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仕事の全体像を共有し、コミュニケーションの「態度」を決め、活性化し、チームで仕事をする

第4回 みんなの力を借りる(2007.07.19)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人


◆チームで仕事をする難しさ

一人ではできない仕事をする場合には、みんなの力を借りなくてはならない。人の力を借りてやることは自分自身でやるよりも難しいことが多い。難しい理由は
・目指すゴールややってほしいことを的確に伝えられない
・担当作業の境界で分担があいまいになったり、整合しないといった問題が起りやすい
・目標や状況が変わったときにうまくすばやく軌道修正するのが難しい
といったことだ。

このような困難を克服して、みんなの力を借りて仕事を進めていくには、まず、基本的な考え方として、一人でやることをみんなでやるのだと考えないことだ。最初からみんなでやると考えた方がよい。プロジェクトマネジメントの基本的な発想はここにある。


◆仕事の全体像を共有する

そのために、真っ先にすべきことは、仕事の全体像を明確にし、全員で同じように理解することだ。では何を共通理解すればよいか?

一つ目は第1回で述べた目的と目標である。これが共有できないと何も始まらない。

二つ目はその仕事の制約条件と前提条件である。制約条件は予算とか、期間とか、その仕事を進めていく上での制約である。前提条件というのは多少わかりにくいかもしれない。例えば、商品開発プロジェクトであれば、「顧客は使った商品に満足すれば必ず次もその会社の商品を購入してくれる」と考えることが多いが、このような仕事を進めるに当たっての基本的な仮定である。

三つ目は目的を達成するための仕事の範囲である。例えば、「顧客リピート率を高めること」を目的とする。すると、目的達成のためには、「顧客に魅力のある商品を提供する」という方法もあるし、「サポートを充実させる」という方法もある。両者は仕事の範囲としてはずいぶん違う。どういう範囲で目的を達成すればよいかは前提条件とか制約条件で変わってくる。

以上の3つは、プロジェクトマネジメントでは「プロジェクトチャーター」というドキュメントにまとめて、第2回で説明した仕事の本当の責任者であるスポンサーとの合意事項とすると同時に、その後の進め方の基本方針とする。このプロジェクトチャーターの作成に全員が参加するようにすれば全体像の共有ができる。


◆スコープを明確にする

さらに範囲が決まったら、その仕事は何を成果とするのか(成果物)について決め、さらにはその成果をあげるために行わなくてはならない作業を明確にする。この2つを併せてプロジェクトマネジメントでは「スコープ」と呼ぶが、スコープについても全員で作り上げ、共有することが協力し合えるチームを作るための最大のポイントである。


◆仕事の責任分担を明確にする

仕事の全体像が共有できたら、次はどのような分担で行うかを決める。分担を決める場合にはまずは、市場調査は誰で、商品デザインは誰、詳細設計は誰、といった大雑把な分担と、分担ごとのリーダーと主要メンバーを決める。その後、各リーダーが中心になり、前回説明したWBS(ワークブレークダウンストラクチャー)を作る。そして、それを持ち寄り、調整しながら全体のWBSに組み上げていく中で、全員でWBSのイメージを共有する。

その上で、WBSにある個々の作業の分担を決める。分担を決める際の留意点は、いわゆる担当を決めるだけではなく、作業ごとの「責任者」や「確認者」、あるいは「承認者」など、必要なサポートを明確にし、それについてもきちんと決めておくことが重要だ。このようなやり方を責任分担(RAM:responsibility assignment matrix)という。

日本組織では、これまでは仲間意識に基づく責任の共有と、「ワイガヤ」という言葉に代表される自由なコミュニケーションを基本に、事前にあまり細かく分担を分けることなく仕事をしてきた。そのため、作業ごとにこんな割り振りをするのはいかにも生産性が悪いと感じられる方も多いと思う。しかし、日本の職場にも外国人が増えているし、オフショアで海外で仕事をすることも多い。また、責任に対する世代間のギャップも大きくなってきた現実を考えると、今までのやり方は難しくなってきた。日本組織でも責任の細分化をして、責任を明確にすることは必須になってきたといえよう。これがダイバーシティマネジメントにもなる。


◆コミュニケーションの「態度」を決め、活性化する

ただし、責任分担を明確にしてもコミュニケーションの重要性は変わらない。仕事をしている途中でスコープが変わることもあるし、また、スコープが変わらないまでも小さなトラブルで計画の通りにはことが進まないことも多い。このような事態を乗り越えていくにはコミュニケーションは不可欠だ。

ただし、このような場合コミュニケーションを場当たり的に行ったのでは逆に混乱する。プロジェクトマネジメントでいうコミュニケーションマネジメントが必要である。コミュニケーションマネジメントでは、第2回でステークホルダとの関係作りのところで説明したように、コミュニケーションの必要な相手、タイミング(状況)、内容などを事前に分析し、コミュニケーション計画を作っておく。と同時に、「気がついたらすぐに伝えよう」、「全員がわかるような言い方を心がけよう」、「相手と共通の理解ができるまで粘り強くコミュニケーションしよう」といった「コミュニケーションを活性化させる態度」を決めて全員が共有することが大切だ。

このように事前に十分に情報共有をし、また、責任分担とコミュニケーションの計画を明確にし、作業を始めたのちはコミュニケーションを活性化させる振る舞いを心がける。これで、みんなの力を借りて仕事することができるようになるだろう。

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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「コンセプチュアル・マネジメント(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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