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第8回 パーパスで創造性を高め、プロジェクトの生産性を向上する(2020.02.26)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人


◆創造性を高め、プロジェクトの生産性を向上する
これまで、パーパスとは何か、プロジェクトのパーパスをどのように決めるか、そして、プロジェクトマネジメントの中でどのように使うかについて議論してきました。今回は、パーパスを使ってプロジェクトをマネジメントしていくことにより、何を実現したいかを考えてみたいと思います。

結論からいえば、パーパスを使ってプロジェクトを動かすことのゴールは、創造性を高め、プロジェクトの生産性を向上することです。

これを説明するために、まず生産性とは何かを整理しておきます。


◆管理は物的生産性、マネジメントは付加価値生産性を向上する
生産性は基本的にはアウトプットを投入量で割ったものですが、アウトプットの表現によって物的生産性と付加価値生産性の2種類があります。

物的生産性は、生産するものの大きさや重さ、あるいは個数などといった物量を単位とする生産性です。プロジェクトでいえば、例えば、成果物のうちの何個が完成しているのかというのは物的生産性です。

これに対して、企業が新しく生み出した価値を金額にしたもの、つまり付加価値を単位とする生産性を付加価値生産性と言います。プロジェクトでいえば、成果物を金額ベースでいくら作ったのかが付加価値生産性です。

物的生産性を高くするには効率を上げることが必要ですが、付加価値生産性を高くするには付加価値の大きい成果物から作っていく必要があります。管理で考える生産性は物的生産性であり、マネジメントで考える生産性は付加価値生産性であるとも言えます。

分野によっても違いますが、モノづくりやソフトウエア開発、サービス開発などの開発系のプロジェクトでは、今のところ、生産性向上として物的生産性の向上に努めていることが多いようです。物的生産性は作業自体の効率によって決まってきますが、現実には物的生産性の低い原因が作業自体の効率であることはあまりありません。多いのは、成果物がなかなか決まらなかったり、変更の連続になったりするといった段取りの悪さがです。


◆付加価値生産性を高めるには
しかし、プロジェクトの生産性の低さの本質的な問題はむしろ、付加価値生産性の低さにあります。付加価値生産性が低いのは、付加価値を高めることができないからだということになります。

付加価値を高めるには、プロジェクトコストを下げることと、成果物の価値を高めることが考えられますが、先に述べた作業効率の向上も含めてほとんどコストダウンにより付加価値を高めるという取り組みをしています。成果物の価値を高める取り組みができていないのが実情です。

こういった状況が起こる原因についてはいろいろな理由がありますが、特に多いのは、プロジェクトを実施する際に、社内にしろ、顧客にしろ、予算を決めていて、その予算の範囲内で実施しなくてはならないために、成果物の価値を高めても、付加価値の向上にならない(予算より高くは売れない)という現実があります。だから、必要なのはコストダウンだという考え方です。

このような制約があるとしても、やはりもっとも本質的な問題は、成果物を使い、ビジネスを行うステークホルダーに彼らの期待の範囲内でしか提案をすることができず、それ故にステークホルダーは満足できず、迷走するケースが多いことです。ステークホルダーの期待している範囲ではこのような状況を打破できません。期待を超える満足を与えて、初めて予算を増やそうかという動機になるのです。

つまり、ステークホルダーの期待を超える魅力的で創造的な提案をできるなら、生産性の問題も解消すると考えられますが、ではなぜ、創造的な提案ができないのでしょうか。今回、考えてみたいポイントはここです。


◆試行錯誤で付加価値の高い成果物を生み出せない理由
この問題に対して、一般には、メンバーの創造性が低いとか、自組織や顧客が保守的で従来と大きく異なることを嫌うとか、いくつかの理由がよく言われます。また、ステークホルダーが成果物の原型を見るまで評価できず、評価して変更するタイミングが遅くなるため、デッドラインのあるプロジェクトでは新しい提案は怖くてできないといった問題もあるようです。

このような問題を解消するために、アジャイルやOODAのようなステップを刻み、試行錯誤する方法を用いて、成果物を考えて、付加価値の高い成果物をステークホルダーの合意を取りながら作り上げていくという方法が主流になりつつあります。

しかし、現実には、このような手法を使っても創造的な成果物が実現できないことがよくあります。例えば、ステークホルダーの要求を聞きながら徐々に作り上げていくというプロセスを取っているものの、それは予定調和になっていて、結局、期待を超えるようなものができないという指摘をよく耳にします。


