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目標の厳しければ厳しいほど、計画に時間をかけて、事前にいろいろな検討して、達成する方法を見つけなければならない

第3回 実行を計画し、計画を実行する(2007.07.12)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人


◆計画を作っていますか?

小さな仕事だと、計画がなくても進めることができると思い計画を作らないことが多い。逆に、第1回で述べたような目標設定が厳しい場合、特に納期設定が厳しい場合には、焦ってしまい、これで目標が達成できると確信できる計画にしないままに仕事に着手しがちである。このような仕事の進め方はいずれも一考の余地がある。

前者については、簡単な仕事であっても始める前にちょっと立ち止まって、その仕事の最後までの進め方を考えてみると仕事がスムーズに進む。いわゆる段取りだ。頭の中で段取りをつけきれないと思えば、簡単なものでよいので紙とか、ホワイトボードとかに書き出して、「見える化」して考えてみることが重要だ。

後者についてはこんな仕事の仕方をすれば間違いなく途中で行き詰ってしまうだろう。納期が厳しいということは、普段の仕事のやり方では厳しいということ、何か工夫をしなくてはならないということだ。そのような状況で焦って走りながら工夫をしてもよいアイディアは浮かんでこないだろう。納期の厳しいプロジェクトを焦って計画もそこそこに着手した結末が判で押したように要員追加という現実が何よりの証拠だ。

このように、仕事では、実行を計画し、計画を実行するという意識、言い換えると、自分(あるいはチーム全員)が実行できると思える計画を作り、一旦、計画を作れば何が何でも実行するという意識が必要だ。


◆目標が厳しければ厳しいほど計画が重要

特に、目標の厳しければ厳しいほど、計画に時間をかけて、事前にいろいろな検討して、達成する方法を見つけなければならない。その中では、まず、目標の達成のために余分な作業はないか、優先順位の高い作業はどれかなど、目標を達成するための作業の組み立てを考える必要がある。次に、それぞれの作業に目をむけ、作業のそのものを効率的に行う方法はないかといったことを考えてみる。プロジェクトマネジメントでは、これらの一連の検討を、仕事で達成しなくてならない成果物に着目して、その成果物を生み出すために必要な作業の洗い出しを行うというWBS(ワークブレークダウンストラクチャー)という手法で行う。

ここまでやっても、どうしても無理だという場合もあるだろう。その場合には、困ってからではなく、最初の段階から人を追加するといった対策をとることが大切だ。それが作業の生産性を高くするための鉄則である。逆に言えば、リソースを管理している上司に対して、計画段階で説得力を持って人の追加を要求できるだけ計画としていろいろな可能性を検討し尽くすことが必要なのだ。

著者が新入社員のときに上司から
「仕事にかかる時間の10%の時間を使って段取りをするように。1日の仕事であれば朝、1時間くらは必ず段取りをする習慣をつけるとよい。他の人に相談すべきことがあれば、段取りの中でしておけ。そうすると、その1時間はその日のうちに必ず戻ってくる」
と教えられた。キャリア初期にこのような指導を受け、習慣をつけたことは今でも大変役立っている。この法則はプロジェクトでも当てはまっているように思える。プロジェクトに適用すると、10ヶ月のプロジェクトであれば1ヶ月くらいかけて計画をしようということになる。これは感覚的に正しい


◆計画は自分だけのために作るのではない

さて、もう一度、小さな仕事の話に戻るが、では、自分の頭の中でできるような仕事については計画(書)は必要ないのだろうか?確かに、自分が今日1日どのような仕事をしようかと段取りをつける場合には、頭の中で済ませてしまえることが多い。

しかし、これは「1人で仕事をする」場合である。仮に2人であってもひとつの目標の仕事を誰かと一緒にする場合には、きちんと計画を「見える化」し、きちんと共有することが仕事をスムーズに進めるコツである。仮に進め方を口で説明したとしても自分と相手が同じように段取りをできるとは考えない方がよい。もちろん、仕事中のコミュニケーションも重要なので、段取りの違いはコミュニケーションで片付けるという考え方もあると思うが、はっきりいってそれは無駄である。コミュニケーションをするのであれば、著者が教わったように、作業を始める前にできるだけのコミュニケーションをしておくことが生産性の向上の鉄則である。


◆計画をする時間を仕事の構想時に確保する「勇気」を持つ

このように考えると、仕事や作業の性格に限らず、計画をきちんとし、また、形式ばったものでなくてもよいので計画をきちんと見える化しながら進めることが、仕事をスムーズに進める近道なのだ。プロジェクトマネジメントで、うるさいくらいに計画を作り、ドキュメント化することを推奨している理由はここにある。

最後に、もっとも重要なこと。なぜ、計画を作る時間をとれないのか。プロジェクトマネジメント的には仕事の流れは

 構想 → 計画 → 実行・統制 →終結

となる。これはどんな仕事でも同じだ。

問題は、計画をきっちり作らなくてはならないという意識がないために、仕事の構想の段階で成果や作業のことばかり考えて、計画を作るための時間を確保しようとしないことだ。だから、責任者や顧客に早くやってくれと急かされると流されてしまう。計画を作ることが仕事をスムーズかつ、早く終わらせるための近道であるという信念を持ち、どのような状況、特に厳しい状況でも計画を作る時間を確保するだけの「勇気」を持ちたい。

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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「コンセプチュアル・マネジメント(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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