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【PMOコラム49】オポチュニティを適切に設定する(2008.03.24)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人


◆ビジネスケースのもう一つの役割

前回、PMOの導入や、機能強化(政策立案)に当たっては、承認するに至る理由を論理的かつ事実に基づいて説明するドキュメントであるビジネスケースの作成をするのがよいというところで終わった。

ある読者の方からビジネスケースは評価にも使うのではないかという質問があった。その通りである。論点を整理しておくと、

(1)ビジネスケースを作ることによって、各方面のステークホルダに対するバランスをとったPMOプラニングができる
(2)効果の評価基準はビジネスケースで検討されたものとなり、ビジネスケースの内容を実現することに集中し、それが結果としてPMOの活動の質を高める

の2つがビジネスケースの導入に際してのポイントであるといえる。


◆基本ビジネスケース
ビジネスケースには、エグゼクティブサマリー的な位置づけで作成される基本ビジネスケースと、文字通り、ビジネスケースを記述する詳細ビジネスケースがある。

基本ビジネスケースは

1.現在のプロジェクトマネジメントの概要
2.主要なプロジェクトマネジメントの課題解決
3.PMOによる機会
4.主要なアクションと責任

の4つについて明確にすることを目的に作成されるケースが多い。この中でもっとも重要な要素は、3.のPMOによるオポチュニティ、および、4.のアクションと責任である。
ここで特に重要なのは、オポチュニティに注目することである。PMOの展開を問題解決を中心にして行うと、問題を解決すること自体に注意が行き、その問題が解決されるとどのようなメリットがあるのかがわからないケースが少なくない。

こういう言い方だとわかりにくいかもしれないないが、もう少し、続ける。問題だと「思っている」背景にあるのが従来の価値観であり、プロジェクトマネジメントの導入目的が従来の価値観の変革であるというケースが少なくないからだ。


◆オポチュニティの設定が重要

たとえば、プロジェクトの状況が上位管理者によく理解されていないので、これをなんとかしようとしたいということで、PMOが動くケースがある。この場合、報告を詳細にし、また、説明の機会をつくり、コミュニケーションをよくするといった施策をとることがよくある。

よいか、悪いかということになると、悪いとは言い切れない部分があるが、効果的、あるいはコストパフォーマンスが高いかとなると、コストパフォーマンスが高い方法ではない。このようなケースでコストパフォーマンスの最も高い方法は、管理を重くすることではなく、管理が現場に出てきて情報収集やコミュニケーションを行い、管理そのものは軽くすることである。

このような施策の背景には、組織一体となったプロジェクトマネジメントの実現といったものがあるケースが多い。だとすると、明らかにオポチュニティの設定が不適切である。たとえば、オポチュニティとして、「上位管理者のプロジェクトの把握」などを設定しているケースが多いのだ。プロジェクトマネジャーに丸投げ組織の上位管理者がプロジェクトを把握すれば動くというのは考えにくい。

この場合、たとえば、「上位管理者がプロジェクトマネジメントのために動けるようにする」といったオポチュニティを設定した上で、問題解決を行うべきなのだ。

ここがポイントになる。ちなみに、上に悪いとは言い切れないと書いたのは、現実にこのようなオポチュニティの設定が可能な組織であればこんなことをする必要はないことが多く、必要がある組織でこれをやるのは「非現実」的なくらい難しいことが多い。ゆえに、過剰管理やむなしというところかなと思うからだ。


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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「コンセプチュアル・マネジメント(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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