◆詳細ビジネスケースに記述する内容
前回は、基本ビジネスケースに書くべき内容として、
1.現在のプロジェクトマネジメントの概要
2.主要なプロジェクトマネジメントの課題解決
3.PMOによる機会
4.主要なアクションと責任
の4つがあることと、この中で特にポイントとなるオポチュニティ(機会)の設定の考え方について説明した。今回は、実務ベースで作る詳細ビジネスケースについて説明する。
一般的には、詳細ビジネスケースは基本ビジネスケースを受けてつくられることが多い。PMOの設立を一つのプロジェクトとしてみるならば、基本ビジネスケースがプロジェクト憲章であり、詳細ビジネスケースはプロジェクト計画であると考えると位置づけとしては近いだろう。
まず、詳細ビジネスケースとして書く必要のある項目は以下の7つである。
1.ビジネスケースの作成に当たっての前提
2.課題解決と機会の概要
3.PMOの役割、責任、組織
4.初期のPMOの目標と評価指標
5.予想されるコストと期待されるリターン
6.スタートアップロードマップ
7.PMOの承認
◆まずは、基本ビジネスケースで定義された前提の整理
1.の前提は基本ビジネスケースで書かれていることになる。つまり、基本ビジネスケースで設定された機会を実現するために、アクションと責任に基づきPMOの設立を進めていくことにより、プロジェクトマネジメントの問題や課題を解消して「いける」ことが前提にある。これはある意味で仮説であり、この仮説が正しいことが前提になる。この部分をまず、明確にすることが詳細ビジネスケースを作成するためのスタートになり、それらは、2.の課題解決と機会の概要ということで整理される。
その上で、詳細ビジネスケースではそれをどのようなPMOとして実現するかを計画することになる。
◆役割、責任、遂行組織
ここでまず、明確にすべきことは3つある。PMOの役割、責任、および、その遂行組織である。この中で簡単なようで意外と難しいのは役割である。たとえば、人材育成という活動があるが、この活動の背景になるのはプロジェクトマネジメントの普及に貢献する人材を開発する、あるいは、調達するという役割だろう。ところが、多くの組織ではこれを「プロジェクトマネジャーを育成する」役割という風においてしまっている。
一般的な傾向としては、直接的な成果の見える活動を役割として設定することが多い。すると活動のバランスが悪くなる。人材の問題であれば、役割は上に書いたような設定をすることが望ましい。すると、プロジェクトマネジャーのスキル不足だといった問題の設定はしにくくなる。
たとえば、「プロジェクトマネジャーがプロジェクトマネジメントで活躍するにはどうすればよいか」という課題をしてとらえ、この課題解決策を設定し、優先順位をつけて行っていく。この際に、やりやすいことからやらずに、必要なことからやっていく。すると、たとえば、
(1)プロジェクトに関する責任の整理と分担の明確化
(2)上位管理者の啓蒙
(3)プロジェクトマネジャーのスキル開発
(4)縦のコミュニケーションの仕組み確立
(5)メンバーの啓蒙
といったものになり、プロジェクトマネジャーのスキル開発がトップに来ることはあまりない。
◆役割のとらえ方がPMO設計の本質
要は問題のとらえ方ということなのだが、これが重要な活動は少なくない。もう一つの例は標準化である。標準化をどういう位置づけてやっているかだ。多くの組織は標準化をプロセスの問題としてやっている。が、プロセスの問題として取り組んでいくと、なかなか難しい活動でもある。この後の項目にも絡んでくるが、プロセスの問題としてとらえるということは、どのくらい実行されているかというメトリクス(指標)を設定することになるが、本当に意味があるのかという問題に直面するのだ。
このコラムでも何度も述べているが、標準というのは「その通りにやればうまくいく」ことが保障されたやり方である。もし、そのような標準を作っているのであれば、プロセスの問題として取り組んでよいが、ほとんどの組織は確信を持ってやっているわけではない。
その意味でいえば、標準化として称してやっていることは、ナレッジマネジメントや人材育成などの活動の一部として行うことが妥当であるし、評価も適切にできることが多い。この点をよく踏まえておく必要がある。
4.以降については、次回。
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好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「コンセプチュアル・マネジメント(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。
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