◆サービスマネジメントの枠組み(復習)
サービスマネジメントのバイブルになってるリチャード・ノーマンの「サービスマネジメント」で示されている
(1)マーケット・セグメント
(2)サービス・コンセプト
(3)サービス・デリバリー・システム
(4)イメージ
(5)文化と理念
に従って、PMOのサービスマネジメントのシステムについて検討しているが、今回は3回目。(3)のサービス・デリバリー・システムについて考える。
◆サービスデリバリーシステムとは
サービスデリバリーシステムとは、モノの流通(販売)システムに当たるものだ。しかし、サービスは生産と消費が同時に行われることから、人に依存する部分が大きくなることに注意しておく必要がある。
たとえば、オープンキッチンという仕組みがいろいろな分野で取り入れられている。カウンター形式のラーメン屋、蕎麦打ちから湯掻くまでを見せる蕎麦屋、調理場と客席との仕切りが透明なガラスになっているレストランなど形態はざまざまであるが、これは何の意味があるのだろうか?
船場吉兆の事件を考えてみればすぐに分かると思うが、品質管理である。つまり、顧客の目が届かない場所で調理され、客席に運ばれてくるのであれば、むしろ、モノの提供に近い。この場合、形式的な品質管理が必要である。これに対して、オープンキッチンはサービス側に振って顧客の目にさらすことによって、サービスの品質を管理している。
このようにサービスデリバリーシステムの最大の問題は如何に品質を保つかという問題である。
◆サービスデリバリーシステムの構成要素
サービスデリバリーシステムには以下の3つの構成要素がある。
・人材(提供者)
・利用者
・技術や物的な要素
サービスの品質を向上させるには、これらの構成要素を磨いていく必要がある。
◆サービスデリバリーのために、どのようなPMO人材が必要か?
まず、PMOサービスについて、そのデリバリーシステムの構成要素を整理してみよう。まず、提供者は誰か?これは簡単なようで結構、複雑な問題である。
たとえば、トラブルのプロジェクトの支援をする際のサービス提供者となると、多くの組織ではPMOスタッフ個々人が出てくるのではないだろうか?ここが一つ、今、多くのPMOが抱えている問題点である。これではうまくいかない。
ここでキーワードは「真実の瞬間(MOTという)」という言葉である。真実の瞬間を提供できるような人材が必要である。
サービスマネジメントのもっとも有名なテキストはスカンジナビア航空を倒産寸前から、航空の自由化の波にのって世界有数の航空会社に建て直したヤン・カールソンの書いた
「真実の瞬間―SAS(スカンジナビア航空)のサービス戦略はなぜ成功したか」
である。真実の瞬間(MOTという)とはこの本で作られた言葉で、「顧客にサービスを提供する現場の従業員の最初の15秒間の接客態度が、企業の成功を左右する」という意味合いの言葉だ。顧客満足を考えさせられるエピソード満載の本なので、ぜひ、読んで見るとよいだろう。
真実の瞬間でいわれていることは、利用者にとって本当に価値のあるサービスを提供することはもちろんだが、それは、単に個人の能力でできる範囲でとどまってはならないということ。個人と組織の能力を発揮してサービスを提供することが大切だということだ。
ひとつ「真実の瞬間」に出てくるエピソードを紹介しよう。SAS航空は再建にあたって、世界一時間に正確な航空会社という戦略を打ち出す。ある日、財界の要人が乗りつぎ機の出発を遅らせるよう要請してきた。このとき、現場の行動は、便は定時に離陸させ、代わりに他社の便を用意した。これは現場の従業員一人のアイディアであるが、決して一人の能力でできることではない。組織を使うという視点があることが重要だ。
このためにはPMOスタッフは何ができればよいか?以下のような活動である。
1)プロジェクトマネジャーのカウンセリング
→プロマネの真の要求を理解し、明確化させる
2)プロジェクトマネジャーのコンサルティング
→プロマネに情報を提供する
3)プロジェクトマネジャーと上位組織との仲介
→標準化できない特殊な要求にどう対応するか
それぞれについて、もう少し深く考えてみたいのだが、長くなったので次回にしよう。
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好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
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