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【PMOコラム77】PMOのサービスマネジメント(18)〜制度は変えても価値観は変えない(2008.11.10)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人


◆はじめに

前回は、サービス品質の正確性/完全性ということで、目標を明確にしたサービス提供の必要性について述べた。今回は一貫性について考えてみたい。

一貫性もPMOサービスには重要な要素である。まず最初に、一貫性がないサービスとはどういうものかを例を示して説明しておく。


◆一貫性のない組織の例

あるSI企業では、プロジェクトの納期遅れの改善を目指して計画の標準を作り、PMOのサポートを行うことになった。可視化により、サポートを効果的にできるというのが狙いだった。効果はあった。制度導入の初年度は納期遅れのプロジェクトが30%も減少した。このまま順調に進むかに見えたが、営業から、顧客から発注後の対応が遅くなっているというクレームがついた。確かに、計画ができるまでは公式にはプロジェクトを開始できないというルールになっているので、動きにくくなっているのは確かである。この話が本部長に上り、なんとかしろということになった。そこで、PMOは計画書の作成のタイミングに幅を持たせ、プロジェクトの着手後1ヶ月以内と改めた。

プロジェクトマネジャーには、これは実質的に計画の策定の義務化を取り下げたように見えたらしく、事前に計画を作るプロジェクトは、前年度比で60%減少した。このため、PMOのサポートも後手に回ることが増え、また、納期遅れのプロジェクトが20%以上増えた。おそらく、PMOのサポート不足が原因だと思われる。

これではまずいというので、PMOが計画のたたき台を作ることになった。ところが、これにより、事前に計画を作っているプロジェクトはさらに、減少した。

なぜだろうか?サービスそのものに一貫性がないからだ。この事例を見ると目立つのは、計画書の扱いが二転三転していることだ。つまり、最初は大切だといっておきながら、軽視する。そして、そのあとは形式を重んじている。これでは、プロジェクトマネジャーはついてこない。


◆制度は変えても価値観は変えない

制度に問題があるときに、問題解決を行い、制度を変えることはかまわない。しかし、動かしてはならないものがある。それはPMOとしての価値観である。サービスの一貫性というのはうわべを取り繕うことではなく、価値観をぶらさないことである。

プロジェクトマネジャーから見たときに、PMO(や上位組織)の一貫性のなさというのはもっとも多い「愚痴」である。やっていることがころころ変わる、担当者によって言っていることが違う等など。一つには徹底周知の問題があるのだとは思うが、原因がなんであろうと、また、それが仮にプロジェクトマネジャーの誤認だとしても、プロジェクトマネジャーがそう思っていることは事実である。

一貫性の問題が厄介なのは、信頼関係にもっとも強く影響を与えるからだ。たとえば、前回の正確性が欠けていればPMOの非力さに対する非難は起こるかも知れないが、不信感を持つことは1〜2回の失敗ではないだろう。待ち時間、タイムリーさ、即応性などについても同じことがいえる。ところが、昨日言ったことと今日言っていることが違えば即座に不信感も持つし、AさんとBさんのいうことが違えば組織そのものに対する不信感につながっていく。


◆サービスに一貫性を持たせるには価値観を貫き通す

では、一貫性も持たせるにはどうすれば、よいのか?答えは単純だが難しい。

バリューを明確にし、それを貫きとおすことである。上の事例であれば、顧客(営業)からのクレームが出てきたところで、計画書の制度を変えるのではなく、計画書の作成に時間のかかる原因を分析し、それを解消する方向に制度を変えていく。たとえば、社内のさまざまな対応、稟議に時間をとられるのであれば、それを引き受けて計画書は大切だからということで、プロジェクトマネジャーに計画書を作る時間を作ってやる。そうすることによって、計画書を作る制度の利用率も向上するだろう。問題が発生したら、問題に振り回されることなく、逆に問題解決を利用して価値の浸透を図っていくことが求められる。


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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「コンセプチュアル・マネジメント(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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