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第6回 メンバーのパーパスをプロジェクトのパーパスに結びつける(2020.01.21)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人


◆プロジェクトとして最高の意義を持ち、メンバーがやりがいを感じるには

前回は頂いた質問に答える形で、組織やプロジェクトのために個人が存在しているわけではないので、個人のパーパスと組織やプロジェクトのパーパスとは独立に決定されるものだという話をしました。このように考えると、パーパスドリブンのプロジェクトマネジメントの大きな課題の一つは、個人のパーパスとプロジェクトのパーパスを如何に紐づけることであることが分かります。

この課題は、プロジェクトのパーパスを決める際に主要メンバーを決めて、パーパスが整合するように決めていくことによってある程度、解決できますし、実際にそのようなやり方をしているプロジェクトが多いと思いますが、それによってプロジェクトの進め方や成果が制約を受け、プロジェクトの意義を低くしてしまうことが少なくありません。例えば、製品開発のプロジェクトでメンバーが本当に満足するような製品が開発できないという問題の大きな原因は創造力の不足より、この課題に適切に対処できていないことが多いようです。

このような問題を回避し、プロジェクトとして最高の意義を持ち、かつ、プロジェクトメンバーもやりがいを感じ、結果に満足できるようなプロジェクトにしていくには、プロジェクトと個人のパーパスを統合してプロジェクトの定義をしていく必要があります。この統合に役に立つのがコンセプチュアル思考です。


◆プロジェクトのパーパスと目的の違い

ちょっと話が脱線しますが、プロジェクトのパーパスと目的はどう違うのかという質問を頂きましたので、ここで答えておきたいと思います。

前回も述べましたが、パーパスという概念は社会性が強い概念で、存在意義のような日本語が使われます。もう少し、強くいえば、「社会における確固たる存在意義」がパーパスです。

プロジェクトのパーパスという場合には、プロジェクトが組織にとってどのように役立つかよりは、社会にとってどのように役に立つのか(存在意義があるのか)の方をより意識しています。

そして、組織には組織のパーパスがあり、プロジェクトのパーパスと組織のパーパスが重なることによって、組織にとっても存在意義のあるプロジェクトになっていくと考えます。

このようなプロジェクトの位置づけは違和感がある人もいらっしゃるかもしれませんが、VUCAな環境においては、組織だけをみてプロジェクトの目的を決めていたのでは、変化に対応できず、プロジェクトは成果を上げることができません。プロジェクトが成果を上げるには組織とは別の軸が必要で、それが社会だということです。

このようにパーパスを決めると、プロジェクト定義の中で決めるプロジェクトの目的は組織にとってのそのプロジェクトの目的になると考えられます。プロジェクトと個人のパーパスを統合してプロジェクトを定義するという場合、定義の中にはプロジェクトの目的も含まれ、それはパーパスから従属的に定義されると考えてよいでしょう。

さて、統合の話に戻します。


◆コンセプチュアル思考によるパーパスの統合

プロジェクトのパーパスとメンバーのパーパスを統合する場合、プロジェクトのパーパス、メンバーのそれぞれのパーパスを形象とし、概念の世界でこれらのパーパスを統合したパーパスを考えます。そして、それを具体化し、製品やサービスなどのプロジェクトの目標や成果物に展開していけばいいわけです。

ここで注意すべきことは統合は「いいとこどり」とは違うということです。一つ例をとって考えてみましょう。

例えば、プロジェクトのパーパスは「コストパフォーマンスの高い製品を社会に提供する」だったとします。これに対して、メンバーの何人かは「まだない新しいものを世の中に出す」や「イノベーションを生み出す」などをパーパスにしていたとします。

このようなときに、いいとこどりをすると、例えば、「良い製品を低価格で世の中に出すようなイノベーションを実現する」というような統合になりがちです。これは、形象のパーパスを形象の中で統合しています。

そうではなく、形象のパーパスを概念の世界に一度移します。例えば、概念の世界に移したプロジェクトのパーパスが「コスト競争力を高める」ことで、メンバーのパーパスを「消費者が新しいと感じるものを世に出す」ことだと考えたとします。

