◆稼げるPMO
今年の6月以降は、ずっとPMOサービスのマネジメントについて述べてきた。このシリーズは、まだ、書きたいことがあるので、時々、書くつもりだが、来年に向けては少し違うことを考えてみたいと思っている。
大きなテーマとしてはプロジェクトマネジメントオフィスのプロフィットセンター化である。多くのプロジェクトマネジメントオフィスは残念ながらコストセンターになっている。このメルマガでも述べてきたが、本来のPMOの位置づけは、コストセンターとかプロフィットセンターの議論の対象にならない「プロジェクトマネジメントのオーナーシップを持つ組織」である。しかし、プロジェクトマネジメント自体が現場のマネジメントの色彩が強く、このような組織への移行には、プロジェクトマネジメントがもう少し、経営全般にいきわたるまで、時間がかかる話になりそうだ。
では、現場のレベルでPMOを変革するにはどうすればよいかという問題の一つの解がこの半年述べてきたサービスマネジメントの導入である。そして、もう一つの解がプロフィットセンター化である。言い換えると、「稼げる」へのトランジション(移行)である。
◆PMOは稼げないというのは本当か?
実はこの半年くらい、何社かのPMOマネジャーとこの話をした。概して否定的である。ただ、このような議論を仕向けられる背景には、効果の不明瞭な組織をずっとおいておくのは難しいという企業の事情もある。
この問題の答えは意外と身近なところにある。品質管理部門である。
著者が一番最初に品質管理の仕事をしたのは20年くらい前である。当時、品質管理部門はコストセンターであった。今、品質管理部門をコストセンターとして認識している企業は珍しいだろう。自社の製品の直接的な価値をもたらすプロフィットセンターだと捉えている企業もあれば、進んだ企業では品質を経営の問題だと捉え、品質部門を品質マネジメントのオーナーシップを持つ部門だと位置づけている企業もある。また、著者が知っている限り、一番進んでいる会社は福岡にある中堅の製造業で、品質マネジメントのオーナーシップを持つ組織として、業務品質の向上などについても施策の決定権を持っている企業がある。ここまできたかという感じだ。
◆プロジェクトマネジメントには「なにかいいもの」を期待する
品質マネジメントに比べると、プロジェクトマネジメントの取り扱いはある意味で簡単だし、ある意味で難しい。品質マネジメントは製品に直接影響を与えるマネジメントであり、品質に限定してしまえば効果は分かりやすい。これに対して、プロジェクトマネジメントは製品との結びつきが不明確な部分がある。たとえば、プロジェクトマネジメントがうまくできれば、よい製品が生まれるという保証はない。もちろん、プロジェクトマネジメントの中には品質マネジメントが含まれているわけなので、品質に限定すれば同等の効果があるわけだが、プロジェクトマネジメントの実施の目的はそれ以上の「なにかいいもの」である。
今はある意味でプロジェクトマネジメントは当たり前になってきて、その成功の議論というのはされなくなってきたがこの議論は結論が出たわけではない。
◆プロジェクトマネジメントの成功定義が不明確な理由
プロジェクトマネジメントの成功の定義が不明確な理由は、「なにかいいもの」が見えない点にある。現実的、即物的に考えれば、「なにかいいもの」はQCDのすべてにおいて目標をクリアすることであるといえるが、じゃあ、QCDがすべてかといわれると多くの人は言葉に詰まると思う。少なくとも、組織がプロジェクトマネジメントに期待するものはQCDだけではないだろう。品質マネジメントに顧客満足の視点があるように、プロジェクトマネジメントにも+αの視点があるはずだと考えてもなんらおかしくない。
PMOがプロフィットセンターになっていくための第1歩は、品質管理部門がそうであったように、この+αを明確にし、それに対応していくことである。それが、直接的な利益なのか、間接的な利益なのかは分からない。これは両方である可能性がある。たとえば、SIや建設プロジェクトではプロジェクトマネジメントフィーをもらうことができる。この算出をどうするかも議論していきたいが、いずれにしてもプロジェクトマネジメント自体が事業利益を上げることができる可能性はあり、PMOがその利益の源泉になることは間違いないだろう。
来年はこのような議論をしてみたいと思っている。
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好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「コンセプチュアル・マネジメント(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。
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