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第24回 戦略的PMOのPM改善への取り組み(2)〜アセスメント(2006.11.27)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人


◆モグラたたきの限界

プロジェクトマネジメントを成熟させていくスタート地点は現状の能力である。当たり前のように思えるかもしれないが、これは意外と難しい。プロジェクトマネジメントの導入や改善をしていく際によく行うのは自分たちの問題を分析し、その問題を解決する方法を考案したり、他社・他部門の事例を参考にするという一種のベンチマーキングである。

ところが、問題把握が体系的に行われている組織はあまりない。これは品質マネジメントの成熟が相当体系的に行われているのと対象的である。PMOによるプロジェクトマネジメントの問題の把握は主に、プロジェクトマネジャーからのヒヤリングであったり、あるいは、シニアマネジャーからの指摘であったりする。彼らの指摘事項に対応するといった形でプロジェクトマネジメントの改善を進めていっているケースが多い。よくいえば日本企業の強みである現場密着型のやり方だということもできる。

プロジェクトマネジメントにはオペレーショナルな部分と戦略・戦術的な部分の両方がある。例えば、リスクマネジメントを例にとると、リスク識別はオペレーショナルな活動である。しかし、リスク対応策の策定というのは戦略的な活動である。リスク識別をテンプレートなどを使って定型化するのはよいことだ。しかし、リスク対応策の策定でパターン化してテンプレートを作ると、プロジェクトに悪影響を与えることが少なくない。

体系的に改善をしないことの問題点はオペレーショナルな活動の改善に集中し、戦略的な活動の改善ができにくいところにある。リスクの例で、仮に現象をパターン化して決めておいたリスク対応がうまく機能しないと、パターンをどんどん増やすことになる。実際にはこの問題を解決しようと思えば、リスク以外の部分(例えば、スコープマネジメント、スケジュールマネジメントなど)にも目を向けないと本当の解決はできない。そのためには、モグラたたき的な現状把握ではなく、体系的な現状把握が求められる。


◆アセスメントとは

さて、現状把握を体系的に行うのが、「アセスメント」という活動である。プロジェクトマネジメントのアセスメントは大きく分けると、

(1)コンピテンシーのアセスメント
(2)ケイパビリティのアセスメント
(3)成熟度のアセスメント

の3つに分けることができる。

コンピテンシーのアセスメントとしては、

・プロジェクトマネジャーのPMコンピテンシーアセスメント
・プロジェクトマネジャーの技術コンピテンシーアセスメント
・プロフェッショナル認定のためのアセスメント

といったアセスメントを行う。また、ケイパビリティのアセスメントとしては

・プロジェクトマネジメントの状態アセスメント
・プロジェクトの組織構造のアセスメント
・プロジェクトマネジメントメソドロジーのアセスメント
・シニアマネジャーの監視に関するアセスメント
・標準遵守のアセスメント
・技術的ケイパビリティのアセスメント
・戦略統合に関するアセスメント

といったアセスメントを行うことが多い。アセスメントの目的にもよるが、この2つのアセスメントは併用することによって初めて正しい現状把握ができるケースが多い。
第20回で述べたように、標準化をプロセスとコンピテンシーの組み合わせで行うためだ。

第20回
戦略的PMOの標準化への取り組み(4)〜コンピテンシーか、プロセスか、それが問題だ

また、成熟度のアセスメントは少し異なる観点から実施されるケースが多いが、

・成熟度レベル
・カバレッジ

などがアセスメント視点になる。コンピテンシーやケイパビリティがその時点での能力を測定しているのに対して、成熟度は時間軸や広がりの評価ができる。したがって、改善策の策定をしていくに当たっては、余裕があれば成熟度のアセスメントも併せて行うのが効果的である。



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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「コンセプチュアル・マネジメント(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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