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【PMOコラム36】続・PMOリーダーに求められるリーダーシップ(2007.11.19)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人


前回、PMOはプロジェクトに対してサーバントリーダーシップを発揮すべきだということを書いたところ、プロジェクト(マネジャー)の召使になれというならまだわかるが、理由が分からいし、イメージが持ちにくいという意見を頂いた。また、別の方からはそれはリーダーシップというよりもプロパガンダではないかという意見も頂いた。さらに、別の方からは、そんなユルイことを言っていないで、強権的なリーダーシップを持つべきではないかという意見を頂いた。まあ、記事としてそれなりに響いたということだろう。

プロパガンダという話はある程度、当たっている部分もあるのだが、本質的には違うと思うので、今回、もう一度、この問題を考えてみたい。


◆サーバントリーダーシップが必要な背景(1)

まず、この話の背景はどこにあるのだろうか?この点から考えてみたい。

この話の背景は2つあると思っている。ひとつは今年の5月7日のコラムに書いた話であるが、PMOはその組織のプロジェクトマネジメントのオーナーシップを持つということだ。つまり、プロジェクトをどのように行うかということは事業組織の戦略の問題だとしても、そのプロジェクトのマネジメントをどのように行うべきであるかについては、PMOは決めるべき立場にいる。

実は、5月7日の記事についても、その後、お会いした人と議論したり、メールでご意見を戴いたりしたが、プロジェクトマネジメントのオーナーシップを持つことと、プロジェクトのオーナーシップを持つことは違う次元の話であることを混乱している人が多い。

プロジェクトのオーナーシップを持つことは、プロジェクトの作業をどのように進めるか、顧客にどのようなスタンスで対応するかといったようなことであり、成果物を生み出すことについて、責任と権限を持つということである。これに対して、プロジェクトマネジメントについてオーナーシップを持つというのは、プロジェクトが責任と権限が果たせるようにするために行う管理(マネジメント)に対して責任と権限を持つということである。これは全く異なるものである。


◆サーバントリーダーシップが必要な背景(2)

もう一つの背景は、プロジェクトマネジメントの導入はマネジメントの変革であるということだ。変革であるので、基本的にはPMOがああしろ、こうしろと言える類の問題ではなく、どうすればよいかを当事者が一番よく知っている。知らないのであれば、考えるべき問題である。

PMOがオーナーシップを持ち、強権的にプロジェクトマネジメントのやり方を決めていくというのであればわかりやすいのだが、PMOとしては

・オーナーシップを持つ
・現場(プロジェクトマネジャー)の意見を重視する

という二律背反を実現しなくてはならない。そこで、ポイントになるのが、「変革」であるということだ。

セミナー「PMOによるプロジェクトマネジメントの定着化のポイントと事例

でも基本コンセプトしているが、プロジェクトマネジメントの定着化は変革マネジメントである。したがって、PMOが細かなやり方を指示していくことは適切とはいえない。むしろ、PMOはプロジェクトマネジメントの方向性、方針、取組のスタンス、導入後のビジョンなどを明確に示し、その範囲で各プロジェクトでプロジェクトマネジャーが工夫したやり方を考える。PMOはプロジェクトマネジャーが実際にそれを実行できるように支援をしていく。そして、うまくいったやり方(プラクティス)を組織に吸い上げていき、調整をしながら、最高のやり方(ベストプラクティス)を作り上げていくことが望まれる。


◆PMOがすべき支援はサーバントリーダーシップを以て可能となる

ただし、プロジェクトマネジャーに一から考えよというのは現実的とはいえない。そこで、プロジェクトマネジャーが「PMOが示したビジョンに対して、マネジメントのやり方を工夫することを支援する」という位置づけで、標準を提供していくことはある意味で不可欠である。

すると、その場合の標準は守らなくてはならないルールという位置づけではなくなる。むしろ、たたき台であり、また、プロジェクトマネジャーたちのこういう風にやっていこうという考えを集約したものになるのだ。その意味で、自己決定であり、プロジェクトマネジメントの導入はスムーズに進んでいくだろう。

このように、決して表にでるわけではなく、といって、裏方だからといって意思決定を逃げるわけでもない。このようなやり方をサーバントリーダーシップという。少しは理解が進んできただろうか?

さて、こういう話をすると違和感がある人がいると思う。そう、組織としてはそんなつもりでプロジェクトマネジメントを入れているわけではない、組織として管理したいのでプロジェクトマネジメントを入れているんだ。プロジェクトマネジャーがレポートをしないというルールをきめたらどうするんだという意見が聞こえてきそうである。

これについては、次回。

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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「コンセプチュアル・マネジメント(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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