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第105話:スキルアプローチ考〜マネジャーは人で評価されるべきなのか(2015/09/25)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人


◆ロバート・カッツが示したスキルアプローチ

ロバート・カッツのコンセプチュアルスキルについて書いた有名は論文のタイトルをご存知でしょうか?

「スキル・アプローチによる優秀な管理者への道」 Harvard Business Review(1955)

という論文です。ここでスキルアプローチという言葉が出てきます。今回のコラムはこの話をしたいと思います。

この論文のリードに以下のように書かれています。

優秀なマネジャーとは、どのような人かではなく、何ができるかによって判定することが求められる

今、考えるとさほど違和感はないと思いますが、もう60年前のことですから、かなり、画期的な主張であったことが分かると思います。マネジャーは何かができるより、まず人物だと考えられていた時代です。

ただし、部長や事業部長になっても、業務スキル(テクニカルスキル)が役に立つわけではありません。何か別のスキルが必要だと考えて、発見したのがコンセプチュアルスキルだというわけです。

言い換えると、テクニカルスキル、ヒューマンスキルだけだったスキルにコンセプチュアルスキルを加えて初めてスキルアプローチが成り立つといってもよいでしょう。


◆コンセプチュアル・スキルの定義

ちなみに、ロバート・カッツのコンセプチュアルスキルの定義はいろいろな人が焼き直していますが、上の論文では

「企業を総合的に捉えることのできる能力」

だと定義しており、その条件として

(1)組織の諸機能がいかに相互に依存しあっているか、また、その内のどれか1つが変化したとき、どのように全体に影響が及ぶかを認識すること

(2)個別の事業が、産業、地域社会、さらには国全体の政治的、社会的、経済的な力とどのように関係しているかを明確に描けること

(3)このような相互関係を認識し、どのような状況にあっても重要な要素を識別することができれば、管理者は組織全体の総体的福祉を推進するように行動することができる

などが必要だとされています。


◆マネジャーの仕事

その後、ピーター・ドラッカーによってマネジャーの仕事が体系化されます。ドラッカーが示したマネジャー(リーダー)の仕事は

・目標を設定する
・組織をつくり仕事を割り当てる
・動機づけを行い、コミュニケーションを図る
・仕事の評価測定を行う
・人材を育成する

などです。そして、これらを行う「マネジメントスキル」というスキルコンセプトが出てきました。

ロバート・カッツが今、もう一度、スキル体系を作ったら、コンセプチュアルスキルのところにマネジメントスキルという形で入るかもしれません。あるいは、マネジメントスキルはマネジャーのテクニカルスキルだと考えることもできるでしょう。

まあ、いずれにしてもマネジャーの評価はスキルで行うことを示したことがロバート・カッツの最大の貢献だったのかもしれませんね。

実は、この議論は今でも続いています。そうです。リーダーとマネジャーはどう違うのかという議論です。リーダーは人、マネジャーはスキルというのが一般的な認識だと思います。もっと正確にいえば、リーダーシップは人、マネジメントはスキルといった方がいいでしょう。


◆日本はどうか

欧米ではマネジャーにはスキルが必要だという認識は一般的ですが、日本ではちょっと違うように感じます。いまだに、マネジャーの評価は人物ですべきだと考えている人が多いように思います。

このような意見の持ち主と話をしていると面白いことに気づかされます。一つは(マネジャーの)スキルに対する認識です。大抵の人は、ポートフォリオとか、SWOTとかツール系のスキルを連想するようです。そして、モチベーションやコミュニケーションなどのヒューマンスキルは「人」だと考える傾向があります。もちろん、ポートフォリオがマネジャーの必要スキルだというなら、マネジャーにスキルは要らないというのは大賛成です。

でも、そもそも、マネジャーに必要なスキルはそんなものではありません。カッツの定義したコンセプチュアルスキルをみても、ドラッカーのマネジャーの仕事をみても、明らかです。

ポートフォリオでいえば、ポートフォリオをみて、いろいろなことを考え、大局的な意思決定をするところがマネジャーのスキルなのです。

また、モチベーションを与えることやコミュニケーションをうまく取ることがスキルであることはいうまでもありません。

もう一つは、マネジャーは成果を出してナンボだと思っている人が多いということです。従って何ができるかは問題ではない。

これは「できる」という意味にもよりますが、マネジメントに対する認識不足だと思います。マネジメント手法はもっと現実的な後利益のあるものです。そのよい例がプロジェクトマネジメントです。プロジェクトマネジメントの適用を巡ってもいろいろな議論がなされましたが、結局、手法を適用したプロジェクトの成功率は明らかに高くなっています。

つまり、マネジャーにとってスキルは成功を保証するものではないが、確実に成功確率を上げるものです。

そのように考えると、もうそろそろ、マネジャーを何ができるかで評価するというスキルアプローチを受け入れてもよいと思われます。


◆これからは人物も重要になる

一方で、欧米では人を評価するアプローチというのが徐々ですが、見直されています。直接の原因は経営者の不祥事が増え、経営の中でコンプライアンスが重視されるようになったこと、それから持続的な経営が重視されるようになってきたことだと思います。

コンプライアンスやサスティナビリティを求めると、スキルだけではどうしても達成しがたい部分があり、人物とスキルとならざるを得ないのだろうと思います。よく考えてみれば、日本企業が人物に拘るのもこのあたりのことがあったからで、その意味で日本は一周進んでいたのかもしれません。

いずれにしても、これからはスキルと人の両方が求められるようになるのは、間違いないでしょう。

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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「プロジェクト&イノベーション(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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