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第97話:ステークホルダーとエンゲージメント(2015/01/13)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人


◆ステークホルダーとステークホルダーマネジメント

マネジメントにおける非常に重要な概念にステークホルダーという概念があります。
ステークホルダーとは

企業・行政・NPO等の活動によって直接的・間接的に影響を受ける人々や団体など利害関係者

のことで、たとえば、消費者(顧客)、従業員、株主、債権者、仕入先、得意先、地域社会、行政機関などを指しています。

プロジェクト(イニシアチブ)にもステークホルダーという概念はあり、プロジェクトマネジメントの米国標準であるPMBOK(R)では

「プロジェクトに積極的に関与しているか、またはプロジェクトの実行あるいは完了によって自らの利益がプラスまたはマイナスの影響を受ける、顧客、スポンサー、母体組織、一般大衆のような、個人や組織」

という定義がされています。また、ステークホルダーマネジメントという概念もあり、

「ステークホルダー特定」
「ステークホルダーマネジメント計画」
「ステークホルダー・エンゲージメント・マネジメント」
「ステークホルダー・エンゲージメント・コントロール」

という4つの要素から構成されることになっています。


◆エンゲージメントとは

これから分かるようにステークホルダーマネジメントの中心になっているのはエンゲージメントという考え方で、PMstyleで「ステークホルダーマネジメント」という連載をしている鈴木道代は

「エンゲージメントとは、ステークホルダーの一人一人が、プロジェクト組織に対して、ロイヤルティを持ち、方向性や目標に共感して、『心からの愛着』を持って、絆を感じている状態である。」

と定義しています。

ステークホルダーマネジメント

第5回 ステークホルダー・エンゲージメント・マネジメント


◆オープンリーダーシップの時代のステークホルダーマネジメント

マネジメントにおいてステークホルダーという概念は非常に重要なものですが、ステークホルダーの位置づけというのはリーダーシップがオープンな時代になって徐々に変わっているように感じます。プロジェクトを例にとって考えてみましょう。

企業や事業もそうですが、プロジェクトには目的があります。当然ですが、その目的に対してプラスの影響を受けるステークホルダーもいれば、マイナスの影響を受けるステークホルダーもいます。そこで、プロジェクトの目的を達成するためにはマイナスの影響を受けるステークホルダーへの対応が一つのポイントになると考えられてきました。そのため、プロジェクトの目標を微調整していくことになります。

ところがプロジェクトの成果が、プロジェクトだけでは完結しにくい時代になってきました。たとえば、開発に必要な技術がはっきりせず、実施しながら調達していなくてはならないようなプロジェクトです。

つまり、外部のステークホルダーの力を借りなくては成果が生まれにくくなってきたわけですが、この中には利害関係が対立しているステークホルダーもいる可能性があります。


◆目的を共有する

そこで重要になってくるのが目的と目標(成果)の関係です。たとえば、ある新製品を開発するとします。成果は製品で目標はシェア○%にしたとしましょう。

ここで営業というステークホルダーを考えてみると、新製品で自分が扱っている製品のシェアを食われる営業担当者と自分の売り上げにプラスになる営業担当者がいたとします。

このような場合、マイナスの影響を受ける可能性がある営業担当者は協力しない可能性がありますので、何らかの対処が必要になるわけですが、プロジェクトの目的のレベルで対処することを考える必要があります。

たとえば、プロジェクトの目的を売上げをその新製品分の成功だけではなく、既存製品とシナジーを作ることだとします。すると、新製品のシェアに加えて、既存製品のシェアも目標となり、開発する製品のスペックにその目的に適う要素を含める必要が出てきます。

逆にそれを実現することによって、既存製品のビジネスで得られている知見を新製品に活かすこともでき、その営業をそのような形で巻き込んでいくことができます。


◆エンゲージメントは精神論ではない

これは社内の例ですが、今の時代はプロジェクトとか、組織で閉じて、外に人たちはステークホルダーとして一線を画するという考え方から、ステークホルダーとオープンにコラボレーションすることが求められるようになってきているわけです。

これがエンゲージメントを実現するということです。エンゲージメントは精神論ではありませんし、精神論のエンゲージメントは厳しい状況になってくると崩壊します。エンゲージメントをするには、ステークホルダーの目的や目標との関係を明確にすることが不可欠だと言えます。言い換えるとWin-Winの目的を見つけることができることです。そうして初めて、そのプロジェクトに共感もできるし、愛着も湧いてきます。

もちろん、自分の利益には経済的なものばかりではなく、例えば社会的貢献ができることといったものも考えられます。そのように考えると、ステークホルダーの特定が非常に重要になってきます。つまり、同じ方向を向いたステークホルダーだけではなく、別の方向を向いている人をステークホルダーとしてプロジェクトを進めていくことが効果的な場合もあります。

それが今求められているステークホルダーマネジメントの本質だと言ってよいでしょう。

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6.まとめ
 ・(演習6)カレンシーを再考する
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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「コンセプチュアル・マネジメント(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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