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第96話:イノベーションの構図(2014/12/26)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人


◆イノベーションの重要性

来年はPMstyle+でもイノベーションの話題と積極的に提供していこうと考えています。また、新しい連載も企画しています。そこで、今年最後の、PMスタイル考はイノベーションについてまとめて考えをまとめておきます。

イノベーションは脈々と語られてきたテーマです。しかし、この数年、イノベーションの重要性はこれまでにないくらい高まってきています。10人のマネジャーに「あなたの会社でイノベーションは必要か」と聞けば、10人とも必要だというでしょう(ただし、「あなたの部門でイノベーションは必要か」と聞くと答えは微妙です)。アベノミクスでもイノベーションがキーワードの一つになっています。

では、なぜ、イノベーションが重要なのでしょうか。

2000年になってから、「変化」、「チェンジ」が盛んに言われるようになってきました。イノベーションとは、

変化のための新しい方法を見つけること

です。つまり、「変化」を実行するためにはイノベーションが必要なのです。


◆今、求められているイノベーションとは

もちろん、これまでもイノベーションが必要なかったわけではありません。

これまでは企業はその能力に応じて、顧客に製品やサービスを提供してきました。平たくいえばできることを顧客に提供してきました。売り手主導だったわけですが、競争相手はおり、そこでは企業能力を上げるために新しい技術やオペレーションを持ち、競争相手に差をつけるためにイノベーションが必要でした。

今でもマネジャーとイノベーションの話をしていると、この理由でイノベーションが必要だと考えている人もいます。

ところが、最近は顧客は積極的にいろいろなことを要求するようになり、顧客のニーズに応えなくては生き延びることすら難しくなってきました。「変化」が盛んに言われるようになったのもここが理由です。顧客を中心にした企業に「変化」する必要が生じているわけです。

顧客中心の経営に変わっていくためには、重要な変化が必要です。これまではできることをやっていればよかったわけですが、顧客のニーズに応えようとするとそうはいきません。顧客のニーズに応えるために必要であればできないこともできるようにしなくてはならないのです。そのためには日常的な活動の中でイノベーションが欠かせないわけです。

この方法は従来の企業能力を上げる方法とは本質的に異なります。顧客のニーズに応えるために一から技術開発をしていたのでは間に合いません。そこで、既存の技術で顧客のニーズを実現する方法を考えることが現実的な方法になってきます。これがイノベーションが既存技術の組み合せだといわれる理由です。


◆イノベーションの2大要素

ただし、この問題はそんなに単純な問題でありません。ここを整理しておきたいと思います。

まず、すべてのイノベーションには技術が関係してきます。ここでいう技術とはIT(テクノロジー)も含めたもので、技術の関係しないイノベーションは考えられません。これを前提として考えたいと思います。

すると、イノベーションの2大要素は技術とビジネス(顧客のニーズに応えること)ということになります。技術とビジネスを組み合せで、顧客や市場に新しい価値を提供する。これがイノベーションです。

問題は組み合せ方です。組み合せるときの選択肢は、

既存のビジネス、新しいビジネス
既存の技術、  新しい技術

の4つがあります。もう一度言いますが、ビジネスと技術を組み合せないとイノベーションにはなりません。


◆イノベーションの3つのパターン

では可能な組み合わせについて、その意味を考えてみましょう。日本語で技術革新という名前で呼ばれてきたイノベーションは

(1)既存のビジネス × 新しい技術

というパターンです。

すでにあるビジネスに新しい技術を投入して新しい価値を創造するわけです。製品のイノベーションの多くはこのパターンです。たとえば、今、注目されている自動運転の自動車はこのパターンだといえます。

ただ、新しい技術だけでは顧客のニーズに応えるのは難しい場合が少なくありません。そこで、今までとは提供する方法を変えて対応したいケースが出てきます。それが、二番目のパターンで

(2)新しいビジネス × 既存の技術

というパターンです。

既存の技術を使って新しいビジネスモデルを作るのはこのパターンです。たとえば、アマゾンは、書籍をすぐにほしいという顧客のニーズに応えて、既存の技術やインフラを使って、書籍を翌日には手元に届けるというビジネスを作りました。

もう一つは、理想的なイノベーションとでもいうべき組み合わせで

(3)新しいビジネス × 新しい技術

という組み合わせによるイノベーションが考えられます。

この例として挙げることができるのがアップルがiPodで行ったイノベーションです。ネットから音楽をダウンロードして管理する技術と、音楽を曲単位で売るという新しいビジネスを組み合せて、これまでのCDによる音楽販売のビジネスを破壊してしまったのは、まだ、記憶に新しいところです。


◆イノベーションの起点と進展

さて、それぞれのイノベーションがどのように起こっていくかを整理しておきましょう。

イノベーションの起点を考えると、(1)のイノベーションは技術であり、(2)のイノベーションは顧客ニーズです。ここまでは自明です。

問題は(3)のパターンで、(3)のイノベーションは(技術とビジネスの創発で)サイクルリックに起こることが多いと思われます。

アップルのiPodの例は、まず、すべての音楽を持ち歩けるオーディオデバイスを作りました。これは技術イノベーションです。そして、そこに聞きたいものをネットからどんどん追加していき、ユーザに新しい価値を与えるイノベーションを起こしたわけです。さらにそこから、好きな曲がランダムに聞けるような技術のイノベーションを起こして、デバイスの地位を盤石なものにしていきました。これがのちに、iPhoneにつながっていきます。

他の興味深い事例にグーグルがあります。グーグルは技術イノベーションにより検索エンジンの中でトップの地位を獲得しました。その検索エンジンの優位性を使って、検索と広告を結びつけるビジネスイノベーションを起こしました。さらに、それを高度化するために大量の検索処理の技術イノベーションを起したわけです。グーグルのサービスは基本的にこのパターンで展開されているように見えます。

このようなイノベーションサイクルを作ろうとすると、技術イノベーションはうまく行っても、うまくビジネスイノベーションが起こせない、つまり、マネタイズできないことが多いことです。

グーグルが興味深いのは、20%ルール最初の技術イノベーションを積極的に推進すると同時に、マネタイズできないと判断したらその技術は捨てているところです。発想的にはプロトタイピングの発想ですが、深追いしないところは学ぶべきところでしょう。

捨てることができないのは失敗を許容できないからで、失敗を許容するというのはこういうことだと言えます。


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  ・個人レベルの問題点
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  ・組織レベルの問題点
 2.コンセプチュアルなマネジメントのポイント
  2.1 質問型の組織を創る
  2.2 コンセプチュアルな組織活動のプラニング
  2.3 ステークホルダーへのコンセプチュアルな対応
  2.4 コンセプチュアルな人材育成
  2.5 コンセプチュアルな組織文化の構築
 3.コンセプチュアルなマネジメントの目標
 4.コンセプチュアルマネジメントでコンセプチュアルな組織を創る仕組みワークショップ
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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「コンセプチュアル・マネジメント(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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