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【PMOコラム2】PMOの本質(2006.05.22)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人


◆PMOハンドブック

PMCoE戦略ノートも9回になった。今週は一休みで、PMOコラム。

PMOについては、米国では

Gerard M. Hill「The Complete Project Management Office Handbook

という本が出版されている。

この本、2003年の後半に出版された本であるが、なんと624ページもある大作である。PMOに関する議論が始まったのは1970年台であるので、PMOに関するほぼ30年間の集大成がこの本にまとめられているというわけである。


もちろん、弊社がプロジェクトマネジメントオフィスの機能体系をまとめる際にもこの本は参考にさせて戴いている。


◆PMの系譜

プロジェクトマネジメントには、おそらく3つくらいの発展の系譜がある。

一つはエンジニアリングからの流れである。これは、品質管理などの分野からの発展である。二つ目はオペレーションマネジメントからの発展の流れがある。これは生産管理などからの発展である。この2つは一般的に認識されているが、意外と認識されていないもう一つの系譜があるのではないかと思う。それは(組織)マネジメントからの発展である。成果物が複雑になればなるほど、エンジニアリング的な扱い方が難しくなり、マネジアルアプローチの方が有効になってくる。

これらは視点の違いであり、どの道から上ろうと頂上は同じであるといいたいところであるが、そうはいえない部分がある。価値観の違いはずっと残るように感じている。そこで、どの立場をとるかという話になるのだが、著者はマネジアルアプローチがもっとも効果的だと思っている。そして、マネジアルアプローチからはPMOの強化というのがまず考えられる。


◆PMBOK(R)よりPMO

その意味で、著者はプロジェクトマネジメントを強化したいのであれば、PMBOK(R)のようなプロセスの導入ではなく、まず、PMOを強化すべきだと思っている。その意味で、このハンドブックは非常に貴重な本だと思う。

ただ、このハンドブックは機能について述べたものであるが、これだけでPMOが語れるかという議論がありそうだ。プロジェクトマネジメントでも、知識と行動のギャップというのがあるように、PMOの活動にも知識と行動のギャップがある。


◆PMOの本質

このギャップを埋めるものは

 リーダーシップと支援スキル

であると思われる。これが、PMOの本質ではないかと思う。このような本質を持って、初めて標準化の活動や、監査活動が意味を持ってくる。

PMOのリーダーシップは、プロジェクトマネジメントに対するルールや価値観を組織に導入し、それを学習し、組織における「基本的仮定」になるように昇華させていく源泉になるものである。

もう一つは支援スキルである。組織にプロジェクトマネジメントを定着させ、それを発展させていくためには、必ず、支援が必要になる。支援は指導ではない。

指導はプロジェクトマネジャーやプロジェクトチームの意思決定そのものに対して介入し、その意思決定を正していく行動である。

これに対して支援は、プロジェクトマネジャー、あるいはプロジェクトチームのプロセスに介入し、プロセスを正しい方向に導くことによってプロジェクトマネジメントやプロジェクトをよい方向に導いていくのが支援である。プロセスコンサルテーション、あるいは、今流にいえば、ファシリテーションのスキルである。

この2つの要素を兼ね備えないとPMOはプロジェクトからあまり意識されないお目付け役になる。あるいは上位組織の傀儡のような存在になってしまう。それではその組織のプロジェクトマネジメントは進歩しないだろう。


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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「コンセプチュアル・マネジメント(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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