◆プロジェクトマネジメントとプロダクトマネジメント
プロジェクトマネジメントというと、基本的な認識はオペレーションのマネジメントであり、コスト、時間、品質のバランス、つまり、スコープが管理の対象になります。言い換えると、できるだけ安く、速く、良いものを作ることが目的になります。
日本では15年くらい前にプロジェクトマネジメントが注目されるようになり、IT業界、製薬業界、製造業を中心に普及してきました。学んだ先は米国で、米国プロジェクトマネジメント協会(PMI)の開発したPMBOK(R)の導入を中心に行われてきました。
しかし、米国には製品開発プロジェクトに関してはもう一つのマネジメントがありました。それはプロダクトマネジメントと呼ばれるものです。米国ではプロダクトマネジメントで価値のマネジメントが行われ、プロジェクトマネジメントでその実現オペレーションのマネジメントが行われていました。もっと一般的にいえば、戦略マネジメントがあり、そのオペレーションをマネジメントするのがプロジェクトマネジメントでした。
にも関わらず、日本はプロジェクトマネジメントの部分だけを導入しました。なぜ、このようになったのかと考えてみると、日本でプロジェクトマネジメントが注目されるようになってきた時代にはまだ、価値や戦略のマネジメントが一般化しておらず、欧米の模倣でやっていた企業が多かったため、実現オペレーションのマネジメントがより重要だったからだと思われます。
◆プロジェクトに必要なマネジメントとは
それから15年くらいの時間が経つわけでですが、イノベーションブームが起こっていることからも分かるように、オリジナルな戦略や価値、製品やサービスの必要性が高まってきて、プロジェクトのマネジメントとして、プロジェクトマネジメントだけでは不十分になってきました。プロダクトマネジメントや戦略マネジメントが不可欠になってきたわけです。
プロダクトマネジメントはプロジェクトが生み出す価値を決めます。大抵の場合、価値を生み出すことはプロジェクトの目的になります。プロダクトマネジメントは、
「製品、製品ライン、あるいは製品ポートフォリオのレベルでのビジネスマネジメント」
と定義できます。上流では、製品ポートフォリオマネジメント、新製品開発監理、市場投入などが行われ、下流ではライフサイクル管理、ブランド管理、マーケティングなどの活動が行われます。
ここで注目しておきたいのは、顧客価値です。日本では製品開発マネジメントという分野がありますが、これはどのようなプロダクトをポートフォリオに置くかから始まるマネジメントです。これに対して、プロダクトマネジメントは、自社のプロダクトの価値と顧客価値の関係づけを行うという位置づけにあります。逆にいえば、自社製品の価値しか考えないマネジメントはプロダクトマネジメントとは言えませんので、注意しておく必要があります。
一方で、戦略マネジメントは
「戦略の実行によるマネジメント」
と定義でき、プロダクトマネジメントの上位に位置するものです。具体的には、戦略策定、戦略ゴール策定、戦略ポーフォリオマネジメント、プログラムマネジメントなどが行われます。
さらに、マネジメントという観点からは、戦略マネジメントやプロダクトマネジメントで生み出されるプロジェクトのプロジェクトマネジメントが必要になるわけです。
◆誰がマネジメントをするのか
これらのマネジメントがプロジェクトのマネジメントとして必要になってくるわけですが、組織的にプロジェクトを実施している場合、誰が行うのかという問題があります。一般的にはプロダクトマネジメントはプロダクトマネジャー、戦略マネジメントはラインマネジャー(部門マネジャー)が行います。
プロダクトマネジャーは
「特定の製品ラインやブランド、サービスについて、既存の製品の管理やマーケティングを行ったり、新製品開発の役割を果たす人」
で、一般的にはラインマネジャー以外が担うことが多いようです。これに対して、ラインマネジャーは
「戦略を業務に展開し、プログラムとして推進していく人」
です。プロジェクトマネジメントの立場からは、戦略マネジメントを行うラインマネジャーはプロジェクトスポンサーと呼ばれますが、このような構造になっていることを考えるとその理由がよく分かると思います。
これらのマネジャーに加えて、さらに、プロジェクトマネジャー(プログラムマネジャー)が加わることがあります。プロジェクトマネジャーは戦略マネジメントにおけるプログラムの中のプロジェクト(あるいはプログラムの一部)、プロダクトマネジメントの中のマーケティングや新製品開発のプロジェクトなどのマネジメントを担う役割です。
このようにプロジェクトに注目してみると、それぞれのプロジェクトに部門マネジャー、プロダクトマネジャー、プロジェクトマネジャーが協力してマネジメントを行い、プロジェクトを実施しているわけです。
