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第109話:システムについて考える(2015/12/10)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人



著者は30年前にシステム工学科という学科を出ましたが、システムという言葉のイメージはずいぶん変わってきたように思います。当時はシステム工学科には4つのゼミがあり、システム理論、メカトロ、制御、情報の4つでした。

今はシステムというと情報システムをイメージする人が多いように思いますが、本来システムは、さまざまな要素が組み合わさったものです。モノだけではなく、組織や人なども組み合わさってシステムになります。その組み合わせにITが不可欠なため、このようなイメージになってきたものと考えられます。

ところが、面白いことに、最近、またシステムが本来のイメージに変わりつつあります。その原因になっているのは、おそらく、IoTのような技術です。これまではモノとITは別でしたが、IoTによってモノとITが一体化してきました。

このようになってくると、システムをシステムとして認識しておかないとビジネスもマネジメントもうまくいきません。今回はこの問題を取り上げてみたいと思います。


◆日本人はシステムが苦手

日本人はシステムが苦手だと言われます。上に述べたような経緯もあって、ITが苦手だというのもあるのでしょうが、やはり、本質的にシステムは苦手なように思えます。

この10年、事業や商品、製品を展開するのにエコシステムが一般的になってきました。たとえば、この10年で最大のヒット商品であるiPhoneを考えてみればよくわかります。iPhoneはエコシステムをうまく作っています。iPhoneという商品自体も素晴らしいものですが、そこにはソフトウエアだけではなく、さまざまなハードウエアを付加してiPhoneをより素晴らしい商品として活用できるようにしています。それは、アップル自身が行っているわけではなく、さまざまな企業が提供しており、アップルはそれを可能にする環境を提供しています。その結果、iPhoneはアップルだけではなく、ソフトウエアベンダー、ハードウエアベンダーが協力して作られる商品になっているわけです。これがエコシステムです。

ところが日本のメーカーはすべてを自分たちの商品の中に入れてしまいます。すべてを最適化し、商品として最適なものを実現し、商品として出します。そのため、商品の本来の用途に対しては非常にクオリティの高いものを実現できます。ただし、クローズです。

日本製品は品質が高いのはこのクローズ性に依存している部分が多々あります。


◆なぜ、システムとして考えられないのか

なぜ、こういう発想になるかというと、一つは責任感の強さだと思われます。自分たちが提供する商品は自分たちがコントロールし、完全なものを提供したいと思っている人が多いのではないかと思われます。

そして、もう一つの原因であると思われるのがシステムが苦手だということです。

システムにするのがよいのかどうかという議論はともかく、IoTによってすべての要素にITが入ってくると、オープンな環境で要素間が結びつき、機能するようになるため、これまでやってきたようにすべてを自己完結するということはだんだん、難しくなってくると思われます。このような状況にどう立ち向かっていけばよいのでしょうか?


◆チームとワーキンググループ

話は変わりますが、日本人の苦手なものにチームがあると言われます。ジョン・カッツェンバック博士によると、チームとワーキンググループは違うという指摘があります。

ワーキンググループは課題(スコープ)を最初に分けてしまい、分担を決めて、できるだけ、お互いの担当領域には足を踏み込まないように仕事を進めていくやり方です。

これに対して、チームは、専門性や経験などに基づいてある程度の分担を決めますが、基本的にはメンバーの判断で、成果を達成するために必要な仕事をやっていくようなやり方です。

この区別から分かるように、チームでは構成メンバー全員が活動全体に対するリーダーシップを持ちますが、ワーキンググループでは全体に対してリーダーシップを持つのはワーキンググループを統括するリーダーだけです。

日本人(日本企業)の仕事の仕方というのは大抵はワーキンググループによるものです。これが日本人はチームが苦手であると言っている人の根拠ですが、まあ、当たっているといえるでしょう。


◆チームとシステム

さて、なぜチームとワーキンググループの話をしたかというと、要素間が自由に組み合わせを行い、機能を構成していくシステムを作るにはチームが不可欠だからです。言い換えると、システムを作れるようになるには、チームとして活動できるようになることが不可欠だと思われます。

なぜ、チームではなくてはならないかというと、システムというのは目に見える要素だけではないからです。つまり、

目に見えるものと見えないものが結びついたのがシステムである

からです。日本企業がワーキンググループで仕事をできている理由は、目に見えるものだけを対象にして仕事をするからですし、上に述べたような商品の作り方をする分には、それが可能になります。

ところが、システムには目に見えない部分があります。たとえば、使い勝手というのは見える化しようとしてもできません。ある商品に別の商品を組み合せて、新しい製品を作り上げていくのであれば、機能やインタフェースなどは見える化できますが、使い勝手は見える化するのは難しく、目標設定は難しいので、結局、チーム的なコミュニケーションを繰り返していくしかありません。

こういったことが、見えるものと見えないものを結びづけていくシステムでは常に起こるわけです。その意味で、システムを作れるようになるには、まず、ワーキンググループではなく、チームで活動できるようになる必要があると思われます。

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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「コンセプチュアル・マネジメント(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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