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第42話:リーダーのメンバーに対する責任(2012/03/12)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人


◆はじめに

先日、facebookページに「安全と安心」という記事を書きました。

今回はある意味、この続編で、プロジェクトにおいては、上位者が下位者を安心させる必要があるのではないかという話です。プロジェクトマネジャーはプロジェクトメンバーを、プロジェクトスポンサーはプロジェクト(マネジャー)を。


◆プロジェクトマネジャーはメンバーにどういう責任を持つのか

プロジェクトマネジャーは、上位組織から目標を与えられ、任命されます。そして、任命された上位組織に対して、目標を達成する責任を持ち、説明責任を負います。

では、メンバーに対してはどういう責任を持つのでしょうか?

たとえば、メンバー間でコミュニケーションがうまく取れていない状況を考えてみましょう。プロジェクトマネジャーは当然、何とかしようとしますが、これは責任に基づく行動でしょうか?それとも、プロジェクトの目標を達成するための手段としての行動でしょうか?

一般的に考えると、組織では上司(管理職)が部下に対して責任をとることはありません。上司は組織に対して業績責任を負っており、部下へ何かコミットするのは、その責任を果たすための手段であり、もし約束を破ればそれは自分が業績を達成できないという形で自分に跳ね返ってくるというロジックです。プロジェクトマネジャーは管理職ではない場合がありますが、プロジェクト業務の性格を考えると同じ図式がある考えていいでしょう。

コミュニケーションの問題であれば、プロジェクトメンバーに対して、コミュニケーションを円滑にするというコミットをしているとします。にも関わらず、コミュニケーションが悪い場合に何もしなければ、結果としてスコープの変更とか、スケジュール、コスト、品質の問題という形で問題が生じ、プロジェクトの目標が達成できなくなります。

これで結果的にプロジェクトマネジャーはメンバーに対する約束を果たさなかった責任をプロジェクトの失敗という形で取ることになります。


◆メンバーを裏切らないために

では、このような事態にならないためにはどうすればよいのでしょうか?現実には、このロジックには抜け道があります。プロジェクトマネジャーが業務そのもののやり方を具体的にメンバーに指導できれば、メンバーに対する約束を果たさなくても、成果をコントロールし、それなりの成果を得ることはできます。実際に、プロジェクトの状況がよくなくなると、そのようなやり方をしているプロジェクトマネジャーは少なくありません。

このような問題も含めて、プロジェクトマネジャーがメンバーに対するコミットメントを果たすにはどうすればよいのでしょうか?

特に、イノベーティブな(新規性の高い)プロジェクトでは、プロジェクトマネジャーは業務の進め方をプロジェクトメンバーに任せるし、ITのような顧客対応のプロジェクトでは、バリューゾーンそのものが現場にあり、どれだけ顧客価値を実現できるかはメンバーに委ねるしかありません。

このようなプロジェクトでは、プロジェクトマネジャーは、メンバーにコミットしていることに対して、説明責任を負っていると考えるべきです。


◆プロジェクトマネジャーの説明責任の例

たとえば、上位組織と調整をして、必要な人材をリアルタイムで確保できるようにするという計画を作っていた(コミットしていた)とします。計画にしたがって、たとえば、2週間ごとにプロジェクトの状況をプロジェクトスポンサーに報告して、向こう1ヶ月の間に必要になる要員についての話し合いをするとします。

そして、プロジェクトマネジャーはそのような活動実績についてプロジェクトメンバーに説明する責任を持つべきなのです。その活動に関係があるなしに関わらず、すべてのメンバーに対してです。これが、説明責任(アカウンタビリティ)のイメージです。これによって、メンバーは今やっているチャレンジに安心して、集中して取り組むことができます。

もう一つ例をあげましょう。サブチーム間のスケジュールの調整をコミットしているとします。あるチームのスケジュールが遅れており、このチームの作業のリスケと、関連作業の調整が必要になりました。このような場合、マイルストーンに間に合えば、関係範囲だけで済ましてしまうことが多いですが、きちんと調整をしていることが重要であり、メンバーに対して、きちんと調整しているという説明責任を負うべきです。

メンバーから見ると、プロジェクトマネジャーが計画によってコミットしていることは、自分たちが作業を進める前提になっているわけで、説明責任が果たされないと、メンバーは安心して作業を進めることができません。

逆にいえば、この安心を作り出すのが、マネジメントの役割だといえ、そのためには、説明責任を果たすことは非常に大切です。


◆上位組織のプロジェクトに対する説明責任

さて、もう少し視野を広げてみましょう。プロジェクトチームの中の話であれば、まだしも、上位組織とプロジェクトの間では、この説明責任は不可欠です。プロジェクトに安心して仕事をさせようと思えば、上位組織はプロジェクトに約束したことに対して説明責任を負うべきです。

プロジェクトマネジャーを任命するときに、プロジェクトに対してさまざまなコミットをします。リソースの配置、顧客への対応、経営層への状況説明、・・・

これらに対しては、プロジェクトスポンサーがプロジェクトに対して説明責任を持たないとプロジェクトは安心してプロジェクトを進めることはできないでしょう。

プロジェクトマネジャーやプロジェクトスポンサーは、価値を創出する者に対して説明責任を持つ。イノベーティブなプロジェクトや、顧客対応のプロジェクトでは、これを基本にしたプロジェクト運営が求められているのではないでしょうか?

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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「コンセプチュアル・マネジメント(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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