◆戦略、価値のマネジメントと実現のマネジメント
最後に、もう一度、価値と価値実現の話に戻りますと、部門マネジャーやプロダクトマネジャーが戦略や価値をマネジメントします。具体的には実現したい戦略や価値を決め、その実現を新製品開発プロジェクトやその他のプロジェクト(プログラム)に落としていきます。その上で、そのプロジェクトに対して、プロジェクトマネジャーが価値実現のためのQCDを決定し、実行していくことになります。
プロジェクトのマネジメントにおいて、日本でもプロダクトマネジメントが確立されてきたことによって、プロジェクトマネジメントは本来のオペレーションのマネジメントの位置に収まりつつあります。同時に、そろそろ、連携を考えなくてはならない時期に来ているのかもしれません。
◆関連するセミナーを開催します
この講座は、コンセプチュアル思考について学ぶ講座です。
━【開催概要】━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆コンセプチュアル思考のポイントと活用~VUCA時代の思考法 ◆7PDU's
日時・場所:【Zoom】2024年 11月 22日(金)9:30-17:30(9:20入室可)
【Zoomハーフ】2024年 12月 11日(水)13:00-17:00+3時間
【Zoomナイト】2025年 01月 15日(水)17日(金) 19:00-21:00+3時間
※Zoomによるオンライン開催です
※ナイトセミナーは、2日間です
※ハーフセミナー、ナイトセミナーは、事前学習が3時間あります
※少人数、双方向にて、個人ワーク、ディスカッションを行います
講師:鈴木道代(株式会社プロジェクトマネジメントオフィス,PMP,PMS)
詳細・お申込 https://pmstyle.biz/smn/conceptual_thinking.htm
主催 プロジェクトマネジメントオフィス、PMAJ共催
※Youtube関連動画「コンセプチュアルスキルとは(前半)」「コンセプチュアルスキルで行動が変わる」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【カリキュラム】
1.コンセプチュアル思考のイメージ(アイスブレーク、講義)
2.コンセプチュアル思考を実践してみる(個人ワーク)
3.コンセプチュアル思考の原理を学ぶ(ワークの振返り、講義)
4.コンセプチュアル思考の実際(講義)
5.コンセプチュアル思考で変化に対応する
(個人ワーク、グループディスカッション)
6.コンセプチュアル思考で不確実性に対応する
(個人ワーク、グループディスカッション)
7.コンセプチュアル思考を応用した活動(まとめ)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
入門編はこちらです。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆コンセプチュアルスキル入門~本質を見極め、行動するスキル ◆(7PDU's)
日時・場所:【Zoom】2025年 01月 24日(金) 9:30-17:30(9:20入室可)
【Zoomハーフ】2025年 02月 15日(土 )13:00-17:00+3時間
【Zoomナイト】2025年 01月 08日(水),10日(金) 19:00-21:00+3時間
※Zoomによるオンライン開催です
※ナイトセミナーは、2日間です
※ハーフセミナー、ナイトセミナーは、事前学習が3時間あります。
※少人数、双方向にて、演習、ディスカッションを行います
講師:鈴木道代(株式会社プロジェクトマネジメントオフィス,PMP,PMS)
詳細・お申込 https://pmstyle.biz/smn/conceptual_skill.htm
主催:プロジェクトマネジメントオフィス、PMAJ共催
※Youtube関連動画「コンセプチュアルスキルとは(前半)」「コンセプチュアルスキルで行動が変わる」
「プロジェクトマネジャーのためのシステム思考」
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
【カリキュラム】
1.コンセプチュアルスキルとは
2.本質を見極める
3.洞察力を高める
4.応用力を高める
5.コンセプチュアルスキルでこれからの行動が変わる~ケーススタディ
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「コンセプチュアル・マネジメント(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。
本連載は、PMstyleメールマガジン購読にて、最新記事を読むことができます。