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【PMOコラム83】PMO変革(2)〜「PM活動」のマネジメントをしよう(2008.12.30)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人


◆「プロジェクトマネジメント活動」のマネジメントせよ

PMOがプロフィットセンターに変容していくために、真っ先にすべきことは、「プロジェクトマネジメント活動」のマネジメント、つまり、メタなマネジメントの導入である。

これはいままであまり触れてこなかったが、プロジェクトマネジメントオフィスはプロジェクトに従属的に存在し、機能を提供するというイメージが強い。コンサルティングのクライアントに「PMOはマネジメントが仕事です」と言ってもピンとこないといわれる。現に、PMOリーダー養成講座でもPMOを機能としてみている人が圧倒的に多かった。

PMOの機能はマネジメントの結果である。機能を実現するためには、マネジメントをしなくてはならない。組織を作っても機能は実現できない。ここをよく理解しておく必要がある。たとえば、標準化を考えてみてほしい。極論すれば、標準の策定をするところまでは組織を作ればできる。しかし、そこから先、つまり、定着化をさせようとすればマネジメントが必要である。瑕疵をなくすことは組織を作ればできる。しかし、品質を向上することはマネジメントがなくてはできない。

これらのマネジメントはPMBOK(R)ではないが、プロジェクトマネジメントの一部である。PMO(組織)によるプロジェクトマネジメントとはこのような活動をさしている。


◆「プロジェクトマネジメント活動」のマネジメントとは

では、PMOによるマネジメント活動にはどのようなものがあるのか?

弊社のプロジェクトマネジメントオフィスのマネジメント体系は

・プロジェクト基盤マネジメント
・プロジェクト実行マネジメント
・リソースインテグレーション
・プロジェクトマネジメントのテクニカルな支援
・ビジネスアラインメント

の5つからなっている。この体系が良いかどうかは別にして、

・プロジェクトガバナンスの明確化、プロジェクト実行体制の整備、プロジェクト実施能力のアセスメントと改善などのプロジェクトの実行のベースになる制度のマネジメント

・標準やツール、ベストプラクティスなどプロジェクトマネジメントの実行支援環境のマネジメント

・リソースマネジメント、プロジェクトマネジャーの育成など、プロジェクトで活動する人材に関わるマネジメント

・自らが提唱するプロジェクトマネジメントの方法の監査、支援、指導体制の構築

・ポートフォリオ管理、顧客管理やベンダー管理、契約管理などプロジェクトマネジメントのビジネス面の支援、および、プロジェクトマネジメントを競争優位源泉とするためのマネジメント

の5つがすべて揃わないと本当の意味でのプロジェクトマネジメントはできないということには同意いただけるのではないかと思う。


◆「プロジェクトマネジメント活動」のマネジメントにPMOの存在価値が生まれる

同時に、この体系をみればPMOのビジネス価値がどうして評価されにくいかが分かると思う。PMOが評価されるのは、プロジェクトガバナンスが確立されていなくてはならない。プロジェクトマネジメントに対して、プロジェクトや上位組織を含む組織のそれぞれの立場が何をすべきかということを明確にするためだ。

今まで多くの企業はプロジェクトを中心にしてまわしてきた。したがって、前回も述べたようにプロジェクトが成功させることがPMOの重要な仕事だと考えてきた。これは大筋では間違っていないが厳密にいえば違う。

個々のプロジェクトを成功させることではなく、プロジェクトの成功率を上げることがPMOの役割である。この2つはすべてのプロジェクトが成功するという「前提」で考えば同じであるが、プロジェクトには失敗するものもあるという「前提」で考えればまったく別のことを言っていることになる。プロジェクトの直接の支援は、ひとつの方法に過ぎない。目の前でこけそうなプロジェクトを見捨てても、やらなくてはならないことがあることも少なくない。現実にこのようなPMOの活動ができているのは5社に1社くらいではないかと思う。

日本の企業がPMBOK(R)の導入から、プロジェクトマネジャーの育成、PMOの導入までを一挙にやってきた。その推進力になってきたのは、「すべてのプロジェクトが成功することこそがあるべき姿」という「幻想」である。そうだとするばプロジェクトマネジメントのメタなマネジメントなど必要ないという理屈で突っ走ってきた。


◆一度立ち止まって考えてみよう

このまま、犯人探しを続けてポートフォリオに突入しようという構えの企業もあるようだが、このあたりで一度立ち止まり、プロジェクトは必ず成功するという妄想めいた前提を捨て去り、組織としてのプロジェクトマネジメントのあり方を再考すべきときに来ている。つまり、「プロジェクトマネジメントという活動」そのもののマネジメントが必要なのだ。そのひとつの方向性がPMOのプロフィットセンター化である。これにより、いろいろなことが変わっていく。もちろん、狭い意味でのプロジェクトマネジメントも変わるだろう。

かつて政治の世界では、郵政の民営化をすることによって郵便事業だけではなく官のさまざまな問題を解決しようとした指導者がいたが、プロジェクトマネジメントもそろそろ、そのような指導者が必要な時期だ。来年はそういう人が登場する年になってほしいものだと思う。


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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「コンセプチュアル・マネジメント(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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