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第159話:マネジメントをコンセプチュアルにしよう(2019/11/11)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人


◆管理とマネジメントの違い

プロジェクトマネジメントが日本でも注目されるようになってきた2000年くらいには、それまでやっていた「プロジェクト管理とプロジェクトマネジメントはどう違うのか」という質問をよく受けたが、今でも管理とマネジメントはどう違うのかと聞かれることがある。英語では管理とマネジメントは、controlとmanagementであるが、辞書を引くとmanagementの日本語には管理という言葉があてられていることから混乱するのだろう。

当時からずっと言っていることが一つある。それは

「管理は見える化して何とかすること。マネジメントは管理に加えて見えないものを何とかすること」

だ。


◆管理は進歩しているが、マネジメントにはならない

この20年くらいの流れを見ていると、プロジェクトマネジャーも含めて、多くのマネジャーがやっていることは管理の範囲に留まっているように感じることが多い。

もちろん、進化していないわけではない。大きな進化の方向は2つあるように思う。一つは、本来見えないものを見える化して管理しようとしていること。

この代表は顧客満足だろう。顧客満足は、本来見えないものであるが、製品やサービスの成功に大きな影響を持つため、何らかの方法で見える化し、改善していくことが当たり前になっている。それ以外でも企業の現場にいくと、思いもつかないような指標を作り、見える化して改善していることに感動を覚えることもある。

それでも見えないものはヒューマンスキルによって何とかしようとする。これが二つ目だ。例えば、マネジャーが部下に対して何か命じるときに、意識や態度に気をつけてコミュニケーションをとったり、自発性を重視して考えさせたりすることは大きな進歩である。

ただ、これらがマネジメントかといえば微妙で、管理の範囲ややり方を拡張したものであると感じることが多い。管理とマネジメントは最終目的は同じだが、管理が進歩したものがマネジメントではない。

では、マネジメントとはどういうイメージなのか。


◆クオリティ・マネジメントに見るマネジメントのイメージ

マネジメントのイメージを考える上で興味深いのがクオリティ・マネジメントである。

クオリティは元来、「優れていること」を意味する概念であり、クオリティ・マネジメントとは、製品や技術、生産プロセスのみならず、

・従業員の満足
・顧客の満足
・組織の活性化
・クリエイティブな組織文化
・企業としての社会貢献

などの企業の質的側面を追及するマネジメントである。クオリティ・マネジメントの評価を提供しているベンダーもあるし、顧客満足のように多くの企業が見える化しているが、本質的にはクオリティは見えないものである。

クオリティ・マネジメントが目指しているのは、単に利益を上げることだけでなく、質にこだわるマネジメントである。上に示したすべての項目に共通しているのは、効果を定量的に示すことは難しいが、経験的に企業の成長に深く関係していると認識されていることだ。クオリティ・マネジメントのように見えないものを追求する活動がマネジメントである。


◆プロジェクトの「マネジメント」とは

プロジェクトマネジメントの世界でいえば、PMBOK(R)のマネジメントが目指しているのはクオリティ・マネジメントである。成果物や中間成果物の品質を管理することはもちろんだが、単にそれだけではなくコミュニケーションをはじめとするさまざまな活動のクオリティをマネジメントすることがPMBOK(R)の存在目的になっている。

上のクオリティ・マネジメントになぞらえて書くと、PMBOK(R)が目指しているのは、

・メンバーの満足
・ステークホルダーの満足
・プロジェクトの活性化
・クリエイティブなプロジェクト文化
・プロジェクトとしての経営貢献と社会貢献

といったところだ(ただし、知識エリアでいうところの品質マネジメントは成果物の品質管理の話で、PMBOK(R)のマネジメント全体として実現しようとしている)。

ところが、日本のPMBOK(R)の適用を見ているとなかなか成果物の品質の管理の域を出ることができない企業が多い。つまり、管理からマネジメントに変われない。何故だろうか。これが今回のPMスタイル考のテーマである。


