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第91話:日常業務の一環としてイノベーションを実現する(2014/10/11)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人


◆イノベーションは大上段に構えて行うもの?

イノベーションという言葉は、大上段に構えて何かやるというイメージがあって、コストが大きく現実的ではないと考えられたり、リスキーなことはやりたくないと思われることが多いようです。

このような認識が生まれたのは、イノベーションがずっと発明(インベンション)、あるいは、技術革新として位置付けられてきて、それにはコストもかかれば、時間もかかるという認識があるためだと思われます。

しかし、これは明らかな誤解で、イノベーションはそういうものではありません。イノベーションに求められるのは日常業務の中で行うことです。イノベーションができない言い訳に日常業務が忙しいからだという言い訳がありますが、そうではなくて、日常業務の一環として行うことです。仮にイノベーションのために時間がかかるとすれば、それは半期なり、年度なりの周期で取り戻す必要があるのです。


◆生産性を上げるには

一方で業務の一環として、新しいことをやる活動としては改善があります。これは業務の中で、生産性を上げるために行う活動です。

このあとの議論のために、少し言葉の整理をしておきます。生産性は資源をインプットとして、付加価値をアウトプットとした時の効率で、生産性を上げるにはインプットを小さくする(時間を減らす、コストを減らす)アプローチと、アウトプットを大きくする方法(対価を上げる、生産量を増やす)といったアプローチがあります。

改善の場合、多くは無駄を見つけてなくすことによってインプットを減らす方向の取り組みをします。作業時間を減らしたり、コストを削減したりするわけです。これによって結果として、生産量が増えるといった相関関係もあります。

通常はアウトプットを増やそうとすると、投資が必要になります。製造現場であれば性能の良い工作機械を導入するとか、設計であれば設計支援システムを導入するとかいったところです。これは、別の見方をすれば新技術の導入であり、業務とは別の次元で行われていることで、イノベーションのイメージの一つになっているものと思われます。


◆イノベーションは業務の一環として行うことが求められている

もちろん、こういうイノベーションもあるわけですが、今、求められているイノベーションはそういうものではありません。イノベーションは業務の中で行うことが求められています。つまり、業務の中で付加価値を大きくすることを求められるわけです。

たとえば、ウォークマンを考えてみてください。基本的にウォークマンは既存の技術で、小型化して作られています。小型化は通常の製品開発のルーチンだと考えてもいい改良だった思われます。これまでのラジカセは捨てて、一から作ったわけではありません。

しかしながら、スピーカーと録音機能を取るという画期的な組み合わせによって日本でもっとも凄いイノベーションだと評価されています。これが、日常業務の中でイノベーションを行うという意味です。

では、なぜ、そのようなことができたのでしょうか?エピソードによると欠かすことができないのが、当時、名誉会長だった井深大氏が

機内できれいな音で音楽が聴けるモノを作って欲しい

といったことだといわれています。この一言で、テープレコーダー「ステレオプレスマン」の改良ルーチンに新しいコンセプトが加わり、特別なサイクルが生まれ、ウォークマンが生まれたわけです。

上でも言いましたように、今、求められているイノベーションはウォークマンのように日常業務の一環として行われるようなものなのです。


◆業務の一環でイノベーションを行うために「制約」を与える

そのようなイノベーションを起こすにはどうすればよいのでしょうか?基本的に戦略サイクルがあって事業が回っているなら、戦略要求が一つのきっかけになります。仮に、現状の商品ラインナップでは売り上げの達成が難しいとすれば、マネジャーは特定のフォーカスでイノベーションを求めていくことが必要です。

その視点は技術ではありませんし、たとえば、戦略ゴールそのものでもありません。どのような要件の商品が生まれれば戦略ゴールの達成ができるかという洞察が必要になります。これがイノベーションにおけるマネジャーの仕事だといってもいいでしょう。

そして、技術開発をさせないことです。これまで、技術を開発することは企業に資産を作ることで好ましいことだと考えてきました。そのため、開発のアプローチは

・手持ちの技術で作れる新しい商品を作る
・手持ちの技術で作れなければ新しい技術を作る

のいずれかでした。今までとは異なる要件に対して新しい技術を開発するというのは楽です。その結果、生まれたのが山のような休眠特許です。

イノベーションを起こすには第3のアプローチ、つまり、

・既存の技術で要件をクリアするという制約の中で作る

というアプローチが必要なのです。ここがイノベーション実現上は最大のポイントだといってもいいでしょう。


◆制約の中でイノベーションを行うためのマネジメント

ただし、制約だけを示して、あとはよろしくというのではマネジメントになりません。この制約の中でできるマネジメントをすることが求められるのです。このマネジメントとしてはたとえば、

(1)信頼でき、有用なネットワーク構築し、活用する
(2)ステークホルダとの効果的な関係維持する
(3)支援の準備とタイムリーな実行
(4)アイデアを評価し、適切な選択をする
(5)アイデアを一ひねりする

といった活動が必要になります。

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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「コンセプチュアル・マネジメント(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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