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【PMOコラム47】PMOのバリューは何か(2)〜人材育成による価値創出(2008.03.03)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人


◆プロマネ育成がバリューにならない理由

前回は、戦略目的で設立されたPMOのバリューについて、品質マネジメントを目的に設立された場合について考えてみた。品質マネジメントと並んで戦略上重要なのは、プロジェクトマネジャーの育成を目的にしているケースである。

一般的にいえば、経営は人的資源に応じて行う。たとえば、SIのような受注プロジェクトであれば売上はプロジェクトマネジャーの数に依存する。製品開発型のプロジェクトであれば、製品ラインナップの充実がすべてプロジェクトマネジャー数に依存するとは言い難いが、大きな影響を与える一つの要素であることは間違いなく、間接的ではあるが、売上がプロジェクトマネジャーの数に深く関係するという関係がある。

そのように考えると、PMOのプロジェクトマネジャーの育成機能は戦略実現上の生命線であり、単なる付加価値以上のものであると考えられる。

ただ、現実を考えると、この活動にそんなにバリューを認めている企業はそんなに多くない。多くの企業が形を作ることには拘っているが、本音のところでプロジェクトマネジメントの価値そのものをそんなに認めていないところにあるのではと思われる。


◆「育つ」から、「育てる」に

このこと自体も大きな問題なのだが、ここでまず、考えるべきことは、人材育成におけるプロジェクトマネジャーの質の問題ではないだろうか?

確かに、プロフェッショナル認定制度において上位のクラスのプロジェクトマネジャーをどれだけ育成できるかという点においている企業は多いが、このような評価は実績ベースのところが多く、育てているというより、育っているという色彩が強く、それをPMOの育成の成果だとみるのは無理があるのかもしれない。

実際にこの認識はある程度正しい。初期教育はきちんとするようになってきたし、PMP(R)のようにCDP(Career Development Program/Plan )の仕組みを持つ資格の取得も推奨するようになってきた。しかし、プロジェクトマネジャーの育成というと、キャリア初期の部分しかやっていないイメージが強い。あとは、育成ではなく、経験で育っていくという発想が強いためだ。

この部分に切り込んでいかないと人材育成におけるPMOの価値は認められにくいだろう。

◆キャリア制度を見直し、経験とスキルのバランスをとる

では、何をすればよいか?キャリア制度をもう少し、経験と知識・スキルのバランスがとれたものに見直し、プロジェクトマネジャーのアサインも含めて、PMOが影響力を持つようにするというのが答えではないかと思う。

そのためには、もう少し、プロジェクトマネジャーの人材像の構築を真剣にすべきである。プロジェクトマネジメントのとらえ方にもよるのだと思うが、普遍性のあるプロジェクトマネジャー像があるように考えているようだ。確かに、どこの企業でも、どこの組織でも通用するプロジェクトマネジャーというのはいる。その意味で、普遍性のあるプロジェクトマネジャー像というのはある。一言でいってしまえば、スーパープロジェクトマネジャーだ。

しかし、スーパープロジェクトマネジャーがその組織のプロジェクトマネジャーの人材像になることはほとんどないといってよい。そのような像を示したところで、そこに近づけるのはせいぜい全プロジェクトマネジャーの20%だろう。すると、その像を前提にした上位マネジメントは到底できない(多くの組織は今、これに近いことをやっていて、戦略の実行不全に陥りかけている)。


◆戦略実行の即戦力を育て、バリューの創出を!

必要なプロジェクトマネジャー人材像は、戦略の実行の際の戦術の組み立てのベースになる人材像である。もちろん、ひとの問題なので、現状で考える必要はない。組織としてある程度のストレッチされた目標でよいが、理想像ではない。ここに理想像を置いてしまうと、半分以上のプロジェクトマネジャーはその理想像に届く前にプロジェクトマネジャーのキャリアを終えてしまうだろうし、残りの30%の人も長期計画(5年)くらいのスパンでそこに手が届くとは思えない。

人材育成とは戦略に左右されず、長期計画が次のフェーズに移っても継続的に行われるべきだという意見もあるだろうが、そんな会社は滅多にない。株主指向が強い会社だと、中計ベースで人材育成計画モリセットされるし、そもそも、人材育成計画は中計ベースでしか描いていない企業が多い。

そのように考えるとPMOのバリューを上げるには、理想形ではなく、戦略実行の即戦力に成りうる人材像を作り上げ、戦略実行にきちんとコミットするところから始めるべきだろう。

それによってはじめてどれだけのプロジェクトマネジャーを育成できたかがバリューになるだろう。


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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「コンセプチュアル・マネジメント(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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