◆顧客満足度を例にとって考えてみる

例えば顧客満足度でこの問題を考えてみよう。顧客満足度調査を行いながら、顧客満足を上げるためにはどうすればよいのだろうかという課題で悩んでいる企業が多い。これは顧客満足度の調査(の分析)原因があると考えられる。

以下はある製品の顧客満足度アンケートの例である。

Q1:あなたは、〇〇(製品名)をどこでお知りになりましたか?
Q2:通常、どのくらいの頻度で〇〇を購入しますか?
Q3:今回〇〇を購入した理由は何ですか?(複数選択可)
Q4:他社の商品と比較し、〇〇の価格についてはどうですか?
Q5:他社の商品と比較し、〇〇の品質についてはどうですか?
Q6:〇〇に対して総合的にどのくらい満足していますか?
Q7:Q6でそのように回答した理由をお聞かせください
Q8:〇〇に対してご意見・ご要望がありましたらご自由にお書きください

典型的な顧客満足度計測のアンケートだと思うが、これで集まったデータをどのように分析すれば、現製品に対しても、将来製品に対しても顧客満足を向上させる有効な施策が出てのだろうか。

このアンケートの項目について、Q4、Q5は目に見える範囲の話であり、望ましくないという結果が多ければ改善できる。ポイントはQ6だが、これが顧客満足度を表現している。ここで、価格とか品質とかいった目に見えるものを超えて何かを見つけようとしている。

企業によっては、この項目を結果として平均値で顧客満足度としている。これでは、顧客満足の状況は分かっても、価格と品質以外の向上策には結びつかない。結びつけるには、総合的な満足度とその理由を分析し、顧客満足を下げている要因を分析し、突き止めていく必要がある。

難しいのは、Q7について顧客が述べることはあくまでも具体的な指摘だということで、それをそのまま受け止めるだけでは不十分だ。指摘の本質がどこにあるかを考えなくては分析にならない。

ここにコンセプチュアルな思考が必要な理由がある。

例えば、価格は高い、品質もイマイチだと答えた人が、満足度が高くその理由として自分のニーズに適していたからと答えた場合、どういう情報を得るかである。この場合、顧客満足という概念の具体的な評価項目を、価格と品質に置いただけでは不十分である。そこで、何を見つけることができるかは、もう一度、顧客満足という概念に戻って、そこから具体化が適切にできるかどうかにかかっている。

これによって定量化できない問題を見つけることができ、結果として顧客満足度を活用したマネジメントができる。これはクオリティ・マネジメントの他の要素に対しても同様である。


◆マネジメントにおけるコンセプチュアル思考のポイント

一般論として、クオリティ・マネジメントだけではなく、マネジメントにはコンセプチュアルな思考をすることが不可欠であるが、そのポイントになるのは以下のようなことである。

・主観を重視した方針の決定
・抽象的な方策考察と具体的な行動の決定
・大局的視点による現場と経営方針の擦り合わせ
・既存の前提条件の見直し
・顧客や社外ステークホルダーの概念的理解

ぜひ、このような視点からマネジメントにコンセプチュアルな思考を取り入れ、管理から脱却してほしい。


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          「イノベーションを生み出す力
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  【カリキュラム】                     
 1.コンセプチュアルではない組織の問題点
  ・個人レベルの問題点
  ・チームレベルの問題点
  ・組織レベルの問題点
 2.コンセプチュアルなマネジメントのポイント
  2.1 質問型の組織を創る
  2.2 コンセプチュアルな組織活動のプラニング
  2.3 ステークホルダーへのコンセプチュアルな対応
  2.4 コンセプチュアルな人材育成
  2.5 コンセプチュアルな組織文化の構築
 3.コンセプチュアルなマネジメントの目標
 4.コンセプチュアルマネジメントでコンセプチュアルな組織を創る仕組みワークショップ
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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「プロジェクト&イノベーション(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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