平面図形の問題において、補助線を引くことによって簡単に解けるようになる場合があります。補助線を引けば、四角形が三角形になるなど、今までと異なる図形になり、見方が変わり、新しい解き方ができるようになるのです。
「思考の補助線」の著者である茂木健一郎氏は、思考にも補助線を引くことをご提案されています。また、養老孟司さんが次のように言われたことにも触れています。
「外国人からみると、日本人はまるで生きていないように見えるらしい。われらが同胞の間には、価値観や行為規範を社会に仮託して自らは考えないという態度が蔓延しているからであろう。」
それらのことについて、少し考えてみたいと思います。
◆マンションの駐車場
あるマンションで、ようやく近隣に下水管がくることになり、マンションの平面駐車場の地下にある下水処理槽の穴埋めが必要になりました。下水処理槽の穴埋めとして土を埋めるようです。
その工事のためには、車をその期間移動する必要があり近辺の駐車場を探し、約1カ月ほど300mほど離れた駐車場を借りてそこに停めることになりました。
1台のみ車いすの方の乗用車でしたので、消防車用地は、本来駐車できない場所ですが、この期間のみ、1台分の駐車場になりました。
また、下水処理槽は定期点検や清掃が必要であったため、約1mの幅の下水処理槽への入口階段が約50センチの高さで駐車場の端に設置されていました。工事後はそれがフラットな土地になりました。
マンションでは駐車場の問題として、次の4点が挙げられていました。
A.RVなどの後ろが長い車やバックドアが大きい車には、今の車止めは後ろによりすぎている。
B.奥の端の駐車場が止めにくく、幅が狭いため、乗車降車が不自由である。
C.マンション戸数の3分の1しか駐車台数がない。
D.バリアフリー用の駐車場がない。そのため、車いすの方の両隣の車はなるべく反対側に寄せて停めている。
そこに、
E.工事期間、車を別の場所に移動する必要がある。
F.駐車場のラインを新しく引くことができる(再配置が可能)。
G.下水処理槽の入口階段(約1mの幅)がなくなる。
の3つの条件が追加されました。
工事後、駐車場に新しいラインが引かれ、車止めも新しくなり、以下のように変わりました。
・RVなどの大きな車のために、車止めが数センチ前になった。
←A.への対策
・奥の端の車が止めやすいように端に余裕を持たせ、1台分の幅を数センチずつ狭くした。
←B.への対策
結果、車庫入れのバックや切り替えしに使うエリアの前の車との距離が数センチ×2、狭くなり、1台分の幅も数センチ狭くなり、運転の下手な人にとっては、とても停めにくい駐車場になったのです。また、なんと、車いすの方の駐車場の幅も数センチ狭くなっているのです。
C.については、次号で考えてみたいと思いますが、D.とG.をまとめて考えてみると、駐車場の端にある下水処理槽の入り口部分を駐車場エリアとして使う、というアイデアが必ず出てくるはずです。
個々の問題について、現実に苦情として出ている問題については、それぞれ、対策をとったため、停めにくい駐車場になり、また、バリアフリー用を設置できる千載一遇のチャンスをみすみす逃したのです。
車いすの方の車があることは認識したいたはずです(マンション内に駐車できるようにした)が、それを駐車場全体の問題として扱うことができなかったのです。
思考の補助線とまでは言えませんが、問題全体を考えるために、個別の条件に線を引いて結び付けて、まとめて考えることによって、いいアイデアにたどりつくかもしれません。
◆参考文献:思考の補助線 著:茂木健一郎 ちくま新書
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鈴木道代、PMP、PMS
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス、PMstyleプランナー
神戸大学工学部卒業後、アパレル企業の情報システム部に所属し、データベース管理者、システムエンジニア、リーダーとして社内システムの開発・マネジメントに携わる。
その後、独立し、小規模のシステム開発プロジェクトを受託し、プロジェクトマネジメントや開発マネジメントを担当する。
2004年、PMPを取得し、株式会社プロジェクトマネジメントオフィスにて、プロジェクトマネジメントのコンサルティング、研修講師、セミナー講師を担当する。2010年、PMS取得。
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