◆何を試行錯誤の軸になるのか
試行錯誤する手法は、何を軸にして試行錯誤するかが問題になりますが、従来の要求だとか、仕様を軸とし、そこから変更していくのであれば、期待を超えられない可能性が大きくなります。

期待を超えるためには、プロジェクトで実現したいことの本質が何で、それを実現する方法をゼロベースで考える必要があります。ここで、注目すべきなのがパーパスです。

プロジェクトのパーパスはすでに説明していますように、プロジェクトの存在意義です。つまり、プロジェクトの本質はパーパスを実現するものです。

従って、試行錯誤において次に進むべき方向を決める際には、パーパスを考慮して策定しているプロジェクトの目的に戻り、目的を実現できるような次のアクションをゼロベーで起こすということです。これによって、成果物の付加価値の向上に結びつきます。

ここで重要なことは、前回説明しましたように、成果と成果物を区別して考えることです。VUCAのプロジェクトでは、一般的に成果=成果物とはならないからですが、逆にいえば、目的を軸にして成果物を決めることにより、ゼロベースの発想により、創造性が引き出され、期待を超える成果物が生まれ、結果として付加価値生産性が向上することが期待できます。

このように創造性の高まりは、メンバーの創造性や組織の性質に関係なく、パーパスや目的からプロセスを踏むことによって実現できるのです。


◆パーパスを設定し、付加価値生産性を向上した例
ここで一つ、例を考えてみましょう。日産(NISMO)が鬼才・水野和敏氏を監督に迎え、どん底から、国内耐久メーカー選手権3年連続チャンピオン獲得、デイトナ24時間レース総合優勝獲得など、華々しい結果を出したときの話です。

多くの人は「レースに勝つ秘訣は、速い車を作ることや、よいエンジンを作ること」と考えていました。つまり、「速い車を作ることやよいエンジンを作ること」がプロジェクトのパーパスだったわけです。そしてこれに基づいて、さまざまな種類のレースに合った車やエンジン開発を目的とし、レースというプロジェクトを戦っていきます。

しかし、水野さんはそうは考えませんでした。レースでは、各パーツへの負荷が大きく、車両としての最高性能を維持できる時間は限られています。そこで

「パフォーマンスをマネジメントする」

ことをプロジェクトのパーパスとし、「ある一定距離を進むのにかかる時間を最短化する」ことをプロジェクトの目的としました。このようなパーパスの設定、目的の設定によって、メンバーはどんどんゼロベースの創造的なアイデアを出していきます。

目的を実現するために、レースにおける車両やパフォーマンスの変化などのデータを徹底的に取り、データ分析を行い、そして、「カーブで減速が少ない」特性の車だけではなく、ピットの方法なども工夫し、時間を最短化していったのです。それによって、上記のような華々しい成果を上げました。

まさに、プロジェクトのパーパスの適切さでレースというプロジェクトを次々に成功させていったのです。


◆創造性により、生産性を向上する
以上のように、プロジェクトの生産性を向上させるポイントは、まず、付加価値生産性に焦点を絞った上で、開発プロセスのコストを下げるのではなく、成果物の付加価値を向上させることで、そのようなアイデアを出す創造性によって実現されます。

前回も述べましたように、VUCA時代には、変動に適応して成果を生み出していくことが必要になりますので、あまり成果物に拘るべきではありません。むしろ、成果物の付加価値を高めるにはどうすればよいかを必死で考えることが不可欠だといえます。

◆関連するセミナーを開催します
━【開催概要】━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ◆パーパスでプロジェクトを動かす
       〜VUCA時代のプロジェクトデザインの実践的方法    ◆7PDU's 
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       ※少人数、双方向にて、演習、ディスカッションを行います 
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  詳細・お申込 https://pmstyle.biz/smn/conceptual_pm.htm
  主催 プロジェクトマネジメントオフィス、PMAJ共催
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  【カリキュラム】                     
<第1日>
 1.パーパスとプロジェクトデザイン
 2.パーパス実現のシナリオ創り
 3.成果と成果物を明確にし、プロジェクト目的と目標を決める
<第2日>
 4.シナリオからプロジェクトコンセプトを創る
 5.成果を実現する本質要求を見極める
 6.成果物を実現する本質目標を決定する
 7.環境変動時のプロジェクトマネジメントの対応
 8.VUCA時代に求められるプログラム&プロジェクトマネジメント(まとめ)
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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「コンセプチュアル・マネジメント(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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