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【PMOコラム46】PMOのバリューは何か(1)〜品質マネジメントにおける価値(2008.02.25)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人


◆PMOの活動と設立パターン

PMOの活動には
(1)プロジェクトマネジメント実行の仕組み(標準)を作る
(2)コンサルティングを行う
(3)PMナレッジマネジメントをする
(4)人材育成を行う
(5)プロジェクトマネジメントの監査(レビュー)をする
(6)プロジェクトマネジメントの一部を分担する
などさまざまなものがあるが、PMOの提供するバリューというのはなんだろうか?

PMOリーダー養成講座コンサルティングで多くのプロジェクトマネジメントオフィスのマネジャーやスタッフの方とお会いするが、この問題で悩む人は多い。

価値は別にして最近感じているのは、PMOを作る経緯にいくつかのパターンがあるということだ。ひとつは戦略的な目的を持ってつくられるPMO、二つ目は特定の問題解決を目的につくられるPMO、三つ目はプロジェクトマネジメントがうまくいかないという漠然とした目的でつくられるPMO、四つ目は思いつきでつくられるPMOだ。

バリューはタイプによって異なるし、バリューをもたらすことができていないとすれば、その理由も異なるので、ひとつずつ見ていくことにしよう。


◆戦略的な位置づけをされたPMO〜特に品質マネジメント

ひとつ目は、典型的にはプロジェクトマネジメントに対して経営的な戦略があり、その戦略目標を達成するために構築されているPMOである。たとえば、「製品品質を向上させることによって収益性を高める」という戦略があり、そのためにPMOが構築されたようなケースである。初期につくられたPMOはこれが多かったように思う。

ただし、このタイプの中で、品質を戦略目標にしたPMOは、従来の品質部門が提供してきた以上の価値をほとんどもたらせていないのが現実だ。製品品質を向上させることの意味付けがしっかりとなされていないためだ。

品質保証部門や品質管理部門ではなく、PMOである理由は、コストと納期と品質のバランスの最適化にある。これは、所定の予算と納期で、以下に完璧な品質を達成するかという問題とは本質的に異なる問題である。


◆ゼロディフェクトは本当に正しいのか?

品質部門の方がこの記事を読んでいると怒られるかもしれないが、恐れずにいえば、従来の(日本企業の製造業の)品質マネジメントはゼロディフェクト(Zero Defect)に最適点を置いている。ところが、多くの製造業ではこの図式が成り立たなくなってきている。にもかかわらず、そのままやっている企業が少なくない。もっと悲惨なのはソフトウエア企業だ。その図式をそのまま引き継いでいる。品質部門は例外なく、ゼロディフェクトを目指した施策をとっているし、自らの存在意義をそこにおいている。いわゆる品質絶対という方針である。

しかし、マイクロソフトやオラクル、あるいはIBMといった米国のソフトウエア企業を見ているとわかるとおり、SIも含めたソフトウエア企業の品質マネジメントの最適点はゼロディフェクトにはない。ここを勘違いしている企業が多い。そのような中で、品質部門からPMOに変化していった理由は品質マネジメントの最適点を変えること以外にはあり得ない。


◆PMOはQCDのバランスに価値をおく

つまり、盲目的にゼロディフェクトを目指すのではなく、コスト、品質、スケジュールをインプットとして、最適な品質ソリューションを与えるというのが品質マネジメントを中心としたPMOに求められるミッションだが、そんな機能を持っているPMOは本当に希少価値である。

このタイプのPMOは、この最適化ができて初めてバリューがでてくる。逆にいえば、いくら頑張ってやっても、品質絶対という方針でやっている限りは明確なバリューをもたらすことができないだろう。

この意味で特に問題視したいのは、コストだ。PMOの活躍により、納期遅れ、予算オーバーのプロジェクトが激減した企業は少なくない。しかし、これはPMOのバリューだとはいえない。いままできちんとやっていかなったにすぎない。顧客満足を維持しながら、コストを如何に節約できるかである。これが上に述べたバランスの意味であり、ここを実現できたPMOはそのコストを節約できた分がバリューになることは明確である。


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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「コンセプチュアル・マネジメント(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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