この2つを統合すると例えば、

「製品の提供単位を見直し、システム化することにより、イノベーションのコストを下げ、製品価格を下げていく」

というプロジェクトの目標を掲げることができます。これが統合のイメージです。


◆プロジェクトにおけるパーパスの統合の例

さて、それでは最後に前回、例として取り上げたメーカの10年後に女性管理職の割合を40%にするというプログラム(プロジェクト)の例を再び取り上げてみます。このメーカは

「社員の力を社会に還元する」

を組織のパーパスにしていました。このプロジェクトでは、前回、説明しましたように、
 
「女性の力を社会に役立てることができるマネジメントの定着」

というプロジェクトのパーパスを定義しました。

そこで、プロジェクトメンバーの候補に挙がったのは、佐藤さん(女性)、香川さん(女性)、遠藤さん(男性)、高倉さん(女性)、小泉さん(女性)などでした。それぞれの人たちの個人のパーパスは以下のようなものでした。

佐藤さん:女性の活躍できるイノベーションを推進する
香川さん:女性の力を活かした世の中をつくる
遠藤さん:オープンなマネジメントにより組織の力を開放する
高倉さん:性別に関係なくみんなが幸せに働ける世の中をつくる
小泉さん:プロジェクトで回る世の中をつくる

まず、プロジェクトのパーパスと個人のパーパスのキーワードを議論する中で、女性、プロジェクト、マネジメント、オープン、組織の力といった概念があることに気がつき、統合してみる中で、

「組織の力を高めるプロジェクトマネジメント手法のデザインと定着化」

をプロジェクトの目標とすることになりました。そして、この目標を達成するために必要なメンバー集め、計画の策定などをしてプロジェクトを実行していきました。


◆パーパス統合の際の留意点

一般論として、プロジェクトのパーパスと個人のパーパスはその重なりが大きいほど、プロジェクトチームのパーフォーマンスは高くなりますが、注意すべきことはスキルとは違い、重なりがないとプロジェクト成果に貢献できないものではないことです。当然、そのメンバーの専門スキルによる貢献もできますし、専門スキルに無関係な部分での貢献もできるかもしれません。ただ、重なりが大きいとそのパフォーマンスが高まるということです。

加えて重要なのは、VUCAな環境でプロジェクトを行う場合の不確実性や変化に対する対応の柔軟性や速さです。スキルを基盤として考えると、変化に対して、自分ができる方法で対応しようと考え、これがプロジェクトが変化に対応できない一因になっています。

最近よく耳にするのは、プロジェクトは計画して行っているのだから、簡単に変更すべきではないということで、プロジェクトの初期の計画で突っ走り、動きが取れなくなり、大きくスケジュールを遅らせてしまうケースです。

従来であれば変化や不確実性は計画に対するリスクとして対処できるという前提になっていますが、VUCAな世界のプロジェクトはこの前提が変わってきます。簡単にいえば、計画ができないような不確実性があったり、リスクでは想定できないような変化があったりします。

これらのマネジメント的な対応については、改めて、シナリオプラニングの手法を使う方法を提案しますが、リスクマネジメントでは対応できないことを前提にすると、そのような変化に対しては、プロジェクトの目的を変えざるを得ません。そこで、重要な役割を果たすのがパーパスです。

まず、プロジェクトに対しては、明確なパーパスがあることによってプロジェクトの目的を変更する際の一定の制約になります。それによって、個人に求められる役割も変わっていくことが考えられますが、この際にプロジェクトと個人のパーパスの重なりが大きいければ大きいほど、メンバーの対応が意欲を持って、満足な成果を実現できます。

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━【開催概要】━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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  【カリキュラム】                     
<第1日>
 1.パーパスとプロジェクトデザイン
 2.パーパス実現のシナリオ創り
 3.成果と成果物を明確にし、プロジェクト目的と目標を決める
<第2日>
 4.シナリオからプロジェクトコンセプトを創る
 5.成果を実現する本質要求を見極める
 6.成果物を実現する本質目標を決定する
 7.環境変動時のプロジェクトマネジメントの対応
 8.VUCA時代に求められるプログラム&プロジェクトマネジメント(まとめ)
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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「コンセプチュアル・マネジメント(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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